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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
課外合宿編
38/176

できること

 (ガルさんが剣だけで魔族二体と渡り合っている。)

 その事実にティーベルは驚愕を隠せなかった。

 ティーベルはガーリングが魔術師としてはすでに超一流、王国、それだけではなく世界最強といっても過言ではないとも思っていた。

 (この部屋に入った時も三種類の中級魔術をたやすく防いでいました。そんな芸当、今のわたくしにはできません)

 ティーベルは部屋に魔族が二体いたがガーリングがいるから問題ないと思っていた。しかし、魔術が使えない状況に追い込まれてしまった。それではいくら何でもガーリングでも勝てない、死んじゃうのではないかと思った。そんなもの、ガーリングの前では杞憂にすぎなかつたのだ。

 なんとガーリングは圧倒的に肉体性能が劣っているにもかかわらず魔族二体を相手に互角に戦っている。ティーベルはその光景に目を離せなくなっていた。

「ガルくんって剣も使えたんだね」

「知らなかったです」

「フィリアも知らなかったの!?」

 それにはリリアだけでなくティーベルも驚きをあらわにする。フィリアはガーリングのことならなんでも知っていると思っていたのだが違ったようだ。

(いや、少なくとも魔術については底が分かっていなさそうです)

「ガル様と剣を交わると基本的に身体強化の方に意識を向けてしまいますから」

「それはわかるかも。ガルくんの身体強化って無駄がないんだよね」

「ティーベルさんはどうですか?」

「わ、わたくしですか?」

「はい。ガル様の剣術についてどう思いますか?」

「そうですわね……剣術については素人ですが、お兄様と同じ、あるいはそれ以上かもしれませんわ」

 剣術は本当にド素人。ティーベルが剣で試験官と戦えていたのはあくまで身体強化で誤魔化しているだけ。もしこの三人の中でもっとも剣に疎いのはティーベルだと自分で思っている。フィリアは身体強化をしていても近接戦闘型で短剣を使うから剣術がこの三人の中でもっとも優れている。リリアは魔術も剣術も特には優れていなくてもどちらもそつなくこなす万能型。そうティーベルはパーティメンバーを分析している。

 ティーベルは魔術特化型で剣術は特に教わらなかったから当然と言えば当然なのだが。

 だから今のような魔術を封じられた空間では何もできない。

(わたくしは今、何もできない無能なのですね………)

 ティーベルは自分の無力さを嫌という程痛感した。










 キィン、キィン

 鉄同士がぶつかり合いような音が響く。

「くっ!」

 ガーリングが苦悶の声を上げる。

 ガーリングに傷がつき始めいたのです。

「ガル様…」

「大丈夫、だよね……?」

「ガルさんを信じるしかないですわ…」

 しかしガーリングの傷は増えていく一方。ガーリングが傷ついているのに何もできないティーベルは焦燥が募るばかりだ。

「その威勢がどれだけ持つか、な!」

 魔族のその一撃は今までより強いことはティーベルでもわかった。

「はあ!」

 ガーリングは上手く力を逸らして相手の体制を崩し、反撃していた。

「うぎゃああああああああ!」

 魔族の腕が斬り飛ばされていました。

「ファンニル!」

 あの魔族、ファンニルというらしい。だがそんなものティーベルに興味はない。

「うがあああああああああ!」

 負傷した魔族が雄たけびを上げながらガルさんに攻撃を仕掛けました。

 ティーベルはもう心配することなく、ガーリングの戦いを見守っていた。

「やあああああああああ!」

 ガーリングの気合一閃。ガーリングの一撃は見事に魔族に命中し、魔族は真っ二つに斬られる。

「やった!」

「勝ちました!」

「さすがガルさん!」

 ティーベルたち三人はガーリングの偉業に見惚れていました。だからもう一体の魔族の存在を忘れてしまっていた。

 気が付いたときにはもうすでに近くまで来ていた。

 その魔族の狙いはティーベルの隣にいるフィリアみたいだ。

「きゃああああああ!」

「フィリア!」

 ガーリングがフィリアの名前を叫ぶ。

 このままではフィリアが死んでしまう。

(でも、わたくしに何ができるのでしょうか?)

 足がすくんで動けない。怖い。でもこのままではフィリアが死んでしまう。

 そんな矛盾がティーベルの中で渦巻く。

 (わたくしはフィリアが好きです。だからフィリアには死んでほしくありません)

 それは紛れもないティーベルの本心だった。

 ティーベルはフィリアに攻撃が当たる直前、フィリアを突き飛ばした。そして攻撃の直線上にはティーベルが入ってしまった。

「ティーベル!」

 リリアが呼ぶ声がティーベルにも聞こえる。ガーリングが焦りながら駆け寄ってくるのが見える。フィリアが呆気に取られながら、そらでも手を掴もうと手を伸ばしているのが見える。

 ティーベルの視界に移るすべてが遅く感じる。今までにあった出来事がフラッシュバックする。

(これが走馬灯というものでしょうか?)

 ティーベルは加速する思考の中で考える。

(不思議なものですわね。思い浮かぶのは長かった学校入学前より短かった学校入学後、ガルさんと一緒にいたころの方がたくさん思い出しますわ)

 ティーベルは自分の死を予感する。

(これでわたくしも、胸を張って仲間だと言えますわね)

 ティーベルは心の中でそうつぶやく。やっと自分の中で折り合いがつけることができた。一番求めていたものはすでに手に入っていたのだ。もう思い残すことはないというように目を閉じる。

 そしてものすごい衝撃が身体中に響いて、ティーベルの身体は吹き飛んだ。

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