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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
ヒノワ王国編
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一報

 タルミールで一泊した後、俺たちは王都に向かった。

 ティーベル、リリア、リーゼはまだ残りたそうにしていたがヒノワ王国でかなりの時間を費やした。いくら国王からゆっくりしてもいいと言われていても遅くなるのは避けたい。

 それにマサムネからは親書も預かっている。これは早急に届けたい。

 そして馬車では五日かかる距離を二日で駆け抜けた。




「報告は以上です」

「ご苦労である」

 俺たちは国王たちにヒノワ王国での出来事を報告した。

「そしてこちらが親書です」

 俺は親書を国王に手渡す。

「陛下、ヒノワ王国はなんと?」

「うむ……我がランバルト王国との友好関係を結びたい。時期王と国民もそれを望んでいる、と」

「どのような返事を?」

「そうじゃのう……」

 国王は頭を悩ませる。

「ティーベル、そなたはヒノワ王国で何を感じた?」

「わ、わたくしですの?」

 ティーベルは急な問いかけに驚いたようだが冷静に考え始める。

「どのようなことでもいい。リヴァイアサンとの戦いで感じたことでもヒノワ王国の街のことでもいい。ヒノワ王国に関することでなくともよいぞ」

「そういうことでしたら二つほどございます。一つ目はリヴァイアサンの討伐の際、命を落としかねない事態に陥りました。改めて自分の実力不足に気付かされました。わたくしは自分で魔族を倒せる実力があると自負しております。そこに慢心が生まれてしまいました。そのせいでこのような失態をしてしまいました。とても、悔しかったです……」

 ティーベルは歯を食いしばる。

「して、二つ目は?」

「はい。ヒノワ王国の民たちは最終的にわたくしたちを受け入れてくださいましたが、始めは敵対視されておりました。特にイット・カグラ様からの敵愾心が強く何度も反論したいと思ったほどです。しかしその中で、彼も国民たちも自らの信念に基づいていました。そして何が正しいのかわからなくなりました。彼らには彼らなりの価値観があり、それを否定することはできません。これはヒノワ王国に行ったからこそわかったことです」

 ティーベルはそう締めくくる。

「そうか。ちゃんと自分の成長に役立てれたようだな………しかしもっと命を大事にしてくれ……」

 国王は渋い顔をしながらため息をつく。よほど心配したのだろうな。

「リリアはどうだ?できればティーベル様と違う意見が聞きたい」

 リュークはリリアに尋ねる。

「はい。私としては政治の在り方が全く違うと感じました」

「ほう……」

 リュークは面白そうに目を細める。

「王国は宰相を補佐としていますが基本は国王様が国のすべてを担っています。しかしヒノワ王国では政務、軍事が完全に分かれていました。覇王であるマサムネ様は最終的な意見を述べるだけで普段は暇を持て余しているように感じました」

 まぁあの人俺たちの休養に何かとついて来てたからな……

「それはマサムネ殿が無能でお飾りの王という事か?」

「違います。むしろ何でもできるため最終的な決定だけを任されているのではないかと」

「それはどういうことだ?」

「マサムネ様が一人で行うことは容易でしょう。しかしそれでは独裁になりかねず、覇王の権力が強くなりすぎることを恐れたのでしょう。いくら英雄と言えど、その子孫が英雄になるとは限りませんから。私からは以上です」

 リリアはそう締めくくる。

「よく見聞を広めてきた。それでこそバルマント家の娘だ」

 リュークはどこか誇らしげにリリアを褒める。

「最後にガーリング、そなたはどう思う?」

 俺にも聞くのか。

「俺からは言うことはただ一点だけ。マサムネ・ヒノワとは敵対するな、でしょうか」

 俺がそう言うと国王とリュークは驚いた顔をする。

「それは君でもそう思うのかい?」

「俺個人では勝てるでしょう。しかし組織間の争いでは難しいところです。あの方は最終的に自分の勝ちを拾っていく方というのが私の分析です。それに国同士の争いには俺は関与しません。そこから考えると失礼ながらランバルト王国に勝ち目は少ないかと」

 それに終始、腹の内を見せることがなかった。俺を英雄騎士だと知ってもだ。

 俺たちの休養についてきたのも本当に遊びたかっただけなのか、俺たちを観察していたのかわからなかった。俺はあれほどの傑物に出会ったことがない。

「うぅむ……」

 国王は眉間にしわを寄せる。

「であればこの申し出を受け入れない理由はないな……我がランバルト王国はヒノワ王国との同盟関係を結ぼう」

 こうしてヒノワ王国の一件は終わりを迎えた。







 城から屋敷に帰るときには空は夕暮れになっていた。

「今日は帰ってゆっくりしたいな」

 俺は腕を空に伸ばして伸びをする。

「でしたらすぐにご飯の準備をしましょう」

「フィリアも疲れているでしょう。たまには屋敷の従者たちに任せてもいいのではないかしら?」

「ですが……」

「それにフィリアは将来ガルくんの奥さん、つまり従者たちに尽くされる立場になるんだよ。もっと尽くされる立場に慣れないと」

「それにフィリアが働きすぎると従者たちの仕事を奪うことにもなるからな」

「そうですか……わかりました!がんばって甘えてみます!」

 フィリアは三人に説得されて今日はゆっくりすることにしたようだ。

 でもがんばって甘えるって何だろう?

「ティーベルお姉さま!」

 どこかで聞き覚えのある声でティーベルを呼ぶ。誰だっけ?

「ヒース!」

 ティーベルは人影を見つけて駆け寄る。

 ヒースロッテ………ヒースロッテ・ヘルサルか!思い出した!

「ご無事で何よりです!」

「貴方も元気そうで何よりですわ」

 少女二人が手を取り合ってわいわいしている。ほのぼのとした光景だ。

「でもどうしてここに?」

「父からみなさまが帰ってきたと聞いて飛んできました!」

 なんか元気いっぱいなのは変わらないな。

「ありがとうございますわ。元気が出ましたわ」

 ティーベルはヒースロッテを抱きしめる。

「それとリーゼロッテ様にお知らせがございます」

「私にか?」

 ほぼ初対面と言ってもいい相手から話を振られてリーゼは首をかしげる。

「プロメテア帝国に第三皇子が誕生したとのことです」

「そうか、弟ができたのか……………え!?弟!?」

 あの皇帝、ちゃんと皇帝として働いてたんだな。

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