帰りの馬車
こうして俺たちの課外合宿は幕を閉じた。
クラスメイト達は古代遺跡を見学できなかったことに多少の落胆を見せていたものの王家のプライベートビーチに行くことができたことで楽しめていたようだ。王家のプライベートビーチはそれこそ王族、もしくは国王の許可が出された上級貴族たちとの交流の場としてしか解放されない。下手をすれば古代遺跡に行くより貴重な体験ができたと言ってもいい。そのことに生徒だけでなく先生も満足している様子だ。
「楽しかったですわね」
「うん!また行きたいね!」
「はい!その時は私もぜひご一緒したいです!」
そしてこの三人ももっと仲良くなったみたいだ。
さらには――――
「あの~、どうして俺たちもこの馬車に乗せられているんでしょうか?」
完全に縮こまりながら訴えるのはスティアード。そう、この馬車にはいつものティーベル、リリア、フィリア、先生に加えてスティアード、ケルスト、クレア、システィアの四人がいる。
「なぜって、友人を同じ馬車に招待するのは当然だろ?」
「そうだけど……場違い感がすごいんだよ……」
「立場が立場だからね」
まあそう思うのも無理ないか。普通子爵家からしたら王族や公爵家相手に粗相をした瞬間終わりだからな。
「それならスティアードとケルストくんだけ呼べばよかったのではないですか?」
毅然とした態度で発言したのは小柄の女の子。
「えっと、君は確か…」
「自己紹介が遅れました、わたしは同じクラスのクレア・ハンセントでございます。我々のことは好きにお呼びください」
「私はシスティア・ミューストンと申します」
発言した女子に続いて、隣に座っていた女子もここぞとばかりに自己紹介する。
「俺は――――」
「皆さまのことは存じておりますので自己紹介は不要です。我が国の王女であるティーベル様に宰相であらせられるバルマント公爵家令嬢のリリア様、平民でありながら凄まじい才能を持つフィリアさん、そして彼女たちを幾度も危機から救った英雄のガーリング様。英雄学校に在籍しているものであなた方のことを知らない存在なんていません」
「そ、そうですか……」
いつの間にそんな有名になっていたのか…いやそれも当然か。むしろ有名になるようにパーティーがあったんだからな。
「ガーリング様がスティアードとケルストくんとご友人となって馬車に招待されたのは理解できます。ですが私たちまでこの場にいる意味が分からないのですが…」
「スティアードとケルストを招待するんだ。なら二人のパーティメンバーも招待するのが礼儀ってものだろ?」
そう言うとある程度納得したのかクレア嬢は険しかった表情を少し和らげた。そこで俺は気になっていた疑問を投げかける。
「クレアはさっきからスティアードは呼び捨てでケルストだけ君付けなのはどうしてなんだ?」
スティアードとケルストの間に家柄的な差はないはずだ。なのになぜスティアードだけ妙に親密な気がするのはなぜだろうか。それはクレア嬢の爆弾発言によってはっきりすることとなった。
「わたし、スティアードの婚約者ですので」
「「「「…………はあああああああああああ!?」」」」
俺とティーベル、リリア、フィリア、先生の叫び声が見事にマッチした。
「スティアードとクレアが婚約者!?俺聞いてないんだけど!」
「驚くのも無理ないよ。初めて聞いた時は僕も驚いたもん」
目が点になって驚いている俺にケルストが同意する。
「てかスティアードは同じパーティメンバーとは恋愛にならないってことに同意してなかったか?」
俺がジト目でスティアードを見ると彼はバツ悪そうに苦笑いする。
「で、でもパーティメンバーになる前からそういう関係だった場合は例外だろ」
「つまりそれだけ付き合いが長いんだな」
「うぐっ」
スティアードは苦し紛れの逃げ道から追いつめる。スティアードは口ごもる。
「そうですね。スティアードとはいわゆる幼なじみというやつです」
「ちょ、クレア…」
「別に隠す必要もないでしょ。それに婚約自体も親同士が決めたことなんだから」
「そ、それはそうだが…」
いつもおどけてるスティアードが照れてるのは珍しいな。
「もしかしてケルストとシスティアもそういう関係!?」
「そんなまさか」
「違いますよ」
「そっかぁ…」
リリアが興味津々と言った感じで聞いたががケルストとシスティア嬢が違うと言ったため落胆する。しかしそこで終わらないのがリリアだ。
「でもでもやっぱりスティアードとクレアは相思相愛なの?」
リリアの矛先はスティアードとクレアに向いた。
「やっ!何を言い出すんですか!」
「そうですよ。スティアードとは腐れ縁で共にいるだけです」
「つまりお互い好きあっていない、ということですの?」
「スティアードがどうかはわかりませんが、わたしはそうですね」
「うっ………」
クレアの遠慮のない物言いにスティアードが若干へこんでいる。
「……では、わたくしとスティアードさんが仲良くなってもよろしいので?」
ティーベルがそう言うとクレアの顔が一瞬強ばった。
「…す、スティアードと仲良くなったとしても何もいいかとありませんよ?」
「それは酷くないか!?」
「じゃあ仲良くなってメリットがあるの?」
「そ、それは……」
「メリットなどなくとも同じ学び舎で学ぶ学友ではありませんか。仲良くなったとしても不思議ではありませんわよ?」
「そ、それにしてもティーベル様にはお立場というものが――――」
「王女たるもの、貴族の方と仲良くするのは当然ではなくて?」
「そ、それはそうですが……」
クレアがだんだんと歯切れが悪くなる。
するとティーベルはクスリと笑う。
「もしかして、スティアードさんが他の女性と仲良くしていることが嫌なのですか?」
「なあ!?」
「え?」
ティーベルの発言にクレアは顔を真っ赤にして叫び、スティアードはクレアを見る。
「そ、そんなことないです……」
「ではスティアードさんとわたくしたちが仲良くなってもいいと?」
「も、もちろん、です……」
クレアははたから見ても萎れていっているように見える。それはもう完全に――――
「クレア嬢はスティアードさんのことが本当にお好きなのですね」
「な!?ち、違います!」
「今の貴方の顔を見れば誰でもわかりますよ」
「え?」
そしてクレアは馬車を見渡す。馬車にいる全員に見られていることに自覚したのだろう。クレアの顔がさらに赤くなる。
「な、なあクレア?」
「こっち見るなバカー!」
「ぐはっ!」
耐えきれなくなったのか、クレアはスティアードを叩いて後ろを向いてしまった。
第二章が終わりましたがどうでしたか?
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