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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
ヒノワ王国編
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ヒノワ王国の現状

 そして船に揺られること数日、ようやく船から陸地が見えた。

「あ!島が見えたよ!」

 リリアの叫びに俺、ティーベル、リーゼが身を乗り出す。

「船が……揺れる………うっ……」

「フィリアさん!もう少しです!頑張ってください!」

「う、うん………ミハルさん、ありが、とう……」

「フィリアさんーーー!」

 フィリアは未だ船酔いで死にかけている。ミハルは相変わらずつきっきりで看病している。

 てか知らん間に仲良くなってるし。従者同士だから気が合うのか?何やってるんだか。

「あれが、ヒノワ王国……」

 船のヘリを掴むティーベルの手が強くなる。

 緊張するのも無理はない。

 そこは今、存亡の危機に陥っている。しかも相手は国一つを亡ぼせる脅威。今まで以上の敵なのは間違いない。当然、命を落とす危険性も上がる。さらに自分たちがまければ国が滅ぶのだから。

「ようこそ、ヒノワ王国においでくださいました」

 船の上でツバキは綺麗なお辞儀をした。






 船を港に泊めると早速船を降りる。

「フィリア、大丈夫か?」

「は、はい………ご迷惑をおかけします………」

 フィリアはまともに歩けなさそうなのでおんぶをしていくか。

「それにしても人が多いですわね」

「だが……顔に覇気がないな」

 ティーベルとリーゼは港を見た意見を率直に述べる。

 確かに港には人が多い。それに屋外で生活しているかもように荷物を隣に置いている人がほとんどだ。

 これはさすがに異様だ。

「その理由は後でお教えします。今は移動しましょう」

 ツバキを先頭に移動を開始する。

 ツバキは行き先が分かっているのか足を止める様子がない。

「これはどこに向かってるんだ?」

「ヒノワ王国の王城です」




 移動中、気になることがあった。

「ねえ、なんかみんな私たちのこと見てない?」

 リリアの言う通り、行く先々で俺たちのことを見る人たちがほとんどだ。ただ、その視線が異質なのだ。ヒノワ王国では見ない服装をしているから目立っているなら好奇の目を向けられるはずだ。しかし今は敵意に近しいものだ。

「……この地域はヒノワ王国以前から大陸との関わりを絶ってきました。そのせいで大陸の人達に対してあまりいい感情を持っていないんです」

「なんで!?」

「考える可能性があるとすれば……国が危機に陥っているのは大陸のせい、とかな?」

「……ご明察です」

「どういうことですの?」

 ティーベルから剣呑な雰囲気が醸し出される。まぁ王国を嫌っている国を助けたくはないだろうけど。

「ティーベル様がそうおっしゃる理由は分かります。ですのでお話ししましょう。なぜこのようなことになっているのか」

 そうしてツバキは話をする。どうしてこの地域の人間が大陸の人間を嫌っているのかを。

「話は英雄騎士がいた時代までさかのぼります。昔からこの地域は閉鎖的だったと聞いています。しかしここまで酷かったわけではありません。その時はスメラギ公国の危機には力を貸してもらい、そのかわりに資源を渡すという交流がありました。そんな関係が変わったのは英雄騎士と魔神との交戦後です。英雄騎士の死後、公国は支援をし続けました。魔神は世界の危機、それに対処したのは公国にとってもありがたかったのです。しかし支援を続けても何も報告がなく、そればかりか海に魔物が発生してしまったのです。魔物は当時初めての存在で苦戦を強いられました。そのため大陸に救援を送りました。それでも大陸は何の反応がありませんでした。それどころか送った使者も帰ってこなかった。それを大陸側の裏切りだと判断した公国は完全に大陸との関係を断ち切りました。それが民衆の間にも広まり大陸の信用が地に落ちてしまったのです。それ以来この地域で興される国は大陸を嫌っているんです」

 まさかそんなことになっていたとはな。

「そんなもの言い掛かりですわ!」

 ツバキの話にティーベルは激昂する。

「でも支援を続けていたのに急に見限られた人の気持ちも考えてみてほしいの」

「そ、それは……」

 ツバキの真っ当な意見にティーベルは言いよどむ。

「ちょっといい?」

 そこでリリアが割って入る。

「実はその時の王国、というか大陸の記録は残ってないの」

「え?」

 今度はツバキの方が驚く。

「大陸にも英雄騎士の記録は残ってる。でもその死後百年くらいの記録が全くないの。その時代を暗黒期って呼んでるんだけど、たぶん大陸は助けを送れないくらい大変な状況だったんじゃないかな?」

「その事実を確かめることはできませんが、うちも不確かな状態で決めつけるのは早計だと思っていました。だからこそこうして貴方がたに救援を求めたのです」

 ツバキはしっかりとした考えを持っていることがわかる。

 それにしてもおかしいな。俺の死後百年の記録がない?あの時は俺の組織の序列10位のやつまでは生き残っていたはずだが。あいつらが失敗するとは考えにくい。それに大陸中の国と協力体制もあった。それの事実が記録すら残らず消滅している。

 いったい何があったっていうんだ?

「それに今回の件でヒノワ王国と大陸との関係も改善されるかもしれません」

「もしかしてそれが目的だったりするのか?」

「そのようなことはありません。今のはあくまでうちの希望ですから」

 な、なんて強かな子!?

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