始まりの日
「っ、ここは?」
軽い頭痛がして目が覚める。知らない天井だ。
そうだ!そういえば俺は自分の命と引き換えに大魔術を発動したはずだ。つまりここは死後の世界、なのか?
「くっ!なんだ!?」
頭の中に何かが流れ込んでくる。これは…記憶?いったい誰の?いや違う。これはこの体の記憶だ。つまり現実。俺は、生きているのか?しかし俺は確かにあの時魂ごと死んだはずだ。そんなことになればどのような存在でも生き返れはしない。ならばなぜ…まさか!
「転生…したのか…?」
思い返せばあの時俺の魂は何かしらの術をかけられていた。まさかあれは転生のためのものだったというのか…普通ならあり得ない。普通なら。
「とりあえず状況を整理するか」
俺は前世の記憶を持っている。前世の名前はアルス・マグナ。そして俺は転生した。現世の名前はガーリング・エルミット。親しいものはガルと呼ばれている。エルミット家の当主、バルフォンス・エルミットの次男で六歳だ。エルミット家は貴族。この国、ランバルト王国の貴族で男爵。東方のタルミールという土地を治めている。
今までいろんな状況に逢ってきたがここまで困惑してるのは初めてだ。
とりあえず俺は着替えて一階に降りる。食卓にはすでに朝食が並べられており家族もそろっている。
「よう、ガル。おはよう」
父、バルフォンス・エルミット。鍛え抜かれた肉体が服の上から見えるくらいすごい。その筋肉に見合うだけの力を持っている。
「おはよう、ガル」
母、エイミネ・エルミット。父と違いおっとりとして包容力がある。
「今日はいつより遅かったね」
五つ上の兄、ウィルキンス・エルミット。エルミット家の次期当主で、優しそうな風貌。それに違わぬ優しさで俺にも優しくしてくれた、記憶がある。
「待ちくたびれちゃったわ!」
二つ上の姉、ナリタナ・エルミット。元気いっぱいでお転婆娘。だけど愛嬌があり、姉でありながら可愛らしいと思ってしまう。
「では揃ったことだし飯にするか」
「「「はい!」」」
父が言ったことに子供三人が返事をする。
「「「「いただきます」」」」
俺はまずパンを手に取る。なんともフワフワとしている。
「…美味い」
「ありがとうございます」
そばにいたメイドがお礼を言う。どうやらこの家には使用人がいるらしい。貴族なのだからやはり裕福なのだろうか。
「やはりコルンの料理は美味しいな」
父がそう言う。コルンとは先程のメイドだ。コルン・マキシア。マキシア家は代々エルミット家に仕える使用人の家のようだ。ちなみに獣人族。
「「「「ごちそうさまでした」」」」
家族全員が食べ終わる。みんな満足そうな顔だ。
「腹ごしらえもした事だし早速鍛錬といこうか」
「鍛錬、ですか?」
「そうか、ガルは今日が初めてだったね」
「大人になったら自分で戦う力が必要だ。そのためには今のうちに強くならないといけない。だから鍛錬をするのだ」
「わかりました」
理にかなっている。強さとは才能と努力によって成り立つ。才能があっても努力を怠れば意味がない。だからそこ、小さい頃から努力することを覚えさせるのだ。金属は熱いうちに打て、というものだろう。
「では着替えてから中庭に来い。ウィルはいつものように俺との模擬戦、ガルは初めてだから素振りからだな」
「「はい、父上」」
俺たちは返事をして準備をした。




