思わぬ接触
そしてようやく最奥と思われる場所に着いた。
「ここだな」
「やっと終わり?」
「疲れました」
「もういっぱいいっぱいですわ」
三人とも脱力したように安堵の声をもらす。
「とりあえず中に―――――っ!」
俺は開けかけた扉を慌てて閉める。
「どうして閉めたんですか?」
「………中に魔族がいる」
「「「はぁ!?」」」
三人が素っ頓狂な声を上げる。
「ど、どどどどういうことですか!?」
「ま、ままま魔族!?」
「ここは国の管理下なのではないのですか!?」
「いや知らんし。あとティーベルは俺に聞くな。どっちかというとお前の方が知ってるだろ」
だが確かに不自然だ。こんなところに魔族がいるなんて。
「俺が先に入るから三人は後から入ってきてくれ」
「「「はい!」」」
俺は一気に扉を開けて中に入る。するといきなり『豪炎』、『風渦』、『砂塵』が飛んできた。だがそんな攻撃は予想できていたから魔力障壁を展開して魔術を防ぐ。そして爆発が起きる。煙で何も見えない。
煙が晴れると魔族が二体いた。
「ほ、ほんとにいた…」
「信じられませんわ…」
「で、でもガル様がいます…」
三人は後からおそるおそる中に入ってきて扉が閉まる。
「チッ!これじゃあ効かねぇか」
「もしかするとこいつらがザリディアたちをやったやつらかもしれん」
ザリディアって誰だよ。会話の流れからしてこの前俺が倒したやつらの名前か。
「それなら俺たちじゃまともにやり合えねぇ」
「どうするんだ?撤退でもしてくれるのか?」
正直そっちの方がありがたい。ここで大規模な魔術を発動するのは避けたい。下手するとこの施設が崩壊しかねない。
「撤退はしない!これを使うんだよ!」
「なっ!」
魔族は後ろにあったある装置を見せるように体を横にずらす。その装置にはある石がはめ込まれていた。
「魔封石だと!?」
「「「魔封石?」」」
「あぁ。あれを起動すると一定の時間、魔術が使えなくなる」
「何そのとんでも性能!?」
魔族の一人が装置に魔力を流し込んで、起動する。
その瞬間、一気に体が重くなるのを感じる。
「なんですの、これ?」
「体が、だるいです」
「身体に流れる魔力が阻害されてるんだ。魔力がなくなったわけじゃないが違和感は残るだろう。そして一番の問題は―――――」
ガキィン!
いい音が部屋に響き渡る。
「ど、どうして魔族は普通に動けてるの!?」
「ま、まさかあの石は魔族には効かないのですか?」
「いや、ちゃんと効いてるさ」
「で、でも剣で斬られてもなんともないですし、速いです」
「簡単な話、スペックが違いすぎるんだ」
「スペック…」
「魔術は使えないが魔力は残る」
そこが一番の問題だ。
「魔力量の差が圧倒的に違う。だから身体の強度、スピード、強さが人間と段違いなんだ」
「そ、そんな…」
さすがのフィリアも顔を青ざめる。
「で、でも何か方法はないの!?」
「あるにはあるよ」
「そ、それをやって!」
「いや無理だ」
「どうして!?」
「魔封石は魔術を阻害するが大規模な魔力の流れは完璧に阻害できない。だから大規模な魔術を俺が発動すればなんとかなる」
「なら――――」
「でもそれだけの規模の魔術を発動すればここ一帯は焦土に変わるぞ」
「え?」
それだけじゃない。ここにいる魔族はともかく後ろにいる三人や外にいる先生や生徒たちを全員死ぬことになる。
「さすがにこの遺跡を破壊するのはまずいだろうからな」
「た、確かにこの遺跡は大変貴重で破壊はできればしてほしくありません…」
俺の説明にティーベルはノってくれる。
「これ、まずいんじゃ…」
「魔術が使えないとなるとさすがのガルさんでも…」
続けてリリアとティーベルも絶望的な顔をする。まぁそういう反応にもなるわな。ここに騎士科ほやつがいたらもう少し変わるのかな?いやないな。
でもなんとかなるだろう。俺は『英雄騎士』なんだし。
ここで『英雄騎士』の由来はなんだったか。本来、騎士と言うのは己の肉体と剣の腕で力なき者を救う者たちを指す。だが俺は魔術を中心に戦っている。なのになぜ騎士と呼ばれていたのか。それはもともと、俺は剣で戦う騎士だったからだ。魔術は後から身につけたものにすぎず、俺の本来の戦い方は剣のみの戦いだったのだ。魔術はたまたま才能があっただけ。だからこの状況は別に慌てることはない。しかし長いブランクがあるから不安は少しだけあるのだが。
俺は目を閉じて深呼吸をする。いらない思考は全てそぎ落とす。必要なのは相手の情報、自分の剣の動かし方のみ。それ以外はすべて不要だ。
ゆっくりと目を開ける。視界に映るのは二体の魔族だけ。
魔族たちは俺の雰囲気が変わったことを感じたのか、警戒するように身を引き締める。これだけでわかるとはなかなか戦闘センスがあるようだ。
魔族の一発くらうだけでも今の俺は即死だろう。でも当たらなければどうてことない。
今こそ『英雄騎士』の剣技を見せてやろう。




