英雄学校襲撃事件⑤
「あとはすべて任せてくれ」
「……ガルくん」
(あっぶな!もう少しでみんな死ぬことろだった。間に合ってよかった)
俺は安堵する。
「お前、ガーリング・エルミットか」
「そうだが」
「あの無能は死んだか。役立たずだな」
リーダーと思しき男が悪態をつく。それで合点がいった。
「そうか。お前らがすべての元凶か」
「だったらなんだと言うのだ?」
男が笑う。
「どっちにしろ殺すさ。それが俺の使命だからな」
前世でも俺は魔力暴走者の始末をしていた。それがこの時代でもあるというだけ。
「ここは面倒になりそうだから撤退するとしよう」
「させると思うか?」
俺は魔力障壁で四方を囲み魔族と俺を周りと隔離する。
「なっ!魔力障壁にこのような使い方が!」
「『域復』」
光系統魔術の上級魔術、範囲型回復。それによって傷を受けた者が回復していく。
「これが、光系統魔術の上級魔術…」
「う…り、リリア?」
「ティーベル!よかった、無事で!」
「わたくしは、魔族に…そうですわ!魔族は!?」
「大丈夫だよ。ほら」
そう言ってリリアはティーベルの上半身を支える。
「あれは結界?」
「魔力障壁だって。ああして魔族を閉じ込めてるみたい」
「リリアさん、ティーベルさん…」
「「フィリア!」」
二人のもとにフィリアが合流する。
「無事でしたのね」
「よかった…」
三人は抱き合って互いの無事を喜び合う。
「それでガル様は?」
「あそこよ。魔族三体と向かい合ってるわ」
「大丈夫かしら?あんな化け物たちを一人で相手取るなんて…」
「ガルくんだから、きっと大丈夫だよ」
「そうね。ガルを信じましょう」
少女三人がガーリングを祈るように見つめる。
「わざわざ我々三人とお前一人で囲むとは死にたいようだな!行くぞ!『豪炎』!」
「『雷槍』!」
二人が魔術を使い、一人が身体強化で突っ込んでくる。なるほど、いい連携だ。しかし魔力暴走者が連携するとは聞いたことがない。
俺は身体強化で突っ込んできた男を斬りつける。今度は手加減なしだ。
「『斬鉄』!」
「っ!あああああああああ!腕がああああああああ!」
男の腕は俺の剣に斬られてなくなる。
しかし次は魔術が飛んでくる。俺はそれを魔力障壁で防ぐ。
腕を斬られた男は光系統魔術で止血していた。
「まさか一撃とはな。やるではないか」
リーダー格の魔族はおもしろいものを見る目をする。
「これならばどうだ!?『炎鳥』」
火属性の上級魔術。
「魔術で俺に張り合おうとするとは愚かだな」
「なんだと!」
俺の一言がやつの逆鱗に触れたらしい。
「もういい!死ねぇぇぇぇぇぇ!」
炎の鳥が僕に向かって飛んでくる。俺は炎に吞み込まれた。
「ガル!」
「ガルくん!」
「ガル様!」
後ろから三人の悲鳴が聞こえる。
「フハハハハハ!おごっているから死ぬのだ!結局お前は雑魚なんだよ!」
男が嘲笑に似た笑みを浮かべながら嘲り笑う。
「そんな…」
「うそ、だよね…」
ティーベルとリリアは絶望したように項垂れる。最後の頼みの綱であったガーリングが倒された今、もう終わりだ。
「まだです…まだ!ガル様は死んでいません!」
そんな中フィリアだけは希望を捨てていなかった。それはガーリングへの圧倒的信頼。
「お前はガーリングが俺の上級魔術に呑み込まれたのを見ただろ!あいつは死んだんだよ!」
「誰が死んだって?」
「何!?」
俺は炎の中からそう言うと、炎をかき消した。そして溢れ出す冷気が周囲の温度を下げていく。
「ま、まさか…その魔術は…」
「上級魔術を使えるのが自分だけだと思うなよ」
俺の横にいたのは巨大な氷の狼。
「『氷狼』!」
「くそ!」
魔力暴走者は魔力障壁を展開するも威力が足りず、リーダー格の男以外の二体は倒れてしまう。
「なっ!お前!我が同胞を殺すとは!」
「お前だってこいつら殺そうとしただろ」
「そんなものどうでもいい!絶対に殺す!『炎鳥』!」
そして先程よりも一回り大きい炎の鳥が生み出される。
「いくら上級魔術と言えど威力が違えば防げまい!」
「確かにお前の言う通りだ。ただそれはどっちのことを言っているのかわからないな」
そして俺はさらに大きな炎の鳥と氷の狼を生み出す。
「なっなっ…それだけの大規模魔術の同時発動、だと?」
リーダー格の男はうろたえる。
「わ、わたくしは夢でも見てますの?」
「これって現実?」
「が、ガル様の魔力がすごいです…」
少女三人がありえないとばかりに目を見開く。
「さあ、これは防げるかな?」
そう言って炎の鳥と氷の狼を男に向かわせる。
「く、来るなああああ!」
男は炎の鳥で相殺しようとするもあっさりかき消されてしまう。
「ガアアアアアア!」
それぞれの上級魔術が干渉しあい、大規模な爆発を引き起こす。もし四方に魔力障壁を展開していなかったら校舎がすべて吹き飛んでいただろう。
後に残ったのは四角い不自然なクレーターのみで死体は跡形もなく消えていた。
「はぁ…終わった」
俺は魔力障壁を解除する。
「ガルくん!」
「ガル様!」
「うお!」
リリアとフィリアに抱きつかれて倒れてしまう。
「大丈夫!?」
「ケガとかないですか!?」
「大丈夫大丈夫」
「「よ、よかったぁ…」」
二人とも心配性だな。
「ガル、最後のは上級魔術ですの?」
「見ての通りだな」
「あ、あれだけの力があれば国一つ滅ぼすことができますわよ。それを平然と行使するなんて…」
「それだけの力を持ってることの自覚はしてるさ。だから初めに言っただろ。俺は世界のバランスを崩しかねない、と」
「えぇ。そしてさらに重要人物となりましたわよ」
「え〜。いやなんだけど…」
「何言ってるの!魔族の単騎討伐なんて聞いたことないよ!ガルくんはもうこの国の英雄なんだよ!」
「……まじ?」
「間違いなく王城に呼ばれるでしょうね」
「つまり国王と謁見しないといけないの?嫌なんだけど」
「わたくしのお父様ですわよ?」
「断ることは…?」
「できないですわ。諦めなさい」
「はぁ…めんどくさい」
そうして王都を騒がせた事件は終幕した。




