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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
帝国動乱編
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お茶会

「そうなんですね!巨大な危機にも勇敢に立ち向かうティーベルお姉さま、素敵です!」

 俺はお茶菓子をつまみながらヒノワ王国でのティーベルの武勇伝を聞かせた。するとヒースロッテは目を輝かせながら聞いてくる。しかもときどき大袈裟なリアクションをしているからおもしろい。

「はぁ……大満足です……」

 ヒースロッテの肌がツヤツヤになっている。

「もういいでしょう……」

 ティーベルは耳を真っ赤にしてテーブルに突っ伏している。しかも湯気まで出てるし。

「ティーベルも限界だしこの話は終わりにしよう」

「そうですね」

 俺とヒースロッテはヒノワ王国の話を切り上げる。

「それじゃあ帝国のことについて詳しく聞こうか」

「いいですよ」

 リーゼは帝国の話になるとわかると体を強ばらせた。

「私が聞いた話では今から一か月ほど前に皇帝に第三皇子が産まれたという噂を耳にしました」

「それは噂なのか?」

「現時点では、ですけどね」

 そこでヒースロッテは一息つく。

「ですがこれはほぼ確定と言っていいでしょう。このような噂はむやみやたらに流れるものではないでしょう。噂の出どころも確かです。帝国から来た商人から聞きましたもの」

「そうなのか」

 だとすると帝位継承権を持つのは二人になったということか。順当にいけば第一皇子のギルディアが皇帝の座につくはずだ。しかしギルディアの性格は最悪だ。それは皇帝も懸念していた。もしかするとその第三皇子が皇帝の座につく可能性も浮上してくる。

 しかしここで重要になってくるのが帝国の風潮だ。

 帝国は完全な実力至上主義だ。皇帝になるには力で貴族たちをねじ伏せなければならない。

 俺たちが出会った当初もギルディアは帝国貴族たちから疎まれていた気がしなくもない。そう考えると現実的に考えて第三皇子が帝位を継ぐことになるのかな。

 さすがに第三皇子がギルディアのようにならないように教育するだろうし。

「母は……その子の母は誰なのかわかるのか?」

 リーゼはヒースロッテに質問する。

「それはわかりません……申し訳ありません」

「謝らないでくれ!一々母親なんて噂になることもないだろうしな」

 そう言うもののリーゼの顔には納得していないと書かれている。

「リーゼがそれを気にするってことはバルザムーク殿に伴侶は複数いるのか?」

「あぁ。二人、いや三人だな」

 俺の質問にリーゼは頷く。

「一人目は正妻、ザーニャ・プロメテア。私とギルディア兄上の母親だ」

 そう言うリーゼの顔はあまりいいものではなかった。

「彼女は典型的な貴族でな。個人的な意見になるが愛情を注いでもらった記憶はあまりない。権力にしか目のない女だよ」

 リーゼは寂しそうに笑う。

「二人目は側室、フランソワーズ・プロメテア。ウェイン兄上の母親だ。実の母親より可愛がってもらったよ」

 今度は柔らかい表情になる。

「彼女はとても優しくてな。実の子ではない私たち兄弟にも優しかった。私にとっては彼女こそが母親というべき人だな」

 その顔はなんとも慈愛に包まれた朗らかな表情で本当にその人のことが好きなのだとわかる。

「三人目は……側室という扱いになるんだろうな」

「……どういうこと?」

 曖昧な表現に首をかしげる。

「私も詳しくは知らない。数回だけ噂に聞いたことがあるだけなんだ。彼女の名前はハーミリア・プロメテア。父上相手に唯一剣で打ち負かしたらしい」

「それは本当か!?」

 俺はバルザムークが剣で負けたという事実に驚愕してしまう。

 あの時の俺でも単純な剣技では勝ち目があるか微妙なラインだったってのに。

 そのハーミリアって人はどんだけ強いんだよ……

「でもどうしてそれが噂でしか聞いたことないんですの?」

「確かに不思議だね。一応は親子関係だよね?もしかして……」

 リリアの言葉が途切れたところでリーゼは続けるように口を開く。

「消息不明なのだ。何十年前からな」

 ティーベル、リリア、フィリア、ヒースロッテは表情を暗くする。

「私もあったことがないし母上、フランソワーズ母上すらあったことがないらしい。でも父上が初めて惚れた女性なんだそうだ」

 それは剣で負けたからだろうか?俺とリーゼの馴れ初めを思い出す。

「だがそれほどの強者が消息不明って、何があったんだ?」

「魔族の幹部の討伐で出撃して、それ以来姿を見せない。もう亡くなっているだろう。父上も覚悟はできているはずだ」

 マサムネもそうだったが惚れた相手がなくなるとはどれだけ苦しいのだろう。

 もしリーゼが、ティーベルが、リリアが、フィリアが死んでしまったら?

 考えるだけで胸糞が悪くなる。やめだ。

「それにしても魔族の幹部か……」

 ダリューンが魔族だったということは他の仲間も魔族になっている可能性が高い。しかも古参に入るだろう。もしかしたら幹部になっているかもしれない。あいつらが罪のない人々を殺しているなんて考えられない。あいつらが魔族でないことを祈りたい。

「魔族の幹部に関しては王国にも記録に残っていますわ。これまでの記録から幹部は六人だと考えられていますわ」

 六人……人数的には少ない。これで魔族の幹部が俺の前世の仲間たちである可能性は低くなった。

「さ、難しい話はここまでにして雑談としゃれこみましょう!」

 行き詰ってきたところでヒースロッテが辛気臭い空気を払拭する。

 こういうことができる人物は貴重だな。

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