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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
ヒノワ王国編
119/176

VSリヴァイアサン③

 リヴァイアサンから放たれた魔力砲は船を二隻を消し飛ばした。さらにはリヴァイアサンがどれだけ暴れてもひび割れなかった氷の地面を削り取った。

 その事実に船に乗っていたヒノワ王国の兵たちは恐怖で我を失うものが続出した。

「落ち着け!」

「みなさん、正気を保って!」

 ハクトとリリアは声をかけるも落ち着く気配は全くない。それどころかパニックになっている兵士たちにつられてどんどんと我を失うものが増えていく。

「なんて厄介な」

 俺は舌打ちをしながらリヴァイアサンの目の前まで飛翔する。

「『豪炎』!」

 リヴァイアサンの口に炎が炸裂して燃やす。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 これで少しは時間を稼げる。今のうちに何か手を打たなければ。

「これなら!」

 声がすると思ったらイットがリヴァイアサンのヒレを切り落とそうとしていた。

「秘刀『七星流転しちせいるてん』!」

 リヴァイアサンの片ヒレに七つの傷がつき、そこからヒレが切れ落ちた。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 リヴァイアサンは苦しみ悶える。

「このまま!」

「一気に!」

「畳みかけますわ!」

 リーゼ、フィリア、ティーベルの三人も攻撃する。

 ティーベルの魔術がリヴァイアサンの顔面に命中する。

 それによって次の標的がティーベルの乗った船に定められる。

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 再びリヴァイアサンの口に魔力が集まる。

 リヴァイアサンの口の方向がツバキのいる船に向いていることに気付いたのかイットが慌てる。

「まずい……ツバちゃん!」

 その大きな声に反応したのかリヴァイアサンは尻尾をイットに向ける。

 普段のイットであれば簡単に避けられたのだが今のイットは余裕をなくしている。無防備な状態だ。

「イッくん!」

 イットにリヴァイアサンの尻尾が迫る。

「くそ……!」

「世話の焼ける!」

 俺は咄嗟にイットを庇う。

「ぐっ!」

 急ぎ過ぎたため魔力障壁をまともに展開する暇がなかった。薄い魔力障壁を軽々と壊され俺は吹き飛ばされる。

「ガーリング!」

「行け!」

 俺は吹き飛ばされながらもイットに檄を飛ばす。

 そうしている間にもリヴァイアサンから魔力砲が放たれる。

「ツバちゃん………!」

 船の前に魔力障壁が展開される。ティーベルだ。

「さすがに、キツいですわね……」

「私も手伝うわ」

 顔をしかめながら魔力障壁を展開するティーベルにリリアも隣に並んで魔力障壁を展開する。

 リリアもティーベルほどでないとしても普通の魔術師に比べて高度な魔力障壁は展開できる。

 二人がかりで展開される魔力障壁は通常ならひびが入るはずもない。

 だがその魔力障壁にひびが入る。

 そのひびはだんだんと広がっていく。

「もう、これ以上は……」

「無理、かも……」

 ティーベルとリリアも限界に近づいてきている。

 パリント割れる音がする。魔力障壁が限界が来たのだ。

 船に魔力砲が迫る。

「いやあああああああああああああああああ!」

 ツバキの叫び声が響く。

 そして大きな光が船を包み込む――――直前に魔力砲が止められていた。

 誰もかれもが死を覚悟していたため何が起こったのかわからなかった。そんな中ツバキだけが魔力砲を受けとめた人物を見つめていた。

「イッくん!ダメ!逃げて!」

 イットは人の身で化け物の魔力砲を受けとめていた。





「うぐぐ……」

 イットは魔力砲を受けとめながら苦し気な声も漏らす。

 すでに腕や足は限界を迎えている。

 いくらティーベルとリリア魔力障壁で威力が減少したと言っても元が強力すぎる。一般兵だったら平気で消し飛ぶ威力がある。

 イットが両足で立っているのが奇跡というレベルだ。

 その奇跡を成り立たせているのは二つの要因。

 一つはイットの魔力だ。

 本来、イットの魔力は少し優秀程度でしかなかった。しかしガーリングの魔力が混じったことでイットの魔力は超がつくほど優秀になった。それによって受けとめられる攻撃の強さも激増した。

