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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
神聖ミニナリア法国編
169/176

聖女救出②

 翌日、俺たちはセシリアの居場所を特定するためにグリーリッシュの屋敷に向かった。

 といっても中に入るのではなく外から探知魔術で屋敷を探るだけだ。

「それではいきますわ」

 ティーベルが探知魔術を発動する。

「屋敷の中の反応は十六人ですわね。せわしなく動いているのは五名、おそらく使用人と思われますわ。それと強い魔力が四名、おそらくこの魔力が勇者様方なのでしょう。あとは…………………っな、七名の魔力がとても微弱ですわ!これはもしかして命の危険が――――」

「落ち着け」

 俺は慌てるティーベルを窘める。

「もしかして早く動いた方がいい感じ?」

「その必要はない」

「しかしティーベルが魔力が微力と言っていたぞ。一刻を争う事態なのではないか?」

 ティーベルの言葉を聞き取ったリリアとリーゼは早く早くと急いてくる。

「まあ待て。ティーベルがそう受け取ったのはちゃんとした理由があるんだ」

 ここで探知魔術についておさらいしておく。

「まず探知魔術はどんな魔術か覚えているか?」

「物体に宿った魔力を感知する魔術、でしたわよね?」

「その通りだ」

 さすが普段から使っているだけあって理解度が高い。

「じゃあどんな風に発動されるかはわかるか?」

「えっと、たしか円状、でしたよね?」

「よく勉強しているな」

 これには意外にもフィリアが答えた。普段使わないのに答えられるのはそれだけ勉学を励んでいるということだ。

「ずるい!私もわかってたのに!」

 俺がティーベルとフィリアの頭を撫でてるとリリアも割り込んでくる。

 愛い奴め、とリリアの頭も撫でる。

 しかしそうすると一人だけあぶれてしまう。リーゼだ。

 リーゼは答えがわからなかったのだろう。何も言わないのがその証拠だ。

 それでも顔は羨ましそうだ。

 俺は探知魔術について詳しく説明する。

「探知魔術は確かに円状に広がる。だがそれは初心者にもわかりやすいように端的に説明したものなんだ」

「そうなんですか?」

「あぁ。円状に広げると聞いたら普通水平を思い浮かべる。もちろん正解だしその方がより広い範囲での索敵が可能になる。しかしそれがすべてじゃない。たとえば上空や地下にいる存在に気付きにくい。じゃあその場合どうすればいい?」

「うーん……」

 これには全員頭を悩ませているようだ。

「わかったぞ!」

 ここはリーゼが手を上げる。

「縦にするんだろう?剣と同じように上下の敵には狙いを縦にするのが有効だ」

「正解だ」

「よし!」

 喜んだあと三人のように頭を撫でてほしいのか無言で体を近づけてくる。

 その様子がいつもの強気なリーゼからは考えられない行為で心にグッと来てしまった。

 リーゼの頭も撫でて満足したし解説をしていく。

「リーゼの言ったように円を縦にすることで上下に対応可能だ。そしてさらに極めると球状に発動することができるようになる。そうなれば資格は完璧になくなるという理屈だ」

 俺の解説に全員唖然としている。

「それが本当なら万能どころの話じゃないよね?」

「まったくもってその通り。俺としては身体強化魔術よりも重視しているくらいだ」

 それはそれとして。

「今のティーベルではまだそのレベルでの発動は無理だ」

「むぅ……」

 俺の評価が気に入らなかったのかティーベルは頬を膨らませる。

 しかしここで指摘すると話が進まなくなるので触れないでおく。

「水平方向の探知魔術では地下の魔力反応が小さく感じてしまう。深さによっても探知することもできない。だからティーベルは地下にいる人たちの魔力を小さく感じてしまったんだ」

「そうだったんですね」

「ついでに言うと君たちだけじゃ隠し通路わからないだろ?」

「「「「あっ……」」」」

 やっぱり気が付いていなかったか。

 俺は紙とペンを取り出す。

「いつかティーベルにはここまでできるようになってもらうよ」

 俺は紙に屋敷の構造を書き込んでいく。

「すごい……」

「詳細すぎる……」

「……国の諜報員にほしいくらいですわ」

「さすがガル様」

 四者四様の反応でおもしろい。

「屋敷の構造はこうなっている。隠し通路はここに飾られている絵画の裏にあるそうだ」

「つまりその絵画ごと壁を破壊すればいいのか?」

「あほか。そんなことしたら明らかに騒ぎになるしグリーリッシュ枢機卿側としても引っ込みがつかなくなる可能性がある。できるだけ屋敷の破壊はなしだ。まぁ地下の設備に関しては破壊しても問題ない」

「了解!」

「それでこの魔力反応がおそらくセシリア様だ。絶対ではないが見張りと思しき人たちを除けばこの反応が一番近いだろう。最終的な判断はみんなに任せるいいか?」

 俺が尋ねると全員静かに頷いた。





 それから数日後、勇者の任命式が行われた。

 任命式は滞りなく進んでいる。どうやら俺はその場に居るだけでいいらしい。

「それではランバルト王国代表、ガーリング・エルミット殿からの祝辞を賜りたいと思います」

 そんなわけなかった。

 聖女救出の実働部隊の方はどうなっているのか。俺は急に振られた無茶ぶりに現実逃避するように思いをはせた。

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