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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
ヒノワ王国編
117/176

VSリヴァイアサン①

 船に揺られること小一時間。

 そろそろ目的の場所に到達する。

 そして俺は船から海を眺める。

「そんなのんびりしてていいのか?もっと警戒するとかさ」

「警戒はしている。すぐに戦えもする。だが、こうして海を眺めるのも久々だからな」

 船から海を眺める。それをしたのは前世の若いころ以来だ。魔術を極めてからは船ではなく浮遊魔術で移動していたからな。

「それならいいが」

 イットは渋々ながらも納得してくれたようだ。

「お前こそもういいのか?初陣だろ?」

 誰しも初陣は怖い。俺もそうだった。

「ツバキ様と話していたら気が楽になった。不思議なものだな」

 イットはこれから命を懸けた戦いの前だというのに表情は柔らかい。これが愛の力なのだろうか。

「戦いの後には釣りでもしたいものだ。どうだ?」

 イットは海を見ながら言う。

「釣りか。楽しそうだな」

 釣りも久しくやっていない。戦いが終わったらゆっくりするのもいいかもしれないな。何かと忙しくて休養できなかったからな。




「……来た」

 イットと話していると巨大な魔力反応を検知した。これがリヴァイアサンだろう。転生してからだと一番大きい。

 確かにこれを倒すのは一筋縄ではいかないだろうな。

「総員、敵が接近している!これより臨戦態勢に入れ!」

 俺が叫ぶと船の上が騒がしくなる。

 さらに各船は大きく動き陣形を組む。

 そして大きな影が船の下を移動する。

「……これは、でかいな」

 その影は船を大きく凌駕している。10メートルどころか20メートルはあるぞ、これ。

 流石の俺も顔を引きつらせてしまう。

 リヴァイアサンは船の下を通り過ぎると徐々に海面に上がってくる。

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 リヴァイアサンは大きな咆哮とともに海上に飛びあがる。

 こいつは歯ごたえがありそうな相手だ。





「俺は一足先に攻撃を仕掛けます!みなさんは準備を!」

 俺はリヴァイアサンの姿を見て怖気づいている兵たちに向かって叫ぶ。

「ガーリング様!どうやって攻撃をするのですか!敵は海の中なのですぞ!」

 兵隊長らしき人物が困惑気味に叫ぶ。

「決まっています。飛ぶんですよ」

 俺はイットと目で合図して船から飛び降りる。

「えぇ!?」

 兵隊長が船から身を乗り出す。

「ほ、本当に飛んでる……」

 半ば呆然としている兵隊長を尻目に高度を上げる。

 俺は海に潜っている敵を見据える。

「さて、一発ぶちかますか」

 俺は雷の槍を五本現出させる。

 それは普通の雷の槍より数倍の大きさだ。

「痺れろ……『雷槍』」

 五つの雷の槍は海に向かって発射される。

 ズドーンと大きな音が鳴り響き水しぶきが派手に舞う。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 その攻撃をもろに食らいリヴァイアサンは苦しみの咆哮を上げる。水中で藻掻いているのか巨大な波が発生し船を大きく揺らす。

「「「「うわあああああああああああああああああ!」」」」

 船に乗っている奴らが悲鳴を上げる。

 リヴァイアサンは俺を標的とみなしたのか海から妖しく光る眼で俺を見る。

「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 リヴァイアサンは海上に跳ね上がると俺を飲みこむように大きな口を開ける。リヴァイアサンの口はその巨躯に似合うように人間程度何十人も丸呑みできそうだ。

「口を開けたな」

 俺は不敵な笑みを浮かべる。

「『炎鳥』!」

 リヴァイアサンの口めがけて炎の鳥を現出させる。

 リヴァイアサンの体の中で爆発が起きる。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 リヴァイアサンはたまらず水中に逃げる。

