英雄学校襲撃事件③
講堂が吹き飛び瓦礫と化した。
「うぅ…」
「イッタタタ…」
「くっ…みなさん、無事ですの?」
ほとんどの生徒が吹き飛んだ勢いで気絶する。意識があるのは上級生の一部と教師、そして1年Sクラスの生徒たちのみ。
「…まだ意識がある、のか?」
「うそ、信じられない…」
「マジかよ…」
1年Sクラスのみんながにつぶやく。
「おい、あいつら1年だろ?」
「なんでまだ残ってるんだ?」
残っている上級生も驚きの声を上げる。
「ほう、まだこれだけ残っているとは…この時代の人類は存外侮れないかもしれないな」
魔族三人が煙の向こう側から姿を現す。
「こいつら!魔力よ、―――――」
「ダメ!間に合わないわ!」
ティーベルの声も間に合わない。
「『風渦』!」
「はあ!」
ティーベルが魔力障壁を展開する。しかし魔力障壁はあっさり破られる。
「きゃあああああ!」
「ティーベル!」
「ティーベルさん!」
「だ、大丈夫ですわ…」
「ちょっと待ってて、回復するから」
ティーベルの身体が光に包まれる。
「今度は私が!」
フィリアは身体強化をして短剣で斬りかかる。
「ふっ!」
ほぼトップスピードでフィリアの短剣が中心にいる魔族の男と接触しかけたとき、後ろにいたもう一人の魔族が腕で受けとめる。
「人間ごときがやるではないか。褒めてやろう」
「あなた方に褒められてもうれしくないです!」
「相手してやれ」
「御意」
中心の男の魔族は前に出ていた魔族に命令するとその魔族はフィリアを力強く押してその場から引き離す。
「フィリア!」
「私は大丈夫です!それよりティーベルさんを!」
「わかった!」
「わたくしは大丈夫ですわ…それより気絶している方の治療を」
「ほんとに大丈夫?無理してない?」
「えぇ。この通りよ」
そう言ってティーベルは立ち上がる。
「…無理はしないでね」
「わかっているわ」
「おやおや、ティーベル王女様のみで我々二人を相手するのか?無謀だな」
そう言って魔族二人は魔術を打とうする。
「「「「『火球』!」」」」
「ぬわ!」
「これは?」
無演唱魔術を扱えるのはこの学校にはある集団しかいない。
「みなさん!」
「小癪な!」
「『石弾』!」
「チッ!」
「先生も!?」
「一人は私たちで引き受けます!ですからティーベル様はもう一人をお願いできますか?」
「ティーベル様にだけ負担をかけさせるな!」
「俺たちの国は俺たちで守るんだ!」
「私たちも無演唱魔術が使えるんだから!」
1年Sクラスの生徒たちが全員魔術を放っている。
「忌々しいやつらめ!あいつらを殺せ!」
「御意」
もう一人の魔族の女も離れていく。
「あら、あなた一人でわたくしの相手ですの?」
「えぇ。僕一人で十分だ」
「その自信、打ち破ってみせますわ!」
「小娘の相手はこの俺だ」
「私はあなたには絶対負けません!」
フィリアは魔族の男と対峙する。その魔族は他よりガタイがよくいかにも接近戦闘型といった姿だ。しかし、フィリアはこの魔族の強さが分かっている。
(この人?よりは私の方が身体強化の質が上なのはわかりました。あとは魔力量でおぎなった身体強化をどうやって突破するのかが重要です)
フィリアは心の中でそう分析する。フィリアは一番長くガーリングの指導を受けていたため、ガーリングの弟子の中では最強だったりする。今後どうなるかは知らないが…
フィリアの武器は攻撃力ではなく、スピードによるかく乱と奇襲。それをどう活かすかを脳内でシミュレーションする。
(これまでガル様の特訓を思い出して)
「来ないならこっちから行くぞ!」
魔族の男はそう言うとフィリアに向かってくる。本来なら反応できない速度なのだが、フィリアには余裕があった。
「はぁ!」
「なに!?」
フィリアは魔族の攻撃を避けると素早く後ろに回り込んで短剣で斬りつける。しかし魔族の身体に傷はつかない。魔族の男は後ろを振り向きざまに腕を振るうがすでに後退していたフィリアには当たらない。
「硬すぎです…」
「そんなちゃちなもので俺に傷はつけられないぜ!」
魔族はまたもや攻撃を仕掛けてくる。その攻撃は威力が十分でいくら身体強化したフィリアでもまともに食らえば大きなダメージが入る。だがそれは、当たればの話だ。フィリアは身体強化で避け続け、隙があれば攻撃する。そんな戦いを続けている。しかしそれでは圧倒的に魔力量の劣るフィリアはいずれ負けてしまう。だからフィリアは勝負に出た。
(剣を振るう瞬間、その一瞬に強い魔力を込める。チャンスは少しだけ。でも、私ならできる!)
フィリアは集中力を高める。
「うおおおおお!」
掛け声とともに突っ込んでくる魔族の攻撃を最小限の動きでかわす。
「やああああああ!」
気合の掛け声とともに短剣を振るう。短剣はわずかに魔族の身体に傷をつけ、血を溢れさせる。
「やった!これで勝てる!」
「俺の身体に傷を……貴様!許さん!」
魔族は激昂して魔術を発動する。
「『火球』」
「当たりません!」
フィリアは次から次へと繰り出される『火球』を軽々と避ける。魔族への勝ち筋が見えたことで気持ちが高ぶっていたのか、自分が攻撃することしか意識していない。
「……えっ?」
だから突然目の前に現れた魔族の男に動揺してしまった。
「おりゃあ!」
「きゃああああああ!」
フィリアは魔族の攻撃をなんとか短剣で受けるも簡単に吹き飛ばされてしまう。その際に短剣も根元から折れてしまっていた。
「戦闘はこうやんだよ。冥途の土産にしな!」
「うぅ…」
魔族の男は『火球』を発動する。いくら初級魔術といえども魔族の膨大な魔力によるものでそれを無防備に受けてしまえば死んでしまう。
「はぁはぁ」
しかしフィリアは受けたダメージが大きすぎて動けない。防御することもできない。
「死ね!」
魔族から『火球』が無防備なフィリアに向かって放たれた。




