第9話 リッチ
「くたばれっ!」
カレンは目にも留まらぬ速さで地面を駆け抜け、黒衣のアンデッド、リッチに迫る。
そして腰に差した剣を抜き、必殺の居合をリッチに浴びせる。
ワイバーンの鱗をも容易く切断する彼女の攻撃。
しかしその一撃はリッチの展開した障壁に容易に受け止められてしまった。
「な……!?」
驚愕するカレン。
そんな彼女の顔を見てリッチは楽しげに嗤う。
「無駄だ。魔法も使えぬ下等生物に私は倒せない」
次の瞬間、リッチの手から闇の波動が放たれカレンの体は弾け飛ぶ。その威力の高さもさることながら、カレンはそのリッチが無詠唱で魔法を使ったことに驚く。
(こいつ……強い!)
カレンは過去にリッチと戦ったことがある。
しかしその時はここまで強くはなかった。防御魔法ごと一刀両断し、簡単に倒すことが出来た。その時の相手とは根本から強さの質が異なる。カレンは警戒する。
「おらあああああっ!」
カレンがそう思っているとはつゆ知らず、マーカスは大きな声を上げながらリッチに突進していた。
そのリッチが只者ではないと分かったカレンはそれを止めようとするが、距離が離れているせいで間に合うことはない。
「巻物発動、武器変更!」
マーカスは巻物を取り出し、それを広げながらそう叫んだ。
すると巻物に書かれていた文字が光り、マーカスの手に持っていた斧が棍棒へと姿を変える。そして役目を終えたその巻物は、その場から消えた。
この巻物と呼ばれるアイテムには、魔法の力が込められている。
開くと魔法が使えないものでも魔法を使うことが出来るのだ。
このアイテムは便利な半面、弱点もある。
それは強力な魔法は込められないという点と、使い切りという点だ。
巻物用の紙は希少品なため、値段が張る。そのため低ランクの冒険者はとてもじゃないが買うことが出来ない。
金等級であるマーカスでさえそれほど巻物を所持してはおらず、使うのは危機的状況のみ。つまりそれが……今なのだ。
「スケルトン系には打撃武器を使うのが常套句。一発で決めてやるぜ!」
マーカスは棍棒を振りかぶり、リッチの頭部めがけてそれを振り下ろす。
するとリッチは、今度は障壁を展開することなくその攻撃を受け入れた。
バキッ! というものすごい音と共に棍棒とリッチの頭部が激突する。
確かな手応えを感じ、マーカスは笑みを浮かべる。しかしその表情はすぐに驚愕へと変わる。
「……その程度か?」
なんとリッチはその一撃を食らってもダメージを一切食らっていなかった。
魔法の力を使わずとも、自身の耐久力だけでマーカスの攻撃を受けきって見せたのだ。
「ば、馬鹿な、打撃はリッチに効くはずなのに……!?」
「私をそこら辺のリッチと比べるな。私は『特別』なのだよ」
そう言ってそのリッチは、被っていたフードを外す。
あらわになる頭部。なんとそこには立派な角が生えていた。
「そ、その角はまさか」
「そう。私は元々『魔族』なのだよ。ただのリッチではない、あえて名乗るなら『デモンズリッチ』とでも言おうか」
そう言いながらリッチは右手から黒い波動を放ち、マーカスを吹き飛ばす。
その一撃をモロに食らったマーカスは吹き飛び、地面に転がる。
「が、あ……!」
苦痛に顔を歪めるマーカス。
なんとか立ち上がるがダメージは大きそうだ。
「クッソ……普通のリッチとは大違いだ」
「ただのリッチはBランクだが、あいつはAランク……いや、下手したらSランクの強さがある」
カレンの予測は正しい。
魔族がリッチ化したことにより、その能力は普通のリッチを大きく上回っており、その強さはSランク相当に上がっていた。
Sランクのモンスターは白金級冒険者が複数名で戦ってようやく勝てる強さ。ここにいる戦力では足りなかった。だが、
「逃げるわけにはいかない。あいつに勝ち必ずウィル殿を助け出す」
「はあ、とんだ依頼に来ちまったな。だがまあ……逃げるわけにゃあいかねえか」
明らかに分の悪い戦い。
しかし二人の冒険者は怯むことなく強敵に挑むのだった。
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