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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
課外合宿編
37/176

英雄騎士の剣

「「やああああああ!」」

 二体の魔族は手を振りかざしながら突っ込んでくる。その速さ、強さは申し分もない。

「ガル様!」

「ガルくん!」

「ガルさん!」

 三人の声が聞こえる気がした。だがそれもすぐ頭から流れ去る。今の俺は身体強化すらしてない。彼女たちからしたら俺がサクッと殺されると思ってるのだろうな。

「ふっ!」

「「なあ!?」」

 俺は魔族の手をそれぞれ最小限の動きで受け流す。魔族たちは受け流されると思っていなかったのか体勢を大きく崩した。

「…なに、今の?」

「ガル様が魔族を剣だけで…?」

「あの人、剣も使えますの?」

 俺は反対側を向いて魔族を正面に捉える。

「こいつ剣も使えるのかよ!?」

「そんなの聞いてねぇ!」

「うるさい。こんなもので終わりか?」

「舐めるなよ!」

「剣が多少使えたところで所詮は人間のガキ!俺たちの相手じゃねぇ!」

 俺の安い挑発に魔族たちはたやすくノッてくる。頭に血が上ると冷静さが失われて視野も狭くなる。動きを単調になって読みやすい。

「はああああああああ!」

 魔族の一人が突っ込んでくるのを反転しながら軽くいなす。

(もう一人は?)

「……くっ!」

 死角から飛び込んできた魔族の一撃を反射的に身をよじって避ける。

「これも避けるか。小賢しい」

 小賢しいのはお前らだよ!というツッコミは置いておく。

「お前たちは連携ができたんだな」

「黙れよ、ガキが!」

「俺たちを愚弄するか!?」

 実際、魔族――――魔力暴走者が連携するなんて話は聞いたことがない。やつらは理性を失い敵味方の判別がつかなくなり、己の欲を満たすだけの怪物に成り下がる。だからこうして話ができていること自体が驚きなのだが。

「っ!」

 少し他のことを考えていた隙に魔族の攻撃がせまってきていた。それをぎりぎりで避ける。

 ダメだ。他のことを考えてる場合じゃない。相手は普通の人間ではないのだ。

 俺はもう一度気を引き締める。









 空気はさらにピリつく。一気に空気が変わる。

「はあ!」

「やあ!」

 魔族たちは交互に腕を使って攻撃してくる。それを何とか受け流す。ここで大きく振りかぶってしまえば一人を倒せたとしてももう一人に生じた隙にやられてしまう。だから隙が見えるまでこのまま耐えるしかない。

「っ!」

 受け流しているとしても完璧ではない。魔族の一撃が肌をかすめる。

 それを皮切りに次々と俺に傷がつき始める。

「ハハハハハ!イキってた割にはその程度なのかよ!」

 魔族の一人が調子に乗って攻撃は更に苛烈になった。

「くっ…」

 魔術が使えないということは傷も癒せない。今の俺は傷が増えていく一方だ。

「待て!抑えろ!」

「相手がこんなんで何を抑えるって言うんだよ!このガキを殺して後ろのやつらもぶっ殺すんだよ!」

「っ!くっ!」

 まだまだいける。

 俺は痛みに耐えながらそう思う。致命的になる攻撃は避けている。思考もクリア。

「その威勢がどれだけ持つか、な!」

 魔族の一人が思い一撃を振るう。なんとか剣で滑らせて受け流す。

「なあ!?」

 魔族が素っ頓狂な声を上げる。魔族の体勢は大きく崩れている。.

「はあ!」

 その隙を逃さず剣を力強く振るう。

「うぎゃああああああああ!」

 魔族の一人が悲鳴を上げる。

「お、俺の腕がああああああ!」

 その魔族の肘から先がなくなり血が噴き出している。

「ファンニル!」

 もう一人の魔族が叫ぶ。てかあの魔族、ファンニルって言うんだ。どうでもいいけど。

「うぐぐ……このクソガキがああああああああああ!」

 ファンニルが理性を完全に失った状態で突っ込んでくる。こういうやつは獣を退治するのと同じだ。

「うがあああああああああ!」

 ただの獣のような雄たけび。フェイントも何もない単調すぎる動き。それを対処するのはたやすい。

「剣技『静波断皇(せいはだんこう)』」

 俺の剣はファンニルの首の滑らかに入り音もなく首が斬り落とされる。ただただ静寂だけが広がる。

 そしてファンニルは灰となって消えていった。

「もう一体は!?」

 俺はすぐに視線を戻した。しかしそこに魔族の姿はなかった。

「いったいどこに……?」

「死ねえええええええ!」

「きゃああああああ!」

「後ろか!?」

 フィリアの悲鳴が聞こえて後ろを振り返る。いつの間にか魔族は後ろに回り込んでいた。

「みんな!?」

 魔族は俺がファンニルの相手をしている間に後ろの三人を狙っていたようだ。魔族の手はすでに三人の近くまできている。

 しまった!俺としたことが……

 魔力の制御を妨害されているせいでいつものように魔力反応で敵の動きを把握することができなかった。それだけでなくきっと久しぶりの命のやり取りに周りへの注意がおろそかになっていたのだ。それも言い訳になってしまう。

 俺は必死に駆け出す。でも間に合わない。

「フィリア!」

 手を伸ばす。でも届かない。

 魔族の攻撃がフィリアに当たる直前、フィリアの体が吹き飛ばされる。

「きゃあ!」

「ティーベル!」

 フィリアを突き飛ばしたのはティーベルだった。

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