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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
ヒノワ王国編
122/176

休養

 リヴァイアサン討伐という目的を達成した俺たちはヒノワ王国に滞在する理由はない。

 帰国することも考えた。しかしツバキの強い要望もあり一週間の療養をすることになった。

「で…なんで?」

 俺は漁船の船で釣竿を手に突っ立っている。

 一日目はゆっくりと休んで今日は二日目だ。

「だって釣りしたいって言ってただろ?」

「確かに言ったよ…言ったけど、この人まで連れてくる必要ないんじゃない!?」

 俺の指の先にいるのはヒノワ王国も覇王、マサムネ・ヒノワだ。

「お、お前!覇王様に向かってなんて無礼を!」

「気にするな。我輩は許しておる」

「それなら……ってええええええええええええええ!?」

 突然の叫びに耳をふさぐ。

「うるさい」

「いやいやいやいや!いつの間に覇王様と仲良くなったんだ!?」

「仲良くって言うか……」

 あの人が勝手に俺を敬っているだけなんだよなぁ。

「そもそも仕事はどうしたんですか?」

「すべてヨシトモに任せてきたから問題ない」

 問題大アリだろ!

「ガル様ガル様!早くやりましょうよ!」

 フィリアは目をキラキラさせながら急かしてくる。

「わたくし、釣りは初めてですわ」

「大体の大陸の人はそうなんじゃない?」

「そうだな。私もだ」

「ならうちが手取り足取り教えてあげますよ」

 女性陣は女性陣で楽しんでるな。




 結局俺たちは数時間釣りを楽しんいる。

「釣れました!」

「わたくしもですわ!」

 フィリアとティーベルはテンポよく釣れている。もう何十匹も釣っている。

「あはは。リーゼは全く釣れてないじゃん」

 リーゼはこの数時間、一匹も釣れていない。

「そういうリリアだって数匹だし、何なら一匹魔物だったじゃないか!」

 リリアはなんと魔物を釣り上げてしまった。

 まぁここにいるのはこの世界で最強のグループだ。ティーベルにあっさりと焼き魚にされてしまっていた。

「みんなちゃんと釣れてるからいいんですよ……例外もいますが……」

 そういってツバキはリーゼと、マサムネを見る。

 実はマサムネも一匹も釣れていないのである。

 そのせいかマサムネは少し落ち込んでいる。

「た、たまたまですよ!」

 イットは慰めの言葉を投げかける。

「ちなみにいつもはどうなんです?」

「いつもそんな感じだから気にしなくてもいいですよ」

 俺の問いかけにはマサムネの代わりにツバキが答えた。

「じゃあもう無理でしょう」

 俺がそう言うとマサムネはさらに落ち込む。

「ガーリング!なんてことを!」

「事実なら仕方ないだろ。むしろ下手な慰めは人を傷つけるぞ」

「はいはい。残り10分ですよ。これで最後ですからね」

 ツバキが全員に呼びかける。

「絶対釣る絶対釣る絶対釣る絶対釣る」

 リーゼの気迫が凄まじい。

「また釣れました!」

 その隣でフィリアがさらに魚を釣り上げた。

 フィリアに殺気を向けないであげてよ。みんな若干引いてるから。

 その10分後―――

「全然釣れない……」

 リーゼは絶望的な表情をしている。

 ちなみにマサムネもゼロである。

「もう終わりですよ」

 ツバキはリーゼの傍によると優しく声をかける。

「もうちょっと、あと1分だけ……」

 完全に取りつかれてやがる。

「……来た!」

 リーゼが叫ぶ。なんと釣竿に当たりの反応があったのだ。

「つ、釣竿をしっかり引っ張って!」

「むぅ…結構重いな」

「大物かも!イッくん、網持ってきて!」

「わかった!」

 船の上があわただしくなる。

「リーゼが大物を!?」

「すごいですわ!」

「私もお手伝いします!」

 3人もやる気満々だ。

 そしてだんだんと魚の影が見えてくる。影の大きさは今までで一番大きい。

「何の、これしき!」

 リーゼは身体強化魔術を施して釣竿を力いっぱい引き上げる。

 そして魚は海上に釣り上げられる。

「大きい!」

 リーゼの目は爛々と輝いていた。

 船の上に乗せるとリーゼはドヤ顔していた。

「どうだ!すごいだろ!」

「すごいです!」

 平和だな~。

「どうして我輩だけ……いっそこの地帯の魚を殲滅すればみな平等に……」

 一名を除いて……

 この人が言うと冗談に聞こえない……

 この日の晩飯は魚料理がメインでとても美味しくいただいた。




 その後も街をぶらぶらしたり他の島に観光に行ったりした。

 その中でも面白かったのは五日目にあったオグラ家の領地に遊びに行った時だ。

