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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
ヒノワ王国編
120/176

勝利後

 リヴァイアサンが倒されたことで生き残った者たちが勝ち鬨をあげる。

 ハクトも無事に討伐できたことに安堵している。

 そして最大の功労者であるイットは棒立ちしていた。

 まったく動く気配がないため心配になってくる。

 見守っているとイットはバタリと倒れてしまった。

「イット!」

 俺は慌ててイットに駆け寄る。

「『快復』」

 俺はイットに光系統魔術の中級魔術で治療する。

 イットはボロボロだった。体も、中身も。中身というのは魔力のことだ。

 イットの治療は今のリリアには難しいだろう。

「ふぅ……これでいいだろう」

 俺はイットの状態が安定したのを確認して緊張を解く。

 そのせいか体に痛みを感じる。リヴァイアサンに吹っ飛ばされた時に骨を数本やったかな。

 みんなに知られたら心配させるしさっさと治しとくか。

「ガル様!」

「ぐへっ!」

 俺は自分に光系統魔術をかけようとしたところでフィリアにタックルされる。

 負傷していたこともあり衝撃が身体に響く。

「無事でよがっだでず……」

「フィリア、落ち着け……」

 リーゼが呆れながらフィリアの首根っこを掴んで俺から引き離す。こういうところを見るとまんま猫なんだよな。

 内心ほっこりしているとリリア、ティーベル、ツバキも合流してくる。ツバキはリリアかティーベルに降ろしてもらったか。

「ガルくん、怪我してるじゃない!」

 リリアは慌てて俺に光系統魔術を施す。

「イッくん、目を開けてよ!」

 ツバキはいつの間にかイットのそばで声をかけていた。

「気を失ってるだけだ。状態は安定している」

「そ、そうですか……」

 ツバキは少しだけ落ち着きを取り戻すとイットの頬に手を沿える。

 もしここでイットの目が覚めたらどんな反応をするのか。

「ガルさんも、無事でよかったですわ」

 ティーベルは心からホッとしている。

「俺が死ねわけないだろ」

「ですがリヴァイアサンに吹き飛ばされていましたわよね!」

「そうですよ!私でも肝を冷やしましたよ!」

 フィリアもここぞとばかりに主張してくる。

「た、確かにあれで負傷したけど俺が庇ってなかったらイットは死んでたよ」

 俺の言葉にティーベルとフィリアは口ごもる。

 あの攻撃を直撃して無事なのは俺くらいだ。名誉の負傷ということだな。

「それでも、だよ」

 俺が少し得意げになっているとリリアが真剣な声で叱ってくる。よく見るとその目には涙が溜まっている。

「リリア……?」

「私には…私たちにはガルくんが一番なの!ガルくんさえ無事なら何でもいいの!ヒノワ王国の人たちやツバキには申し訳ないけど、イットくんが死んだとしてもガルくんが生きてくれればいいの!」

 リリアは俺に抱き着いてくる。

「お願いだから、無茶しないで……私たちに心配かけないで……」

 ここまで心配させていたとは。

「……ごめん。でも、多分これからも無茶をすると思う」

 俺ならどんな攻撃でも死なない自信がある。だから危ないと思えばまた誰かを庇うだろう。だって俺は、「英雄騎士」だから。

「……そう言うと思ったよ」

 リリアは俺から離れる。

「だから約束。絶対に死なないで。私たちを置いていかないでね」

「わかった。約束するよ」

 俺はこの婚約者たちと一緒に生きていこう。人生二回目なんだ。もっと大事な人との関わりを大切にしないとな。







 それはそうと、イットのあれはすごかったな。

 あれとはリヴァイアサンの魔力砲を受けとめたことだ。

 リヴァイアサンの魔力砲は俺でさえ危機感を持つほどだ。

 もしかしたら俺の知らない能力を持っているのかもしれない。

 どんなからくりであってもあの魔力砲を受けとめたことはイットにとってこれからの自信になるだろう。

 そこにリヴァイアサンにとどめを刺した。ボロボロの状態になりながらも俺の課題をこなしてみせた。倒れたとしても最終目標を達成したのだ。少し前までだったら逃げていたかもしれないのに。よくぞここまで立派になったものだ。

 この戦いで得た自信が変な方向に助長しなければいいが、これからの成長に期待だな。

「ガーリング殿!早く船にお戻りを!」

 船からハクトの声が響く。

 どうやら氷がだんだんと溶け始めているようだ。

「イットは俺が運ぼう」

 俺は気絶しているイットを肩に担ぐ。

 船まで行くとロープが降ろされていた。

「それを使って上がってきてくれ」

 そう言われても片手はイットで塞がれてるからな。

「よっと」

 俺は船に飛び乗る。

「わたくしも」

「私も行きます」

「わったしも!」

 続けてティーベル、フィリア、リリアも船に飛び乗る。

「え、あっあの……」

「ツバキ殿は私が連れていこう」

「きゃ……ふぇぇぇぇぇぇええ!」

 リーゼはツバキをお姫様抱っこで抱きかかえる。

「しっかり掴まっててくれ、よ」

 リーゼも一気に船に飛び乗る。

「これで全員だな」

 俺は船を見渡すとフェニゲールを解除して氷の地面を完全に解く。

「ん?どうしました、ハクト殿?」

 ハクトが困惑しているように苦笑いをしていた。

「いえ。ロープを使わずに船に飛び乗るとは……実力差は分かっていたが感覚が分からなくなってくるな」

「そんなことないですよ」

 どうせイットもできるんだし。

「そういえば、帰ったら祝勝会でもやりましょう。大々的に公表した方がいいですね」

「そうだな。帰ったらすぐに手配しよう」

 そうして俺たちは帰路についた。

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