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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
ヒノワ王国編
114/176

対策会議

 場所は城の会議室。

 人は俺たち大陸側の人間は五人。ヒノワ王国はツバキ、ハクト、イットの三人だ。

「マサムネ殿がいないのはわかりますがヨシトモ殿もいないのですね」

 てっきりいるものと思っていた。

「軍ではガーリング殿たちの活躍もあって態度もかなり軟化されている。しかし文官たちはそれをおもしろく思っていない。今ヨシトモは自由に動けないのだ」

「そうですか……」

 となると基本情報を持っているのはこの三人ということになる。ちゃんとした情報を開示してくれるのか不安だ。出し惜しみとかではなく正確さに関しての話だ。

「あ、安心してくれていいぞ。物資などは準備してくれたしリヴァイアサンの情報も預かってきた」

 それなら安心だな。

「そういえばここには魔物討伐に来たんだったな」

「忘れてたね」

 リーゼとリリアは笑い合う。

 本来の目的忘れるってどういうことだよ。

「まず初めに聞きたいのはリヴァイアサンの居場所ですね。どこにいるのかわかりますか?」

「ならばこの地図を見てくれ」

 ハクトはヒノワ王国全体が載っている机に出す。

「リヴァイアサンの最初の目撃場所はここだ。その次がここ。そして最後の目撃情報で我らヒノワ王国が戦ったのがここだ。これを見て何か気付くことはあるか?」

「そうですね……北から南に移動している?」

 地図の指を指されたところを見ると最初がヒノワ王国北端にある北蕾島ほくらいとう。次に指されたとこは北蕾島から少し南にある佐々ささとう。最後の場所はさらに南下した後刻島ごこくとうの近くの海だ。

 そして移動速度と移動ルートを考えると……

「ヨシトモ曰く、今はこのあたりにいると思われる」

 ハクトが指を指したのはヒノワ王国の本島、つまりここだ。

「そんな!」

「本当ですか!?」

 俺の予想と同じだ。

「ち、父はこれを知っていたのですか?」

 ツバキは呆然と呟く。一番驚いているのはツバキのようだ。

 それもそうか。

 安全のために戦闘を避けていたのにその脅威が自分たちの喉元を食いちぎろうとしていたのだ。不審に思っても仕方がない。

「たぶん、知っていて放置していたんじゃないか?」

「う、うそ……」

「ツバキ様!」

 ツバキが力が抜けたように崩れ落ちる。イットがツバキの傍に駆け寄って支える。ハクトの言葉がそれほどまで衝撃だったのか。

「いったい、父は何を考えているのでしょう……」

「それはオレにもわからん……だがこれだけは断言できる。マサムネは絶対にこの国を見捨てたりはしないと」

「つまり、マサムネ殿はマサムネ殿で策があったと?」

「そこまでオレが知るわけないだろう?」

「……そうですね」

 ハクトに聞いた俺が間違っていた。

「……もしかしてマサムネ様は全て見通していたのではないですか?」

 突然リリアはそう言いだした。

「すべて、って何をですか?」

 フィリアはついてこれてないようで頭にはてなが浮かんでる。

「えっとね。リヴァイアサンが本島に来ることも、ツバキが私たちを連れてくることも、私たちがリヴァイアサン討伐を成し遂げることも、だよ」

「そんなことが可能なのか!?」

「そもそもこの国ってわたくしたちを忌避していたのではなくて?」

 ティーベルの言うことはもっともだ。しかしツバキの脱出が国、というかマサムネが裏で手を回していたとしたら話が変わってくる。

「ティーベルの嬢ちゃん、それはちょっと違うぜ」

「ち、違う?」

「あぁ。だって――――」

「ツバキの脱出にマサムネ殿が関与してるんだよ」

「「え!?」」

 ツバキとティーベルは目を見開く。

「オレが言いたかったのに……」

「は、ハクト殿……」

 そんなに拗ねないでくださいよ。

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 ツバキが待ったをかける。

「私の脱出ってお父さんが関わってるんですか!?」

 あ、ツバキは知らなかったんだっけ。

「ツバキは一人で城を抜け出せると思ってるのか?厳重な守りの城を?それこそ脱獄よりも厳しいだろ」

「た、確かに…」

 ツバキは納得してくれたようだ。

「じゃ、じゃあこの状況は覇王様が作り出したってことなのかよ!」

 イットは信じられないとばかりに叫ぶ。

 会議室が沈黙に包まれる。

 俺個人の見解ならば、あり得ると思う。

 話を聞いた限りマサムネは食わせ者だ。これくらいのことはやってのけるだろう。

 ただここまで予想していたとなるともはや予知能力を疑うほどだぞ。

 それにそれほどの人物なら大陸が黙っていない。今のヒノワ王国は力を失っている。友好を結ぶならそれでよし。敵対するなら容赦なく滅ぼすだろう。果たしてここでマサムネは何を考えているのか。

 もし俺たちがしくじればこの国は滅ぶ。外部の人間をここまで信用する理由がわからない。

 マサムネは愚か者なのか、豪胆なのか。

「そんなことより、こっちの戦力はどんな感じになるのですか」

 俺は話をそらすように別の話題を出す。

「こちらの戦力は船が十隻、兵二百だな。今ではそえが限界だ」

 それくらいが妥当だな。むしろ少し多い気もする。

「リヴァイアサンの鱗はどうするつもりなんだ?」

 イットは俺に問いを投げかける。

「リヴァイアサンの鱗は攻撃全般を弾くんだよね?」

「その通り。そのせいであいつにまともな攻撃が与えられんのだ」

 ハクトは苦々しい顔で呟く。

「実際に見たことがないから何とも言えないが……」

 そこで俺はここにいるメンバー全員を順に見渡す。

「まずはティーベル」

「なんですの?」

「魔物の鱗程度、打ち抜いて見せろ」

「もちろん、そのつもりですわ!」

「次はフィリア」

「はい」

「とにかく撹乱させろ。リヴァイアサンに攻撃の的を絞らせるな」

「わかりました!」

「そしてリーゼ」

「うむ」

「鱗ごと切り刻め」

「承知!」

「さらにリリア」

「なにかな?」

「救護隊の隊長を任せる。できるだけ死なせるな」

「任せて!」

 俺の婚約者たちはやる気満々だ。

「最後に、イット」

「お、俺!?」

「お前がリヴァイアサンにとどめを刺せ」

「っ!お、俺が?」

「そう、お前が、だ」

「どうして!お前が刺せばいいだろ!」

「勘違いするな」

「え?」

 俺の言葉にイットは言葉を失う。

「俺たちはあくまで《《手伝い》》をするだけだ。お前たちの手で決着をつけなきゃ意味がない」

「俺たちの手で……」

「そのための力は授けた。あとはお前次第だ」

「……………」

 イットは静かになる。そして誰も言葉を発しない。みな、イットの言葉を待っている。

「……ガーリング、お前は俺にできると思っているのか?」

「思っているから言っているんだ」

「………だったらやってやるよ。俺が、リヴァイアサンの首を落とす」

 イットは覚悟に満ちた声で宣言する。

 これならしっかりやってくれるだろう。

「これで攻撃の憂いはなくなった。次に守りなのだが……策はあるのか?無策では前回の二の舞になる。特に渦を出されたらなすすべはないぞ」

 ハクトの言うことはもっともだ。ならば渦を作り出せる状況は作らなければいい。つまり―――

「リヴァイアサンを海上に引き上げる」

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