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第1話 プレゼント

「……ちょっと買いすぎたかな?」


 僕は部屋の中に積まれている本の山を見ながら、そう呟く。

 新しく買った本の数は百や二百じゃきかない。多分五百冊はあると思う……。


「でも仕方ないよね。欲しい本がありすぎるのがいけないんだ」


 この前のダンジョン探索で思わぬ大金を手に入れた僕は、本屋にある欲しい本を手当たり次第に買い求めた。

 最新のから昔の、プレミアのついた珍しい本までお金に糸目をつけず手当たり次第に、だ。


 その結果このような本の山を一瞬にして築き上げてしまった。

 まさか財布より先に家の床が悲鳴を上げるなんて。これ以上増えたら床が抜けちゃいそうだ。


「ウィル様。また本が届きましたがどうしましょうか……?」


 困ったようにメイドのルナが尋ねてくる。


「あー……ひとまず次元魔法で収納しておくよ。一回預かるね」

「かしこまりました」


 僕は本を受け取って次元魔法で収納しておく。

 一度読んだのを売ってもいいけど、せっかく手に入れたレアな本は手元に残しておきたい。いつ読み返したくなるか分からないからね。


 魔術師ギルドに寄贈するという手もあるけど、もう少し読んでからかな。

 ひとまずは次元魔法で収納しておくでいいかな。ここにしまうと取り出す手間があるから嫌だけど、背に腹は代えられない。


「ウィル様、そろそろギルドに行かれる時間ではありませんか?」

「あ、もうそんな時間だったんだ」


 ルナに言われて気がつく。

 まだちょっと早いけど、余裕を持ってそろそろ出たほうが良さそうだね。


 僕は外套を着て、出かける準備をする。

 すると服のポケットの中に物が入っていることに気がつく。


 あ、これを買ったの忘れてた。今のうちに渡しておかないと。


「ねえ。実はルナに渡しておきたいものがあったんだ。はいこれ」

「これは……」


 ルナに渡したのは、可愛らしいデザインの平べったい缶だ。

 開けると中には柑橘系のいい匂いのするクリームが入っている。


「最近帝都で人気のあるハンドクリームなんだ。ほら、ルナはいつも家事をしてくれてるでしょ? だから手が荒れがちかなって思って。いつもお世話になってるお礼がしたかったんだ」


 僕がこうして親元から離れて生活できるのは、全てルナのおかげだ。

 他のメイドさんじゃ変わり者の僕にはついてきてくれないだろうしね。


 だからルナにはとっても感謝している。

 こんなプレゼント一つで恩を返せたなんて思わないけど、何か少しでもお返しできたらいいなと思って買ったんだ。


「気に入ってくれると嬉し……ルナ?」


 ルナは渡したハンドクリームを持ちながらうつむき、黙ってしまった。

 よく見ると体が少し震えている。


 一体どうしたんだろうと、顔を覗き見ようとした瞬間、急にルナは動き出す。


「ウィル様! ありがとうございます!」

「うわっ!?」


 ルナは僕に抱きつくと、物凄い勢いで僕に頬ずりしてくる。

 わずかに見える彼女の尻尾はちぎれんばかりにぶんぶんと振られている。よ、喜んでもらえているってことでいいのかな?


「これは私の家宝に致します!」

「そこまでしなくていいよ!?」


 ルナはおおげさに喜んでくれる。

 少しオーバーな気もするけど、喜んでもらえて良かった。気に入ってもらえなくて微妙なリアクションをされたらどうしようと思っていたからホッとした。


 ルナはしばらくマーキングするように僕に体をこすりつけた後、離れる。

 そして僕があげたハンドクリームを手に塗ると、まるで大切なものを見るように自分の手をうっとりと見つめる。


「……本当にありがとうございますウィル様。今日を記念日にしたいくらい嬉しいです」

「そんな、おおげさだよ。品薄で手に入れるのは大変だったけど、それほど高いものじゃないし」

「金額ではないのです。ウィル様が私のためを思ってこれを選んで下さったこと、それが嬉しいのです」


 そう言うとルナは僕のことをじーっと熱っぽい目で見つめてくる。

 なんだかいつもと違うその視線にドキドキした僕は、思わず目をそらしてしまう。


「あ、えっと……もう時間だから行くね!」

「はい、かしこまりました」


 ルナはそう言うと、僕の側に近づくと、僕の頬にちゅっと優しくキスをしてきた。突然の出来事に僕の頭と体は硬直フリーズする。


「主人にこのようなご無礼を働き……申し訳ございません」

「い、いいいや、いいよ。大丈夫。じゃ、じゃあ行ってくるね!」


 僕はたどたどしくそう返すと、逃げるように家を出る。

 このまま家に居続けていたら恥ずかしくてどうにかなりそうだった。


「行ってらっしゃいませ。お帰りをお待ちしてますね」


 そう優しく見送られながら、僕は家を後にするのだった。

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