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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
帝国動乱編
147/176

襲撃者の正体

 俺は影から矢を放った襲撃者を追っている。

「待て!」

 そう言っても襲撃者は止まらない。そもそもこの掛け声一つで止まるバカなんていないだろう。

 襲撃者はローブを纏っていて顔を確認することはできない。

「『氷華』」

 氷の華が襲撃者に襲い掛かる。

「『風渦』」

 しかし襲撃者は『風渦』で相殺する。

「やはりこの程度では無意味か……」

 すると今度は襲撃者が反撃してきた。

「シッ!」

 襲撃者が矢を放ってきたのだ。

 走りながら、しかも振り向きざまであるにもかかわらず確実に俺の眉間を狙っている。驚くべき技量だ。油断していたら殺されていたかもしれない。

 しかし俺には通用しない。

 魔力障壁を展開して防ぐ。

 それを見て撃墜は無理と判断したのか攻撃が飛んでくることはなくなった。

「ならば『砂塵』」

 砂塵は土属性の中級魔術で細かい砂をまき散らす。

 当然目くらましにも使える。

 通常であれば足止めとして有効だ。

 だが、襲撃者は足を止めることをしなかった。

 こいつはおそらく俺の前世でも指折りの実力者に匹敵する。

 目を瞑っていても探知魔術を使えば周囲の地形や人の位置が正確に把握できる。そのため『砂塵』の中でも動くことが可能だ。

 さきほどの気配遮断といい探知魔術といい何者なんだ?

 すると今度は襲撃者の魔力反応が宙に浮いた。

「まさか浮遊魔術!?」

 現代では失われたと言っていい技術のはずだ。俺以外の使い手を見ることになるとは。

 俺は見失わないように浮遊魔術で追いかける。





 追いかけてたどり着いたのは帝都の外にある森の中だった。

 森の深くまで行くと襲撃者はようやく立ち止まった。

「やっと諦めたか?」

 そう問いかけると今まで開かなかった口がようやく開いた。

「まさか、自分が追い詰めたとでも思っているのかしら?」

「……!その声は、カノンか!?」

 カノン・フリース。俺のいた組織の序列六位。

 ローブで顔が隠れて見えないが雰囲気はどことなく似ている。

「いいえ、私はシーロよ」

「いやいや。無理があるだろ」

「私はシーロよ」

 どれだけ言っても訂正しない。きっと今問いつめたとしても決して口を割らない。

 ここは彼女をシーロとして話を進めよう。

「それで、シーロとやらは何者なんだ?」

「魔族よ。それも魔王軍幹部だわ」

 即答だった。予想していたがはっきり言われてしまい戸惑ってしまう。

 しかも幹部ということは魔族の中枢を担っているということだ。かつての仲間たちが世界に混沌を生み出していると考えたくない。

 でもここまではっきりと物事を言うならば一番気になっていることを聞いてみるとしてよう。

「お前たち魔族は何がしたいんだ?」

 以前は世界を救うために共に戦っていた。なのに今は世界の危機として存在している。そんな真実を信じたくない。

「世界を救うため、そのために私たちは行動している」

 予想外すぎる回答に脳の処理が追いつかない。

「世界を救う、だと……?」

 これまで魔族がどれだけ人を殺してきた?何人を不幸にした?どれだけ大切なものを奪ってきた?

 例えかつて仲間であったカノンの言葉だったとしても到底受け入れられるわけがない。

「巫山戯るな!お前たちは世界を破壊しているだけだろ!混沌に陥れているだけだ!」

「そうね。確かに私たちは世界を破壊しているわ」

 今度は急な肯定。明らかに矛盾している発言に理解ができない。

「私たちは世界を救うために世界を破壊するの」

 カノンは簡潔にまとめる。

 だがそれでも理解には程遠い。

 俺が頭を抱えているとカノンはフッと笑った。

「あなたはそれでいいの。これまで通り、人のために魔族を殺せばいい」

 それはカノンの同胞を殺せ、ということだ。まぁそれで魔族を殺すことを躊躇することはないが彼女が言うならば意味が変わってくる。

「お前はそれでいいのかよ?」

「もちろん。むしろ魔族とはそうあるべきなの」

「……本当に魔族ってのはなんなんだよ」

 魔族には何か秘密がある気がする。俺の想像を超えるような何かが。

「それはまだ言えないわ」

 そうやってダリューンも言わなかったっけ。

「でも一つだけ教えてあげるわ」

「本当か!」

 それは魔族について知るのにいい手がかりになると思い耳を傾ける。

 しかし聞かされたのは全く関係のないことだった。

「私たちはまずあの皇子を殺すわ」

「皇子……ギルディアのことか!」

 ギルディアを殺すということはその場に居るリーゼも危険だ。それにリーゼとの約束もある。

 早く戻らなくては。

「行かせると思う?」

 その声で俺は現実に意識を引き戻される。

「私の目的はあなたを殺すことではなく足止めなの。あなたならこの意味が分かるわよね?」

 そう言われて俺は自分の失敗を悟った。

「固有魔術『完全なる支配者インペクバルドミナター』」

 この地域一帯はすでに彼女の領域であり、俺の逃げ道はすでになかった。

読んでくれている皆さま、あけましておめでとうございます。年末年始って忙しいですよね。おかげでなかなか続きを書く時間がありませんでした。という言い訳をしてます。

今年も楽しく読んでくれたら嬉しいです。

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