 もう一つはイットの持つ刀だ。

 幻聖刀は神刀と呼ばれている。神刀と呼ばれるからには特別な力がある。それは魔力そのものに干渉することができるという権能だ。

 通常、武器には多少なりとも魔力が含まれるため魔術に干渉することができる。しかしそれは魔力ではなく魔力の流れに干渉することによって魔術を防げるようになっている。

 そのためこの刀以外の武器では魔力そのものを集めた魔力砲を受けとめることはできない。それはもちろん、ガーリングの持っているヴィルヘイムやフェニゲールも例外ではない。ただ魔力を使った手段ならば防ぐことができるため魔装の権能は数少ない対抗手段だ。

「死んじゃいや!逃げてよ!」

 ツバキは目に涙を浮かべながら必死に叫ぶ。

 イットはその叫びを無視する。

「ねぇ!聞いてるの!?」

「うるさい!黙ってろ!」

「な……!?」

 イットが口を開いたと思ったらいきなり怒鳴られたためツバキは唖然とする。

「俺は、ツバちゃんを守るんだああああああああああああああああああああ!」

 その気迫はすさまじく、踏ん張る足により力が入る。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 しかしだんだんと押し込まれ始める。

「いや、いや……いやあああああああああああああああああ!」

「ダメですわ!」

「落ち着いて!」

 イットを助けるために船から飛び降りようとするツバキをティーベルとリリアが抑え込む。身体強化魔術をまともに扱えないツバキでは船を飛び降りるのは自殺行為でしかない。

(俺は愚か者だ)

 イットは自分のことをそう評価している。

(考えなしに突っ込む性格で今までどれだけの人に迷惑をかけてきたか)

 イットは昔からこの性格だったためよく問題を起こしていた。

(その贖罪ではないけど、俺は大切な人のために振るうだけの刀でいい。これで死んだっていい。自分の罪を背負う。もう逃げない。だから、大切な人を守る力を貸してくれ、幻聖刀!)

 イットの思いに応えるように幻聖刀の刀身が赤く光り輝きだす。

 そしてだんだんと魔力砲を押し込んでいく。

「消えろおおおおおおおおおおおおおお!」

 イットが最後まで刀を振りぬく。

 それは魔力砲を完全に受けきったことを意味する。

「「「「……………」」」」

 その事実に誰もが呆然としていた。



 その好機を逃す手はない。

「いやはや。まさか俺もここまで感情的になるとはな」

 ティーベルとリリアも戦場に出ているため死ぬ可能性なんていくらでもある。だが実際に死にそうな場面に遭遇すると冷静さを保てなくなってしまった。

 ここまでキレたのはいつ以来だろうか。

「とにかく、お前はもう死んでおけ」

 俺は雷の槍を数えきれないほど現出させる。

「『雷槍』」

 無数の『雷槍』がリヴァイアサンに突き刺さる。

 その攻撃はさすがのリヴァイアサンにも効いたようで声も上げずに痙攣している。むしろあの攻撃を直撃してまだ生きていることは称賛に値する。

「ならばもう一回――――」

 俺が再び『雷槍』を打とうとする前にリヴァイアサンに向かって走る人物がいた。

 イットである。

 イットの身体も服もボロボロで立っていることが不思議なくらいだ。それでもイットは走っている。

「リヴァイアサンの首を取るのは、俺だ」

 ただリヴァイアサンにとどめを刺すために。

 それは俺がイットに与えた課題だ。それを満身創痍になった今も果たそうとしている。今のイットはヒノワ王国の者たちにとって英雄として映っていることだろう。

「秘刀『昇龍のぼりりゅう』!」

 イットは刀を下から上に振り上げる。

 刀はリヴァイアサンの首に入るもなかなか切り落とせない。

「う、おおおおおおおおおおおおおおおお!」

 イットは最後の気力を振り絞る。そしてついに、リヴァイアサンの首が宙に舞った。

 リヴァイアサンは首を失うと痙攣する止めてピクリとも動かなくなった。

 魔力反応も完全に消滅している。

「「「「わああああああああああああああああああああああ!」」」」

 船から歓喜の声が沸き上がる。

 俺たちの勝利だ。

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