表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
帝国動乱編
137/176

嫌な予感

 ジークの即位した翌日、俺は言われた通り王城に向かった。

 使用人に案内されて通されたのは会議室だった。

「ガーリング様をお連れしました」

「通せ」

 中に入るとジークとリューク、そしてバルザムークもいた。

 そして誰もが深刻な表情をしている。

 これ、昨日の嫌な予感当たっちゃったかもな。

「それで俺はどうして呼ばれたんだ?正確にはリーゼが目的だったかな?」

 このメンツからして帝国関連なのは確定だろう。でもその理由がさっぱりわからない。

「実はな―――」

「ここは我に言わせてくれ」

 バルザムークはジークを手で制す。

「実は昨日帝国から早馬が来てな。帝都が陥落した」

「……は?」

 急な出来事に脳の処理が追い付かない。

「帝都が陥落?どういうことですか、父上?」

 俺はせいぜい脳の処理落ちですんだがリーゼにとっては生まれ育った故郷だ。言葉自体が受け付けなかったのかもしれない。

「我が留守にしている間、城をアドナクトに任せていたのだがギルディアが謀叛を起こしてな。アドナクトが殺された」

「ころっ……!」

 物騒な物言いにティーベルの顔が引き攣る。

「そしてギルディアの謀叛に呼応してやつとよくつるんでいた貴族の子息たちまでも反乱を起こし親を監禁している。今の帝国は我の派閥とギルディアの派閥で対立していることになる」

「兄上が?なぜそのようなことを?」

 リーゼはまだ混乱しているようで手がせわしなく動いている。

「わからぬ。わざわざギルディアが謀叛を起こす理由など……」

 バルザムークは本当に検討がつかないように考え込む。

 ギルディアは典型的な皇族な気がする。そんなやつが行動を起こす理由なんて一つしかない。保身のためだ。

「考えられる可能性としては自分が皇帝に就くためが一番高いと思っている」

「……なぜそうなる?ギルディアが皇帝の座に就くのは時間の問題だろうに」

 俺の答えにバルザムークはさらにしわを刻む。

「いや、そうでもない。ギルディアの地位を脅かすものが現れた。ラーコルの誕生だ。帝国の帝位は王国とは違い生まれの早さではなく強さで決まる。その制度自体は国の王としてのわかりやすい力で統治しやすい。しかし同時に権力闘争が起こりやすくなる一面も持っている」

「そうか……ラーコルか」

「別に彼が産まれたことが悪いわけじゃない。むしろいいことでもある。今回の場合はギルディアの性根が腐っていたことが原因だ」

「仮にも第一皇子に対して辛辣だな」

 俺の評価にジークは口をひくひくさせる。

「俺は正しい評価を下しているだけだ」

 そもそもあいつのこと嫌いだし。

「まぁいい。王国はバルザムーク殿に対して支援を行うことを決めた。とは言っても兵ではなく補給物資だがな」

「それだけでも助かっている。そもそもこれは帝国の内乱。本来であれば王国に助けを求めるなどあり得なかったこと。しかし今、我が王国にいることは僥倖だった」

 バルザムークは複雑な表情をしている。

「じゃあ今回は俺の出番はないな」

 人間たちのいさかいには関与しないと決めている。いくらバルザムークと親しくとも手助けすることはない。

「ガル殿、お願いがある」

 リーゼは俺に対して頭を下げる。

「私を帝国に向かわせてもらえないだろうか」

「……そう言うと思ったよ」

 帝国はリーゼの故郷だ。助けに行きたいと思うのは当然だ。

「俺にリーゼを止める権利はない。思う存分暴れてくればいい」

 リーゼの強さなら人間相手で後れを取ることはそうそうないだろう。

「いや、できればガルにも行ってほしい」

「……ジーク、何を考えている?」

 俺が帝国に行く理由が分からない。

「一つはこの内乱の結果を見届けてほしい。もしギルディア側が勝ってしまったら今後の対応も変わってくるからな」

「そんなもの後で知っても変わらんだろ」

 理由としては弱い。そんなことのためだけに俺を派遣するか?

「そうだけどさ、そんなにばっさり切り捨てる?……もう一つは、バルザムーク殿の方から説明を頼もうか」

「そうだな。さっきギルディアがアドナクトを殺したと言っただろ?それが不自然なのだ」

「どこが不自然なんだ?」

 別に誰かが誰かを殺すことに不自然はないと思うが。

「ギルディアとアドナクトの実力差は圧倒的なのだ。それこそ魔剣を持っていないギルディアがアドナクトに勝つなど不可能なはず。何かあるとしか思えん」

「……俺にその調査をしろ、と?」

「もちろん無理強いはしない。どうだ?」

「うーん……」

 正直、リーゼが心配だしついて行きたい気持ちはある。

「わかった。俺もついて行こう」

「それはありがたい!感謝する」

「でも帝国の内乱事態に首は突っ込まないからな」

「承知している」

 何も問題がなければいいが、あの胸騒ぎがこの事件に何か関係しているとしたら……

「もしかしたら作為的に仕組まれたものかもしれないな……」

 だとしたら何のためにこんなことを?意図が分からない。裏にいるのが魔族だったとしてわざわざこんな回りくどいことをするとは思えない。今まで戦ってきた魔族は自らの力だけで何事も解決しようとしていた。国を動かそうなんて発想はなかったはずだ。じゃあ今回は魔族と関係ない?さすがに決めつけるのは早計か。

「ガル様、急に静かになってどうしたんですか?」

「少し考え事をしていただけだ」

 それも全部帝国に行けばわかることか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