 この時はいつものメンバーにヨシツグが加わった計八人での行動となった。

「こちらは甘味処でございます。羊羹などが大変美味と評判です」

「……堅苦しい。息が詰まる。休めない。もっと軽くならないのか?」

「貴方がたはこの国の英雄で客人です。失礼があってはなりません」

「本人が言ってるんだけど……」

「何を言っても無駄だぞ。ヨシツグは昔っから頭カッチカチだからな」

「イット……君は僕のことをそう思っていたのか……」

「だってお前俺のこと叱ってばかりじゃないか」

「そ!れ!は!君が問題を起こしまくるからだろ!」

 ヨシツグはイットに怒鳴る。

「そもそも君はガーリング殿に軽々過ぎるんだ!もっと礼節を持ってだな」

「ガーリングが許してくれてるし何より友人だからな」

「親しき中にも礼儀ありだ。それに君にも立場というものがあるだろうに――――」

 そっからはヨシツグによる小言パレードだった。

 10分後くらいで呆れたツバキから声がかけられる。

「そんなんだとサキナちゃんに嫌われるよ」

「な!そ、そんなことは……」

 ツバキがとある女性の名を口にした瞬間ヨシツグが口ごもる。

「そのサキナとは誰なんだ?」

「前言ってたヨシツグの婚約者だよ」

 例の人か。

「彼女は関係ないだろう」

「でもでもそんなに堅苦しいとサキナちゃんも嫌いになるんじゃないかな?」

 ツバキはお茶目にウインクをする。

「そん、な……」

 絶望したようにヨシツグは膝から崩れ落ちる。

 こんなに表情豊かなんだな。でもこの反応はなんというか

「ヨシツグの方がサキナさんって人のことが好きなの?」

「な、何をおっしゃるのですか!」

 ヨシツグは顔を真っ赤にする。これはまた初心な反応で。からかいがいがありそうだな。

「ダメですよ、ガル様」

 俺の考えを見透かしたようにフィリアが忠告してくる。

「まだ何も言ってないよ」

「顔が言ってました」

 え?まじ?

「何年一緒にいると思ってるんですか」

 なんて優秀なメイドなのだろうか。

「サキナさんは学校での先輩でヨシツグは彼女に一目惚れしたんだよ」

「勝手なことを言うな!」

 ヨシツグの意外な弱点がわかってしまったな。

「ヨシツグ様ではありませんか」

 突然見知らぬ女性の声が聞こえた。

「さ、サキナさん!」

 へー。あの女性が例の婚約者か。

 あのヨシツグがあわあわしている。あんなカッチカチなヨシツグがさらにカッチカチになっている。

「うふふ。ヨシツグ様はみなさんとご視察ですか?」

「は、はい!その通りです!」

 声裏返ってんぞ。

「サキナちゃんも一緒に回る?」

「ツバキ様がよろしいのであればぜひ……カイト、お前たちはヨシツグ様のお屋敷にお戻りなさい」

「しかし護衛がいなくては危険です」

「そんなことありませんよ。ここにはヨシツグ様にイット様、英雄ガーリング様一行がおられます。気にする必要はないですよ」

「ですが……」

 それでも護衛は渋る。

「ご心配には及びません。サキナさんは僕が必ず守ります」

「俺もついてるし大丈夫だろ」

「お二人がそうおっしゃるならば……皆さま方、サキナ様をどうぞよろしくお願いします」

 護衛の人たちは去っていく。

「じゃあ回ろっか」

「そうですね。思う存分楽しみましょう」

 それからのヨシツグは変に空回りしていて面白かった。

「二日後は楽しみにしているわ」

「二日後って何かあるのか?」

 サキナが突然そんなことを言うので気になった俺はサキナに尋ねた。

 二日後といえば俺たちの最後の療養日だ。

「聞いていないのですね。明後日はツバキ様の誕生会なのですよ」

「誕生会?」

 リリアは興味深そうだ。

「知らないんですか?ヒノワ王国では自分が生まれた日を誕生日と言って盛大に祝うのです。そしてその日に年を取るのですよ」

「ヒノワ王国ではそのような文化があるのだな」

「その文化、ぜひ大陸にも取り入れたいですわね」

 リーゼとティーベルも興味津々みたいだ。

「いきなり国には浸透させられないけど俺たち個人では今年からやってもいいかもね」

「それいいね!」

 リリアは目を輝かしている。これは決定かな。

 しかしここで残念なことが発覚する。

「私の誕生日はすでにすぎているんだ」

 まさかのリーゼの誕生日が終わっていた。

「それならうちの誕生日と一緒に祝いましょう。より一層楽しくなりそうですね」

 ツバキはどこかウキウキしている。

「いいのか?そんなこと急に決めても」

「大丈夫ですよ。それにリーゼロッテさんはヒノワ王国で人気が高いですから」

 そうしてヒノワ王国の今後が決まることになるツバキとリーゼの誕生会が始まる。

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