「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」

 船から歓声が沸き上がる。リヴァイアサンにまともに攻撃が入ったことに兵たちは歓喜する。




 しかしある人物たちは静まっていた。――――ガーリングの婚約者たちである。

「何ですの、あの『雷槍』?」

「見たことない大きさです」

「外が効かないなら中を攻撃か。よくもまぁそんなことを思いつくものだ」

「てっきり倒れるまで魔術をぶっぱすると思ってたよ」

 ガーリングのことをよく知っている四人でさえ戦慄している。

「ここまで戦闘というのは激しくなるのですね。ガーリング様は大丈夫でしょうか」

 ツバキは船のかつてないほどの揺れに恐怖に蓋をしながら、なんとか我を保っている。

「いや、ガル殿ならば問題なかろうが、これはさすがに」

「あのガル様も本気を出していますね」

 ガーリングの獅子奮迅ぶりにリーゼとフィリアは苦笑いを隠せない。

「相手はそれだけ強大ということですわ」

「気を抜いたら今度こそ死ぬかも」

 ティーベルとリリアは警戒を強める。

「みなさん……」

 そんな中、今まで刀する持ったことがないだろうツバキは自分が何をすべきかわからない。

 フィリアたちのようにリラックスこともできない。ティーベルたちのように警戒を強めることができない。

 本当にこの場に自分がいてもいいのか、今更ながらにツバキは後悔した。

 自分がいることで足を引っ張ってしまうのではないか。自分の意地でフィリアたちを危険にさらしてしまうのではないか。

 もし彼女たちが死んでしまえば、それは自分が殺してしまったことになってしまうのではないのか。

 自分は、とんでもない失態をしてしまったのではないか。

 ツバキは顔を青ざめる。

「う、うちは、そんなつもりは……」

 そして大きな波がツバキたちの乗る船を襲った。

「きゃああああああああああああああ!」

 他を気にするほど余裕をなくしてしまったツバキにその揺れは恐怖以外の何物でもなかった。






 そして震えあがる人物がもう一人。

(これがガーリングの……あいつの力だって言うのか?)

 イット―――ガーリングの弟子だ。

 イットは船の手すりに捕まりながらブルブルと震えている。

 急に始まった命のやり取りに臆してしまったのだろう。腰が引けている。

「俺は、あいつと戦うのか」

 ゴクリと喉を鳴らして冷や汗を流す。

(無理無理無理無理!あんなのに俺の攻撃が通用するわけがない!)

 イットは心の中で叫ぶ。

 なんとか口に出さないのは最後の意地か。

 それでも足がすくんで一歩も動くことができない。

「どうして……どうしてガーリングはあんな化け物に立ち向かえるんだ……」

 イットは完全に戦意を喪失させてしまっている。

(やっぱり俺には無理だったんだ。リヴァイアサンの討伐なんて)

 イットの心は折れかけている。

 その時、

 ドーンと再び大きな音とともに船が大きく揺れる。今回の揺れは一番大きい。

「きゃああああああああああああああ!」

 イットの耳にツバキの悲鳴が届く。他の人も悲鳴を上げている。しかしその耳に届くのはツバキの声だけ。

『イットは何のために強くなる?』

『ツバキのため、かな』

 イットの脳裏にガーリングとの特訓の始まりがよぎる。

(そうだ。俺はツバキを守るためにあの地獄のような特訓をやりとげたんだ。そしてこの戦場にツバキがいる。だったら俺のなすべきことは、敵を倒すこと)

 イットは己を鼓舞するように自分の頬を叩く。

「よし。俺はやれる。ツバキを、大切な人を守るんだ」

 イットはいつでも戦える準備に入る。

 イットの出番はすぐそこまで迫っていた。






「こいつ、タフだな」

 俺は一人空の上から愚痴を零す。

 リヴァイアサンは俺が強者だとわかっているのか、隙を見せることがない。

 これまで並みの魔物数十匹程度余裕で仕留められる魔術を受けているのにピンピンしている。

 リヴァイアサン自身のタフさも要因の一つだがやはりあの鱗が攻撃の威力を大きく削いでいる。

 このままではジリ貧だ。そろそろ舞台を移したい。

「いい加減、隙を見せやがれ!『雷槍』!」

 俺はリヴァイアサンの動きを観察する。一瞬のすきも見逃すな。ここが正念場だ。

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 リヴァイアサンは何度目になるかの攻撃を目論む。

 そこでようやく隙を見せた。

 俺を食いちぎろうとして俺より上に飛びあがってしまったのだ。

 今のリヴァイアサンは腹が丸出し状態だ。

「ぶっとべぇぇぇぇぇ!」

 俺は身体強化魔術を己に施して力の限り上に殴りつける。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 もろに腹パンを受けてリヴァイアサンは苦しみの咆哮をあげる。

 そしてリヴァイアサンは高く上空に上がっている。

 そして俺は海面に向かって急降下、海にフェニゲールを突き刺す。

「全てよ凍れ!氷で世界を埋め尽くせ!」

 フェニゲールは光り輝くと、剣を中心に海面が凍っていく。それは広範囲に広がり船の周りをも軽々と氷漬けにしてしまった。

 見渡す限りの氷の世界。あたり一帯を氷で埋め尽くしてしまった。

「さぁ、ショウタイムの始まりだ」

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