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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
神聖ミニナリア法国編
175/176

今度は公爵令嬢救出作戦

「すぐに助けに行きますわよ!」

「もちろんです!」

「準備はできているぞ!」

 婚約者三人はやる気満々だ。

「これはもはや国際問題です。看過できません」

 さすがのライカーンもリリア誘拐には黙っていられないようだ。

「私もできる限り協力いたしましょう」

 ブレーズも協力的だ。

「ガルさんもいいですわよね?」

 それは確認という意味合いが強い。

「そうだな」

 そう返事するものの俺はまだ迷っていた。

 果たして俺の力をもう一度私欲に使っていいのか、と。

 俺はリーゼの為として自分の力を自分のために使った。その結果がリーゼの兄を失うという約束を守れなかった現実だ。

 もしかして俺は自分の力を自分のために使うのは間違っているのではないかと考えてしまう。

 もしまた失敗してしまったら?もし今度は親しい誰かを失ってしまったら?

 俺は立ち直れるだろうか。

 それなら俺は出ない方がいいのではないか。そんな考えが頭をよぎってしまう。

 ネガティブなことを考えてはいけないと頭を振るも嫌な予感はぬぐえない。

「場所はハイゼルヘン邸で間違いないよな?」

 俺は確認するように問う。

「むしろそこしかないでしょう。ここで人を誘拐し監禁できる場所などそう多くはありません。セシリアが捕らえられていた過去からしても十分な実績があります」

「いやな実績ですね」

 ライカーンは眉を顰める。

「私は枢機卿という立場ですので気軽に動けないのが口惜しいです」

「それは仕方がないでしょう。ここは私たちに任せてください」

「いや、ライカーン様もお残りください」

「え?」

 行く気満々だったライカーンはフィリアの発言に固まる。

「……そんなに行きたかったのですか?」

 俺はライカーンにジト目を向ける。

「これは国際問題ですからね。私直々に動くことが筋かと思いまして。決して娘の学友を助けて娘に褒められたいとかそういうものではないのですよ」

 思ってたんかい。大人であるライカーンも娘に対しては弱くなるというものか。

「今回の私たちは本気で行動いたします。はっきりと言いますが貴方ではついてこられませんわ」

「ずいぶんはっきりと言うのですね」

「事実ですもの。擦り合わせとは大事ですわよ」

「それはそれですね。ですが私としてもプライドがありますので」

 ライカーンもなかなか引かない。やはりティーベルに暗に貴方は自分たちより下と言われたのが気に食わなかったのだろう。

 まぁ娘と同じ年の女の子にそんなこと言われたらどんな温厚な人でもキレるに決まっている。

 しかし実際にティーベルたちの実力の方が上だろうがライカーンもかなりの強者。自分の強さに自信があるのならティーベルの発言を受け入れられないだろうな。

 そもそもティーベルたちの活躍は俺の影に埋もれて広まっていない。ならばティーベルたちの実力に異を唱えるのも仕方がない。

「例えそうだとしてもグリーリッシュ枢機卿を引き出すには有効ですよ」

「別に引き出す必要はないと思うのだが?」

「リーゼロッテ様の言いたいことは分かります。ですが上に立つ者は建前というものが必要なのです。私が直接出向けばグリーリッシュ枢機卿が何かを察しても荒事にはできません。みなさんも私の連れということにすれば潜入は容易です」

「それはそうだが」

「今回の場合は聖女様の時と違い屋敷にはかなりの人がいることでしょう。強引な手段はあまり使えないでしょうから中に入ってから暴れた方が効果的です」

「……」

 これには正論すぎてリーゼは何も言えなくなってしまったようだ。

「それではティーベル・フォン・ランバルトの名において命じます。ライカーン・ミューストン、公爵令嬢リリア・バルマントを救出に助力しなさい」

「はっ!このライカーン、ミューストン家の名に恥じぬ活躍をして見せましょう」

 ライカーンは臣下の礼をとると力強く宣言した。




 外はすでに日が沈み真っ暗だ。不気味なほど静かで鳥の鳴き声も聞こえるがどこにいるのかはわからない。

「それにしてもリリアはどうして攫われたのでしょうか?」

 ティーベルは疑問を投げかける。その疑問を受け取ったのはライカーンだ。

「可能性としては元からガル殿のパーティに目をつけていたということでしょうか?ティーベル様やリーゼロッテ様、フィリア嬢に比べてリリア嬢は戦闘向きとは言えません。直接害を加えるならばリリア嬢が一番狙い目でしょう」

 確かにそれなら理に適っている。リリアがパーティの中で戦闘力がないことも事実だ。しかしだとしても腑に落ちないことがある。

「なぜ私たちに目をつけていたんだ?」

 グリーリッシュが俺たちを邪魔だと思うその理由。

「勇者パーティより目立っているから?」

「それはありえますね」

 フィリアは俺の意見を肯定してくれる。

 グリーリッシュの性格からして自分が後ろ盾になっている勇者パーティより目立つパーティは目の上のたんこぶだろう。戦力を減らしたいと思っていても不思議ではない。

「ん?勇者パーティ……」

 そういえばリリアって勇者パーティに勧誘されてたような。ついでに聖女になることも。

 しかしそれはセシリアの救出によって頓挫した、はずだ。

 だがもしまだ諦めてないとしたら?今頃あの色ボケ勇者と一緒にいるのかもしれない。

 その可能性に思い至った瞬間全身が粟立つ感覚がする。

「急ごう」

 俺は今までの嫌な予感を振り切ってハイゼルヘン邸へ急いだ。

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