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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
神聖ミニナリア法国編
160/176

長所

 捕縛した盗賊を近くの街に引き渡し一日目が終わった。

 盗賊たちを引き渡したのは神聖ミニナリア法国と隣接しているところだった。もしこれが相手側の領土であった場合下手をすれば外交問題に発展しかねないところだった。

「遅れたね」

「そんなことありませんよ」

 ライカーンが盗賊たちを街に引き渡している間、俺はフィリアたちと一足先に宿に向かっていた。

「ガーリング卿は彼らをどう思いますか?」

「彼ら、と言いますと?」

「今回の護衛の二人についてです」

 やはりか。そもそも王国にとって今回の遠征でライカーンが帯同するのは異常だったのだ。

 本来であれば帯同すべきなのだが今回は例外である。相手は俺を指名した。つまりライカーンは部外者なのである。

 それにも関わらず俺たちに帯同した理由。それは二人の護衛の監査だ。

 ライカーンは人の観察が得意だ。他人が見せない奥底にまで目を向ける。きっとこの人以上に分析が得意な人はいないだろう。

「俺からすればウーラスは及第点、シナイは……まぁ諦めた方がいいかもしれません」

 俺は厳しい判断を下す。

 ウーラスは気概がある。そこは評価しよう。しかしそれだけだ。咄嗟の判断力、状況把握、連携能力がない。これでは将来味方の足を引っ張ってしまう可能性がある。だがまだウーラスは若い。これからの成長に期待ができる。

 だがシナイはどうだろう。敵を前に弱気になっていた。これは味方の士気を下げてしまう恐れがある。それに彼女は魔術にも欠点がある。効果範囲と威力は申し分ない。むしろ一級品レベルだ。しかし制御できなければ逆効果だ。古今東西、力を制御できない者は自分だけでなく仲間さえも巻き込みその身を滅ぼす。残念だがもう諦めた方がいいだろう。

「なるほど。ガーリング卿はそういう見方をするんですね」

「え?」

 それだとライカーンは俺と違う意見を持っているみたいではない。

「実は彼らは僕自身が選んだよ」

「そうなのですか!?」

 俺はてっきりジークが決めたものだと思っていた。まさかライカーンが一枚噛んでいるとは。

「どうして彼らを選んだのですか?」

「目的は二つあるんだ。一つはガーリング卿に彼らを見てもらいたかったんだ。彼らを見てガーリング卿の評価を聞きたかったんだ」

「それで、評価を聞いてどうでしたか?」

「うん。想像通りだったよ」

 ライカーンはニコリと笑う。しかしその笑みの裏で何を考えているかわからない。

「それでもう一つはね、彼らをガーリング卿に合わせること自体なのです」

「……それはどうしてでしょう?」

 俺の評価を予想通りとするならわざわざ合わせる必要はない。あえて厳しい評価を聞くことなどないのだ。

「今は分からないでしょう」

「はい?」

 そこで濁す必要はないでしょ。

「彼らは……化けますよ」

 そう言うライカーンの言葉はどこか確信めいたものがあった。




 二日目は一日目ほどの波乱はなかった。

 ところどころ魔物と遭遇したがウーラスとシナイが難なく対処していた。一日目の時よりもスムーズに対応していた感はある。そこらへんは昨日の夜に話し合いでもしたのだろう。しかし印象としてはウーラスが前に出張って敵を殲滅したいたのが強い。

 そのせいで数回ヒヤリとした場面があった。

 そう言った場面では俺やライカーンがさりげなく手助けしていた。

 さらにほんの少しアクシデントが発生した。

 馬車の車輪が外れてしまったのだ。




「これは困りましたね……」

 さすがのライカーンも馬車には観察眼が通用しないのか何の前触れもなく唐突のことだった。

「俺たちだけなら何とかなりますが他の人もとなるとさすがに予定通りにはつきませんよ」

「……もしよければ私が直しましょうか」

 立ち往生していると救世主が現れた。シナイである。

「直せるの!?」

 リリアは驚いたように声をあげる。

「はい。このような作業は昔から得意なんです」

 シナイはしゃがむと泥を生み出して破損部分をつなげていく。

「すごいですわね……」

 ティーベルはその光景を見て言葉を失っている。これには俺も驚きしかない。

「シナイさん。あなたはこのような繊細な作業が得意なんですか?」

「あ、はい。ですが広範囲を対象にすると急に制御ができなくなってしまうんです……」

 俺の質問に答えていたシナイはだんだんと言葉を弱めていく。

 彼女の行っているのは泥属性魔術の高等テクニックの『粘質変化』だ。泥にも水の度合いによって粘度が変化する。『粘質変化』とは粘度を意図的に変えるというものだ。これは高い魔力制御能力がなければできない。

 数分後、修復作業が終わった。

「これで数時間置いて水を完全に飛ばせば完璧です……わ、私も少しは役に立てたでしょうか……?」

 シナイは自信なさげに聞いてくる。これまで役に立ってなかったことに少なからず罪悪感を覚えていたのかもしれない。

「そう――――」

「もっちろんだよ!」

 俺の言葉を遮ったのはリリアだった。

「すごいよ!こんなことができるなんて!」

「そ、そうでしょうか?」

「うん!自信もっていいよ!」

「え、えへへ……」

 リリアはシナイに抱き着き、シナイはそれを受け入れている。

 誰とも仲良くなれるのはリリアの長所だな。

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