夜の密会
風呂にも入ってあとは寝るだけとなった。スティアードとケルンは昼にたくさん遊んだからかすでに就寝している。
「涼しいな」
俺は二人の邪魔にならないように外に出て潮風に当たりに来ていた。昼間はあんなに騒がしかったのに夜は静かで波の音が聞こえるだけ。
「何一人でボーっとしていますの?」
「お疲れかな?」
「一人で何していたんですか?」
「お前ら、なんでここにいるんだ?」
潮風に当たっているとティーベル、リリア、フィリアの三人がやってきた。
「ガルくんが砂浜を歩いてるのを見て追いかけてきたんだ」
「暇なのかよ」
「それはガル様にも言えることでは?」
「ぐはっ」
天然なのか知らないけどフィリアはたまに俺の急所を的確に抉ってくる。しかもその精度が的確すぎる。
「……同じ部屋の方とは親睦が深められましたの?」
「…そうだな。友人、かはわからないけど仲良くはなったな」
「そこは友人って言ってあげてよ」
「なんでそこでリリアが反応するんだよ」
俺の返しにリリアはやれやれと肩をすくめる。
「そんなんだから友達が出来ないんだよ」
「余計なお世話だ」
「ふーん………」
そして何を思ったのか、おもむろに服を脱ぎ出した。
「は、はあ!?」
そしてリリアに続くようにティーベルとリリアも服を脱ぎ始めた。
「な、何してるんだよ!」
俺はたまらず後ろを向く。しかし服を脱ぐ音が直に聞こえて混乱する。
「こっち向いていいよ」
「何がだよ!?」
「いいから向けって言ってるでしょ!」
俺はリリアに顔を掴まれると強制的に前を向かされた。そして俺の目に映ったのは水着姿の三人の少女の姿だった。
「は?」
「ど、どうかしら?」
「似合う?似合う?」
「す、少し恥ずかしいです…」
突然のことに思考が停止する。それも仕方ないだろう。服を脱ぎ出したと思えば水着になった少女が三人もいたのだ。
ティーベルはそのスタイルの良さを最大限に引き出すような黒の水着。確か、ビキニとか言ったっけ?布の面積が少なく多くの肌色が見えてしまっている。
リリアは白いヒラヒラしたものが付いた水着。ティーベルよりは布の面積があるが健康的なお腹がしっかりと見えている。
フィリアはお腹も隠れている紺色の水着で布の面積がいちばん広い。しかしその小柄な体型になぜかマッチしていてなぜだかしっくりきてしまう。
「え、えっと……ティ、ティーベルとリリアはそう簡単に肌を見せないんじゃなかったっけ?」
「そうだけど、ガルくんには特別サービスだよ」
「そ、その、この水着ははしたないと思っていたのですが、リリアがどうしてもというので着てみましたが…に、似合いませんでしたか?」
「っ…」
そ、その潤んだ目の上目遣いはダメだろ。
「……そ、その、に、似合ってる、よ…」
辛うじてその言葉を脳内から引き出す。
「やった!」
「はい!」
リリアとティーベルは円満の笑みになりハイタッチをする。
「……………」
ティーベルが動く度に揺れる双丘に目がいってしまうのは男として仕方ない、そう仕方ないのだ……しかもティーベルの水着が黒いからかいつもより色っぽく見えてしまう。
「あ、あの…」
服の端をクイクイと引っ張られてそちらを見ると縮こまっているフィリアがいた。
「わ、私はどう、ですか?」
「に、似合っているよ」
そう言うとフィリアはぱぁと笑顔を咲かせた。
「そ、それにしてもどうしてここで水着を?」
水着姿になるなら海で遊んでいた昼間の時が正解だろう。それなのにわざわざこんな夜に水着になるなんて…
「それは……」
「ガルくんに見せたかったからに決まってるじゃん」
「なっ!?」
迷いなく言われた言葉にたじろいでしまう。
「ちょ!リリア!?」
「いいじゃない。ティーベルだって途中までは乗り気だったんだし」
「そ、それはそうですが…」
「ねー、フィリア?」
「えっと…私は別に…」
「なーに言っちゃってるの?何気に一番乗り気だったのフィリアだったのに」
「そうなのか?」
「えぇ。あくまで提案したのは私だけど意気揚々と押し進めたのはフィリアよ」
「意外だな…」
フィリアは基本、あまり自分の意見を言いたがらない。それは遠慮しているからなのだろうが、長い付き合いの俺でもそうなのだ。ましてやティーベルとリリアは王族と公爵令嬢という肩書きまで持っている。そんな二人に自分の意見を言うとは。
「フィリアも成長したな…」
「それお父さん目線じゃん」
「同級生にその態度はどうかと思いますわ」
「えっと、確かに私は同級生ですが、みなさんより一歳上です」
「「えぇ!?」」
二人の叫びが夜の海に響く。
「あまりうるさくするなよ」
「す、すいません…」
「で、でもフィリアって年上だったの!?」
「あぁ。フィリアの入学の条件に俺と一緒に受験することがあったからな」
「ほへぇ…」
「確かに英雄学校は成人前ならば誰でも入学することができますが基本は12歳、条件を満たせば試験を受けることが多いですわ」
「つまりフィリアは異例中の異例ってわけだな」
「そうだね。始めは使用人ってことで驚いてたけど」
「英雄学校は伝統ある学校、貴族や王族が通うことが一般的とされていましたから余計に目立っていましたわね」
「今では強さが注目されているから世の中分からないものだよ」
「なんかリリアがまともに見える」
「どういう意味よ!」
そして四人で笑い合う。
この四人の時間は俺のとって、もうすでに守りたい一つになっていた。




