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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
帝国動乱編
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森の中で木を探す

 俺たちはバルザムークに貰った地図の通りに移動する。

 さすが皇帝、帝国の地理を完全に把握しているとでもいうような完璧な道筋だ。敵の兵が全くいない。

 数日が経ち帝都の街が見下ろせる丘にまでやってきた。

 帝都からは大軍が出陣していく。

 それはバルザムークが動いたということになる。

 軍の中にギルディアらしき人物はいない。バルザムークの予想通りになりそうだ。

「今のうちに流れを確認しておくか?」

 俺は四人、特に沈んだ顔をしているリーゼに向かって言う。

「そうですわね。この先は孤立無援の敵地ですもの。確認をしておくに越したことはありませんわ」

 ティーベルは真っ先に賛成してくれる。

「そうですね。私も最終確認はしておくべきだと思います」

「じゃあ私も~」

 フィリアとリリアも便乗してくる。

「……わかった。ガル殿、頼めるか?」

 リーゼの声にいつもの覇気がない。

「了解だ」

 とりあえず今は大事な作戦に集中させて紛らわせよう。

「俺たちはまず皇族のみが知る隠し通路を通って帝都に潜入する」

 隠し通路についてはバルザムークから聞いた。

 かなり重要な機密事項なのに部外者の俺に話してもいいのかと尋ねたらリーゼの婚約者なのだから身内だろうと言われてしまった。管理がガバガバである。

「正直外からの入り口はわかりにくい。目印は壁のそばの森の中にある巨木だ。その根元にあるらしい」

 だが森の中から一本の木を探し出せとか無茶苦茶だ。正面突破したいがそれでは帝都中に混乱を招くことになりかねない。

「その隠し通路を通って帝都内に入ると城の裏側にでるらしい。そこからは兵士の一人でもとっ捕まえてギルディアの居場所を聞き出す」

「豪快だね……」

「そうでもしなきゃギルディアのとこまでたどり着けん……それでここからはパターンで分かれる。まず一パターン目は誰の妨害も受けずにギルディアの元までたどり着いた場合、この時は全員でギルディアを叩く。二パターン目と三パターン目は敵に見つかった場合だ。この時、敵が弱ければティーベル、フィリア、リリアの三人で対処してもらう。いいか?」

「もちろんですわ!」

「はい!」

「任せて頂戴!」

 頼もしい限りだ。

「そして一番嫌なのが強力な敵が現れることだ。例えば魔族とかな」

「魔族……」

 リーゼは憎悪に似た声をもらす。

 リーゼはこの中で魔族に家族を殺された唯一の存在だ。それなのに今度は国を混乱させて父親と兄の殺し合いをさせている。魔族に対して嫌悪感を露わにするのは仕方がないと思うがそれがマイナスにならなければいいが、不安だ。

「もしそんな敵が現れた場合は俺が対処する。みんなはギルディアのところに向かってくれ」

 とりあえずそれが最適だと思う。

「もし例外が起きればその都度指示を出す。確認は以上だ。今日はいったん森の中から巨木を探し出そう。さすがにすぐに見つかるとは思えん」

 俺はさっき見た森を思い出す。結構の広さがあって一本の木を探し出すには骨が折れそうだ。






 鬱蒼とした森に入って数時間、目的の巨木がまったく見つかる気配がない。

 そもそも帝都の近くにこんな森があること自体普通はありえない。

 だが隠し通路を隠すにはもってこいだ。

 森の近くに帝都を作ったのか、あるいは帝都の近くに森を作ったのか。どちらにせよ上手くカモフラージュされている。カモフラージュされすぎて入り口が見つからないのは困ったことだが。

 こんなことならもう少し具体的な位置を聞いておくんだった。

「見つかったか?」

「ぜんっぜん見つからない!っていうかわからない!」

 リリアは悲痛な叫びをする。

「そうですわね。手がかりも全くですわ」

「はっきり言って正面突破の方が気楽です」

 ティーベルとフィリアも疲れたように嘆息する。

 もし木が魔術的な何かであれば探知魔術で一発なのだが、このような原始的な仕掛けには使えないのが魔術の厄介な点だ。

「リーゼは見つけたか?」

 しかし返事がない。

「リーゼ?」

 見渡す限りリーゼが見当たらない。

「どうしたんですか?」

「フィリア、リーゼを見てないか?」

「リーゼさんですか?そういえば見てないですね」

 どこかに行ってしまったようだ。さすがに迷子というわけではないだろう。

「『探知サーチ』」

 探知魔術を使うと森の奥に魔力反応が一つあった。

 俺はその魔力反応をたどるとリーゼが一本の木の前に佇んでいた。

 その木は他の木と比べるとかなり大きい。

「リーゼ……」

「ガル殿、この木で間違いない」

 リーゼはこちらを振り向かず静かに言う。

 リーゼはしゃがみ込むと手で砂を払いのける。すると石で作られたと思われる扉が地面から現れる。

「これが、隠し通路……?リーゼはこれの存在を知っていたのか?」

「いいや、知ったのは今回で初めてだ。でも何となくここだと思ったんだ」

 皇族の血とでもいうものだろうか?

「……この先に兄上がいるんだな」

 そんなしんみりされても慰め方がわからん。

「……とりあえず日も暮れてきたし夕飯にしよう。潜入するなら夜がいいだろうしな」

 今は任務に集中するしかないか……

 釈然としない気持ちを抱いたまま帝都に潜入することになった。

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