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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
ヒノワ王国編
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英雄騎士の感情

 今日はいよいよヒノワ王国出立の日だ。

 港には多くの人が集まっている。

「うぅ……みなさんと離れ離れになるのは寂しいよ~」

「よしよし~。また会えるからね」

 ツバキがリリアに抱き着いているがあしらわれている。

 敬語もなくなってるし昨日の温泉で仲が深まったのかな。いいことだ。

「みなのもの、よく聞け!我らヒノワ王国はランバルト王国と正式に国交を樹立する!」

「「「「わあああああああああああああああああ!」」」」

 マサムネの宣言に港に集まった国民たちが歓喜する。

 始めは睨んできてたってのに変わったな。

「これからよろしく頼む」

「こちらこそ」

 俺とマサムネは固い握手をする。

 その後はイットとツバキの婚約発表がされて国民たちは度肝を抜いていた。




「いろいろあったな~」

「そうですね~」

 俺とフィリアは船の上で感慨にふける。

「いやフィリアはそこまでしてないでしょう……」

 そこにティーベルが水を差す。

「私だってハルミさんと仲良くなったんですよ!」

 フィリアは心外だというように頬を膨らませる。

 ハルミって確かツバキの侍女だった人だよな。

「むこうで過ごした時間は決して長くはなかったが寂しく感じるな」

 リーゼからは哀愁が漂ってくる。

「じゃあまた行けばいいじゃないか、剣姫様?」

「……っ!その呼び方はやめろと言っただろ!」

 リーゼは顔を真っ赤にして叫ぶ。

「何がそんなに嫌なんだ?名誉なことじゃないか」

「剣姫など……私には分不相応だ。私は純粋な剣技ですらガル殿に遠く及ばないのだぞ」

 そうだけど、それは仕方なくないか?年季が違うんだし。

「他人からの好意はちゃんと受け取っておくべきだぞ」

「それはガル殿にも言えることだぞ」

「俺?俺はちゃんと受け取っているつもりなんだけどな……」

 どこかで何かやったかな?

 一人で唸っているといつの間にか真横に来ていたリーゼが呆れたようにため息をついた。

「ここまで言って気付かないとは……鈍感すぎないか?」

「いったい何を言って―――」

 俺が言い終える前に頬に温かいものが触れた。

 見ていなくてもわかる。俺の頬に触れたのはリーゼの唇だ。

 ティーベル、リリア、フィリアの三人は顎が外れんばかりに口をポカンと開けている。

「な、にを?」

「ガル殿は恋愛事に関して素人なのだな」

「わ、悪いか?」

「照れた顔も可愛いな」

「~~~っ!」

 これはどんな拷問なんだ!

 するとリーゼは急に真面目な顔になった。

「私たちはいつ死んでもおかしくない。今回のリヴァイアサン討伐で嫌というほど思い知らされた」

 それは俺も同じだ。俺自身が死ぬとは思わない。だがあの魔力砲、イットが止めなければティーベルとリリアは死んでいた。

 それに油断していないとはいえ死んでしまうことはよくある。前世でもこいつが死ぬのかと驚いたことも多々ある。

「だから私たちの愛をしっかりと受け止めてほしい」

「愛って……」

 恥ずかしくて茶化そうとするも他の三人も真剣な表情をしていたため口を閉じる。

「ガル殿は私たちのことは好きなのだろうか?」

「それは……!」

 ド直球で聞かれて慌ててしまう。

 他の三人は期待したような目で俺を見つめる。

 逃げ道は完全にふさがれた。

 ここは正直に話すとしよう。

「俺は、俺自身の感情がうまく表現できないんだ。特に恋愛面に関してはな」

「……そうなのか?」

 俺は素直に思うことはできる。でもその思いを感情として認識することが苦手なのだ。

 その理由は分かっている。

 俺は感情のままに行動したことが少ない。それゆえに感情の認識があいまいになってしまった。

 あの時は必死だった。とにかく死なないように強さを手に入れた。そうでなければ死んでいた。恋人は作らなかった。いつ死んでもおかしくなかったから。

 組織を作ってからはより一層感情を引きはがした。俺の感情によって多くの人が死ぬ。なら感情なんかいらない。唯一感情をのぞかせることができたのは九人の仲間だけ。しかしその九人の中にいた女性陣には仲間意識が強くて恋愛感情を抱くことがなかった。

 そう考えると俺は人間として不完全な気がしてきた。

「え?ちょ、ちょっと?なんでガルくんが落ち込んでるの?」

「いや。俺は完璧だと思っていたんだが完璧じゃないと気付いてしまったからな……」

「「「「……………」」」」

 四人は呆れてしまったのか沈黙している。

 そうだよなぁ。俺が完璧だと思ったから好きになってくれたんだよなぁ。

 これ、フラれたらどうしよ……

「「「「今更なにを……」」」」

「え?」

 なんでそんな呆れたようなジト目で俺を睨んでるんだ?

「ガルさんが完璧じゃないのは知ってますわよ」

「そのうえでガルくんのことが好きになったんだから」

「そもそも完璧な人間なんてこの世にいないんだからな」

「ガル様の欠点など、いくらでも言えますよ」

 待ってフィリア。そんなに俺欠点まみれなの?自身なくすよ?

「だから気にすることはない。まだガル殿が私たちが好きだと言えないのならそう言わせてみせるさ」

 リーゼがいつもよりカッコイイ!?

「ちょっと待った!」

 そこにリリアが割り込んでくる。

「なんで一人だけいい雰囲気出してるのよ!」

 リリアはリーゼと俺を引き離す。

「私だってガルくんが好きなんだから!」

 リリアは俺の頬にキスをした。

「「ずるいです(わ)!」」

 それに続くようにティーベルとフィリアも頬にキスをしてくる。

「さ、三人とも?」

「絶対に離しませんから」

 フィリアはギュッと俺を抱きしめる。

「貴方に好きと言わせてみせますわ」

「私も頑張るからね」

「負けてはいられないな」

 三人も俺を抱きしめる。

 少し暑苦しい。でも、この暑苦しさが愛おしい。この四人にはいつかしっかりと好きと言いたいものだ。



 ……フィリアには告白に近いこと言ってなかったっけ?まぁいいや。

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