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英雄騎士の最強魔道  作者: バニラ
ヒノワ王国編
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船の旅

 ヒノワ王国には船でいくことになっていた。

 船はツバキが乗ってきたものを使う。あまり大きいとは言えないが小さいとも言えない。

 同乗者は俺たち王国組とツバキ、そしてツバキの使用人数名。

「姫様のお願いを聞いていただき誠にありがとうございます」

 そうお礼を言うのはツバキの侍女というハルミだ。しかしその服装はメイド服ではなく着物という物を着ているらしい。というか着物が女性の服装だとか。王国とはずいぶんと違うな。

「気にしないでください。俺が勝手にやっていることですから」

「そうですわ。それにリヴァイアサンが王国に攻めてきては大問題になってしまいますわ」

「所謂危険の芽を摘むってことだね」

 王国の二人は魔物討伐にかなり積極的だった。

「しかし水中の魔物か……私は気乗りしないな」

 一方でリーゼは消極的だった。

「珍しいな。リーゼが戦闘に乗り気でないなんて」

「変なものでも食べた?」

 リリア、それはさすがにないだろ。

「変なものなんてたねた記憶がないが……どうだっただろうか?」

 そこで首をかしげるんじゃない。

「それよりどうしてなのですか?今の御三方の反応を見る限りリーゼロッテ様は戦闘が好きみたいなのですが」

 ツバキは興味深そうに尋ねる。

「あぁ。私の武器は剣だからな。水中の生き物に対して不向きなのだ」

「あー。確かに剣だと陸上に上がってこないと使い物にならないからな」

 剣に心得のある俺は納得する。

「それを言うなら魔術も不向きだぞ」

「そうなのですか!?」

 ティーベルは驚きの声を上げる。てか知らなかったのかよ。

「まったく使えないわけではないが威力が落ちる。まあ例外もあるけどな」

「というと?」

「火属性は水中で蒸発するし水属性は水中で同化してしまう。土属性は水と混ざり合ってしまう。風属性は威力に関係ない。そして雷属性は水中全てに効果がある。それが例外的に水中で威力、というか使い方が便利になる」

「本当に物知りだね。私は聞いたことないのに」

「それは仕方ないんじゃないか?ランバルト王国は海の問題が少なかったからな。記録がないのも無理はない」

「………ところで、あの子は何やってるのかしら?」

 ティーベルは顔に手を当てる。ティーベルが言っているのはフィリアだった。

「私、船に乗るの初めてです」

 フィリアは船から身を乗り出して海を見ていた。

「フィリア!危ないから乗り出しすぎたらだめよ!」

「わかってます!」

 リリアの忠告にフィリアは元気よく返す。

「フィリアさんは船に乗ったことがないんですね」

 ツバキは目を見開く。

「そうだな。俺の実家は男爵で内陸の領地だったからな。船どころか海を見ることすらなかった」

「だから課外合宿の時、異様に盛り上がってたんだね。あ、フィリアには内緒ね?ガルくんに知られるの嫌がってたから」

「そうなの!?」

 思わぬところでフィリアの秘密が暴露されていた。






 数時間後―――――

「う………き、気持ち悪いです……」

「フィリアさん!気を確かに!」

「…………何やってんだ?」

 フィリアが顔を真っ青にして倒れこんでいる。そのフィリアの介護をするためにハルミが駆け寄っている。

「おそらく船酔いでしょう」

 ツバキがフィリアの症状の原因を言い当てる。

「横になって安静にしていれば落ち着くと思いますよ」

「フィリアが迷惑をかけるな」

「お気になさらず。皆様には国の危機を救っていただかなくてはなりませんから。少しでも快適に過ごしてもらわなければなりません」

「そうか」

 ツバキは強い覚悟を宿した目をする。

「それにしてもお前らは平気なんだな」

 俺はティーベル、リリア、リーゼに向かって言う。

「船は何回か乗ったことがありますから」

「私もね。ティーベルとも観光目的で一緒に乗ったこともあるし」

「私も父に連れられてな。まあそこまで多くはないがな」

 三人とも船に乗ったことがあるから無事のようだ。

「そういうガルさんはどうなのですか?フィリアが乗ったことがないならガルさんも船に乗ったことがないのではなくて?」

「あー……」

 確かにフィリアが乗ったことがないなら俺も乗ったことがないことになるだろうな。実際、転生してから船に乗ったことはない。前世では乗ったことがあるだけ。

「て、適性があったんじゃないかな?アハハハ………」

 笑ってごまかすしかない!

「確かに船に適性がある方は一定数おられますからガーリング様もその一部の方だったのでしょう」

 ツバキが俺のフォローをしてくれる。ナイスだ。

「そういうものか」

 納得したようにリーゼは頷く。

「何その体質、羨ましすぎるんだけど!」

「そういえばリリアは船酔いが酷かったですわね」

「ティーベルは笑うんじゃないわよ!」

 リリアは叫びティーベルは昔を思い出して笑う。そのティーベルに対しリリアは顔を真っ赤にする。

「あれはリリアが五歳の時だったかしら」

「勝手に話し進めてんじゃないわよ!」

「リリア、言葉遣いが汚いですわよ」

「それはあんたのせいでしょ!」

「それでその時リリアが船酔いで倒れてしまったのですわ」

「いやサラッと続けないでくれる!?」

 リリアの空しい叫びが空にこだました。






「うぅ………もう船になんて乗りたくないです………」

 フィリアは船の室内で泣いていた。

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