魔術仕掛け
ヴィルヘルムスハーフェン王国。それは俺の前世での出身国だ。俺が一番懇意にしていた国でもある。そのため俺関連の魔術具――――今は人工遺物が多く貯蔵されていたりもした。そして何より魔術が発展していた国でもあった。そのため国の施設には魔術の仕掛けがたくさんあった。それは宝物庫も例外ではない。というか宝物庫が一番やばい。何がやばいかって言うととにかくやばい(語彙力崩壊)。宝物庫は国の中でも重要なものが保管されるからその分警戒が必要になる。だからこそ危険な魔術の仕掛けが施されていた。本当に大丈夫なのか…?
「勝手にどっかに行ったらだめですからね」
ミーナ先生が入口前でそう注意する。
「そうだ。三人にこれを渡しておくよ」
「「「これは…?」」」
俺が取り出したのはペンダントだった。
「これは探知魔法を付与した人工遺物だよ」
「これはガル様が作ったのですか?」
「そうだよ」
「すごいです!」
「それって…」
「人工遺物なんじゃ…」
「そういうことになるのかな」
「…もう何でもありですわね」
「どうしたんだよ?こんなの単なる人工遺物だろ?」
「それがおかしいの!知ってる?現代の技術じゃ人工遺物なんて作れないんだよ!」
「そうなの!?」
「そうでなくては人工遺物が国宝になりませんわ!あなた、とんでもないもの作りましたのよ!?その自覚はお有りで!?」
「な、ないです」
思わぬ強めの口調にたじろぐ。
「でもガル様からのプレゼント、嬉しいです」
「そっか…ガルくんからのプレゼント…」
「男性からのプレゼントは初めてですわ…」
三人はペンダントをじっと見つめる。
「どうしてそんなに見つめてるんだ?」
「いえ!?」
「何でもないわ!」
「ところでこれどんなものなんですか?」
「あぁ。魔力を込めると俺の持ってる魔鉱石が反応して居場所が特定できるようになってるんだ。自分の身に危険がせまったらこれに魔力を注いでくれ」
「なんて便利なものを…」
「これ、お父様やお兄様にも欲しいですわね…」
「変なこと言ってないでさっさと行くぞ」
クラスの先頭はすでに中に入っていた。
「中は思ったより広いね」
「それに明るいです」
リリアとフィリアは中に入った感想を素直に述べた。ティーベルは興味津々といったふうに遺跡の壁を見ている。
「これはどんな素材なのでしょうか…見たことありませんわ…」
「あぁ。アダマンタイトだよ」
「アダマンタイト!?伝説の金属ではないですの!?」
「どうしてそんなこと知ってるの?」
「ほ、本で読んだことがあるから…」
「それにしては常識に疎すぎますわね」
「うっ…」
前世からの知識なんて絶対に言えない。
「タルミールは田舎ですからあんまり情報が入ってこなかったんですよ」
ナイスだ、フィリア。
「なるほど。それなら納得できるね」
それで納得できるリリアもリリアだけどな。
「そんなことよりもこれだけのアダマンタイトがあるならいったいどれくらいかかったのかしら?」
「考えたくもないね。アダマンタイトは当時でも貴重だったらしいし」
「そんなに貴重だったの?」
「アダマンタイトは金属の中でも魔力との親和性が最も高いから掘り出すにはすべて手作業だったらしいからな。その分、量も少なかったんだ」
「魔力との親和性が高いと何がいいの?」
「魔術が組み込みやすいんだよ。人工遺物にもよく使われてたんだ」
「……もしかして人工遺物に使われていた不明な物質って………」
「間違いなくアダマンタイトだな」
「……伝説の金属が国の宝物庫に眠ってるなんて」
事実なんてそんなもんだ。いつの間にか真実は分からなくなっている。そしてこの時代の人たちは新たなことを知ろうとしていない。だからこそたかが金属一つさえ気づかない。挙句の果てには『英雄騎士』の正体さえも―――――
「この部屋はなんでしょうか?」
フィリアは通り道にあった一つの部屋に興味を示した。
「先生、この階層は自由に見てもいいんですか?」
「目が届く範囲ならいいですよ。この部屋に入ってみますか?」
「いいんですか!?」
「フィリア、ティーベル!入ってみよ!」
リリアがフィリアとティーベルの手を引く。
俺は危険がないだろうと思いつつ魔術反応を調べる。するとその部屋に魔術仕掛けがあることが分かった。
「待って!」
「え?」
俺の制止は一歩遅かった。三人ともすでに部屋の中に入ってしまっていた。部屋の床は淡く光っていた。
「な、なに?」
「なんですの?」
「ティーベル様!リリアさん!フィリアさん!」
「チッ!」
「ガルくん!?」
俺はフィリアの手をつかむ。
「先生!今すぐ引き返して!あとこの部屋には誰も入れないように――――――」
部屋が明るく染まった。その部屋にはもう何もなかった。




