国王陛下、驚愕する
「国王陛下が見ていますから皆さん頑張っていきましょう」
「「「「はい!」」」」
返事が一体化している。ここまで気持ちも合っている返事は見たことないな。
「がんばるのじゃぞ」
国王陛下が手を振る。なんというファンサービス(?)。
「リューク様は表情変わらないんだね」
「いつもあんな感じですわよ」
「でも家ではコロコロ表情変わるよ」
「リリアさんは愛されているんですね」
「フィリア!恥ずかしいからやめてよ!」
リリアは照れたようにフィリアを軽くたたく。
「リリアたちは参加しないのか?」
リュークが国王を連れてやってきた。
「お父さん!」
「リューク様、ごきげんよう」
「ティーベル様、ご機嫌麗しゅう」
リュークとティーベルは互いに頭を下げる。なんか上品な挨拶だな。
「それでなぜなんだ?」
「彼らと彼女たちではレベルが違いすぎるんですよ」
「今見ているだけでも驚いているんだがこれ以上なのか?」
国王とリュークはティーベルら三人以外の生徒たちの練習風景を見て戦慄する。
生徒たちはいつも通りの練習をしているだけだ。まぁいつも通りの基準がこのクラスだからな。
「これが無詠唱魔術…」
「噂には聞いていたが、想像以上だ…」
二人にはどういう風に映っているかわからない。ただ今までの常識で火属性の初級魔術で的を焼け落としたり、風属性の初級魔術で細かく切り刻まれたりするのはなかっただろう。目が点になっている。ちょっとおもしろいな。
「今の英雄学校ではこの実力が普通なのか…?」
「そういうわけでもありません。彼らはいち早く無詠唱魔術に取り組み、俺やティーベル、リリアにフィリアという腕のいい講師に教わっていたので他よりは実力は圧倒的に上です」
「なるほど。そういうことなのじゃな」
納得したように国王は頷く。
「しかし、この歳でこれほどの能力を持っているなら将来魔術師団に入ってエリートになるのは間違いないだろう。この先のこの学校の価値は大きく膨らむことは確実。これは今後この国にとって莫大な利益を生み出すことになる。それこそ各国を揺るがしかねないほどの。それをたった一人で行うとは…君はいったい何者なんだ?」
「…リューク様もよく知っている通り、男爵家の次男ですよ」
「…そうか」
やはりこの人の政治の才能はずば抜けている。たかが一つの学校が王国のみならず世界全体に及ぼす影響を正しく理解している。わずかな練習を見ただけでここまで考えられる人間なんてそうそういないぞ。
「この三人の実力も見てみますか?」
「それは見てみたい」
「お願いできるかの?」
「えぇ」
ティーベルとフィリアは向かい合う。他の生徒たちは練習を一時中断して離れる。
「どうしてみんな離れるのじゃ?」
「二人には模擬戦をしてもらいますが規模が大きすぎるので」
そう言って俺は魔力障壁を展開して四方を囲む。
「これは、結界?」
「単なる魔力障壁ですよ」
「魔力障壁にこんな使い方が…」
初めてこれを見たあいつらも同じ反応してたな。
「リリアはどうして参加しないんだ?」
「リリアは回復に特化していますので。戦えないことはないのですが二人と戦うのは難しいですから」
「そうなのか」
「はい」
「それじゃあ始め!」
俺の合図と同時にフィリアは短剣を抜刀しティーベルは手をかざす。
「なっ!あの娘の剣は真剣ではないか!?ティーベルが危険じゃ!」
「これでいいんですよ」
「しかし王女の身に何かあったら…」
「ある程度の傷ならリリアが直してくれますし危険ではないと訓練にはなりません」
「しかし痛いであろう!」
「その痛みを練習で知らないと本番で取り返しのつかないことになりかねません」
「うっ…」
国王が口ごもる。
実際、実力はあるのに初めての痛みのせいで死んでいった者も多い。だからこのような練習で痛みを知っておかなくてはむしろ危ないのだ。
「ティーベルさん!行きます!」
フィリアは踏み込みと同時にトップスピードまで持っていきあっという間にティーベルに接近する。
「「は、速い…」」
フィリアの短剣がティーベルに当たりそうになった時、魔力障壁が展開されて刃を防ぐ。
「また一段と速くなりましたわね…」
「ティーベルさんこそ。この速さに対応できるなんてすごいです」
フィリアは一旦ティーベルが離れる。
「はあ!」
その瞬間を狙ってティーベルは『豪炎』を放つ。それをフィリアは軽々と避ける。
「こ、こんなに早く中級魔術を…」
「しかもこの威力のものは見たことがない」
国王とリュークはさっきから驚きまくっている。
「これも避けますか…ではこれならどうかしら!」
ティーベルは再び『豪炎』を発動する。しかし今回はフィリアには飛ばず、ティーベルの周りを回るように円状に回っている。
「そ、それは!?」
「『豪炎』の壁みたいなものですわ。これではフィリアでも突破できないでしょう」
流石だな。魔術は魔力の流れによって自在に操ることが出来る。これではフィリアはティーベルに接近できない。
「これなら!」
フィリアは『風刃』を放つが『豪炎』の壁には無意味だ。
「やあ!はあ!」
ティーベルは次々と『豪炎』や『雷槍』を放つ。
「やっ!はっ!きゃあ!」
フィリアはがんばって避けるも『雷槍』が近くに着弾してその爆発に巻き込まれる。
どうする、フィリア?このままじゃジリ貧だそ?
「これはわたくしの勝ちですわね」
ティーベルは勝ち誇ったように言う。
「まだ、まだです!」
しかしフィリアの目はまだ諦めていない。
「『風渦』!」
「えっ!うそ!?」
「ここで中級魔術か…てかいつの間に習得してたんだよ…」
『風渦』は『豪炎』の壁にぶつかり相殺される。そしてティーベルは無防備だ。
「今です!」
フィリアはその隙を逃さずティーベルに突っ込み、短剣を首に当てる。
「そこまで!」
短剣はティーベルの首に軽くあっただけで浅くは切れているものの怪我という怪我では無い。
「リリア」
「はい」
リリアはティーベルとリリアに近づくと光系統魔術で身体を癒していく。
「こ、これが…二人の模擬戦か…」
「想像以上で反応に困るな」
国王とリュークはボロボロになった地面を見て戦慄する。リュークの仏頂面も若干青ざめているように見える。
「これでわかりましたか?このメンバーでは下手な護衛は必要ないと」
「そうじゃな。これだけの力があれば安心じゃ」
「ですが、何があるか分からない分ガーリングくん、頼んだよ」
「お任せ下さい」
俺は三人を見る。よっほどのことがない限り大丈夫だろうがもしもの時は守ってやろう。




