戦利品
ティーベルも落ち着いたところで先にあった部屋に入った。
「こ、これは……」
「なんとも……」
「言えないですね……」
ティーベル、リリア、フィリアは呆然と呟く。
三人の視線の先にあったものは多くの魔術具、宝石の類だった。
「やはりここは最下層だったか」
一番奥の壁にあるのは古代の六という数字。それはここが最下層であるという何よりの証拠。よく誰も欠けることなくたどり着くことができたな。
「これお宝の山だよ!」
「これだけのものがあれば一生遊んで暮らせますわ」
「はわわわ」
三人のテンションはMAXのようだな。だが
「持って帰るのは自分の装備品だけにしとけよ」
「「「えぇ!?」」」
俺の忠告に三人があり得ないとばかりに食いつく。
「どうしてなのですか!?」
「できるだけ持って帰った方がいいよ!」
「そうですよ!ガル様は欲がないんですか!?」
「酷い言われようだな。俺だって欲くらいあるさ。単純に危険なだけだ」
そう、ここにあるのは基本的に強力であるがゆえに危険なのだ。
「へぇ……例えば?」
「あの水晶とかだな」
俺は近くにあった水晶玉を手に取る。
「どういうものなのですか?」
「爆発を引き起こすが威力が強すぎる。小国程度なら余裕で消し飛ぶぞ」
「「「………ひぃぃぃぃぃぃ!」」」
三人は素早く後ずさる。
「安心しろ。魔力を通さない限り爆発しない」
「本当ですの?」
「信頼してもいい?」
「ガル様がそう言うなら」
三人は恐る恐る近づいてきた。
「これもそうだが他にも危険なものが多い。わかったか?」
「「「はい」」」
そして俺たちは自分に合う装備品を分かれて探した。
「何かいいものはあったか?」
「「「えぇ!」」」
三人とも自分にあったものを見つけたみたいだ。
「どうかしら?」
ティーベルは黒いローブと魔杖を選んだようだ。
「なるほど。これは上等なものだな」
ティーベルが身に着けているローブは魔導糸で縫われたもの。魔導糸は他の糸や布よりも圧倒的に魔力の親和性が優れていて魔力の流れがとてもよくなる。前世の時代でも珍しく魔術師ならば誰もが欲しがるものだ。
そしてティーベルの持っている魔杖。それは
「極深の魔杖だな」
「「「極深の魔杖!?」」」
「知ってるのか?」
「し、知っているというか極深の魔杖はアルス伝に出てくる伝説の魔杖だよ!」
「魔術師ならば誰でも憧れるものですわ!」
「剣を使ってる私でも知っているものですよ!」
「そ、そうか…」
ここまで興奮するとはどれだけ神格化されてるんだよ…
極深の魔杖は前世の俺の組織にいたハルバート・カリュキスの持っていたものだ。ハルバートは魔術を得意としていて、組織内で三番目の実力を持っていた。それが極深の魔杖が神格化された理由だろうな。性能としては魔力制御の補助を主としている。そのおかげで魔術の威力は格段に上がる。魔力制御に割けるキャパシティが空く分、より繊細な制御ができるようになるからな。
「私はこれです!」
フィリアは短剣を抜刀した。
「これは、アダマンタイト製だな」
「そ、そうなんですね」
アダマンタイトと聞いてフィリアの頬が少し引き攣る。
「しかも術式が施されている」
「術式、ですか?」
「あー、まあ権能みたいなものだな」
「ば、爆発とかしませんよね!?」
「そんなはずないだろ」
俺はその術式を鑑定する。
「なるほど……強化魔術と耐性魔術だな。魔力を込めることで破壊阻止と切れ味抜群になるものだな」
「ちなみに強さはどれくらいに…?」
「少なくともアダマンタイト以下のものには破壊されることはないし、ただの鉄なら簡単に斬れるだろうな」
「な、なるほどですね…」
「魔剣、ということ?」
「魔剣とは違うよ。単純な武器の強化だけだからな。まあでも一級品には変わりはないがな」
「だ、大事に使わないとですね!」
フィリアはまじまじと短剣を見つめる。
「フィリアにはぴったりだな」
「どういう意味ですか!?」
「あはははは」
「私はこれだよ。似合う?」
そう言うリリアは白いローブと魔杖を手にしていた。
「似合ってるよ」
「やった!」
リリアのローブもティーベルのローブと同じように魔導糸が使われているようだ。
そして注目すべきは魔杖の方だろう。魔杖の先端に付いている水晶には光系統魔術の補助が組み込まれているみたいだ。
「リリアにはピッタリだな」
「でしょ〜」
えへへとリリアが笑う。なんとも気が抜けてしまいそうだ。
「ガル様は選ばなかったのですか?」
「そういえば何も変化なしですわね」
「なにか選べばいいのに」
「俺はいいよ。めぼしいものがなかったし」
実際、この場にあるものでは逆にお荷物になる可能性がある。それならば持たない方がいいだろう。
「ガルさんがそう言うならいいですけど…」
そして俺たちは転移陣がある場所へ移動した。
転移陣があるのは宝物庫の隅にある部屋とも言えないような小さな空間。
そこにたどり着いた俺たち四人はその空間の前で立ち止まってしまった。なぜなら転移陣の前に二本の、赤と青の剣が鞘ごと地面に突き刺さっていたのだ。
「何なのでしょうか、この剣は?」
「でもすごそうな感じがするよ」
「ですです」
三人が何か言っているようだが今の俺には聞こえていない。その二本の剣にはすごく見覚えがあったからだ。
まさかここにこの剣があるとは…
俺はこの二本の剣をよく知っている。二本で一対の剣であり、赤い方は神炎轟剣ヴィルヘイム、青い方は神氷轟剣フェニゲール。それぞれ炎と氷を権能とする魔剣で、俺の普段使いで愛用していたものだ。この剣は魔剣の中でも最強の部類に入る、まさに俺のためにあるかのような剣。
俺はその剣の柄を握る。するとヴィルヘイムを掴んだ右手には炎が、フェニゲールを掴んだ左手には氷がつつんだ。
「なっ!?」
「「ガルくん(様)!」」
三人が驚きに満ちた声を出す。そこでようやくここに三人がいたことを思い出す。
「大丈夫だ」
思い返せば最初の時も同じだったな。
「はあ!」
剣に魔力を込める。するとだんだん炎と氷が収まっていく。
「「「お、おお……」」」
「さっきから何なんだよ…」
俺は炎と氷が完全に収まってから二本の剣を地面から引き抜いて帯剣する。
「ほら行くぞ。あまり遅れるとめんどくさい」
そして全員転移陣に乗ったことを確認して転移陣を起動した。




