第3話 騒がしい夜
――――夜。
ウィルの弟子を自称する赤髪の少女エマは、かわいらしい寝間着に身を包みルナの部屋にいた。
どうやら彼女の所持していたバッグには次元魔法がかかっており、見た目よりたくさんの荷物が入るようだ。
ウィルの『無限収納箱』と比べれば数段性能は落ちるが、それでもこのバッグを自分で作った彼女の魔法使いとしての力量はかなり高いと言えるだろう。
「それにしても意外でした」
ルナと二人きりになったエマは、唐突にそう切り出した。
言葉の意味が分からず、ルナはこてんと首を横に倒す。
「……何がでしょうか?」
「いや、私てっきり反対されると思ったんですよ。ルナさんは師匠にここを出ていってほしくないんじゃないかなって思ったので」
過ごした時間は短いが、ルナが主人に向ける目に単なる主従以上のものがあるとはエマも分かっていた。
誰の邪魔も入らない森の中に二人きりで暮らす。そんな理想的な環境、手放したくないのではないかと思ったのだ。
「ああ、そのことですか。確かに今の暮らしは幸せです。手放したいはずがありません」
「じゃあどうしてですか?」
「私は幸せですが……ウィル様はどうでしょうか。確かにウィル様は今の暮らしに満足されてます。しかしそれは外の暮らしを知らないだけだからかもしれません。外に出て見聞を広めることで今よりもっと楽しい暮らしを送れる可能性は十分にあります」
外に出て、やっぱり引きこもるのが一番だというのなら、元の暮らしに戻ればいい。ルナはそう考えていた。
「それにウィル様のお力はもっと多くの人に認められるべきだと思います。部屋の中だけで行使するのはもったいなさすぎます」
「あ、それ私も思ってました! 師匠はネットだと有名人ですが、現実世界じゃ知られてませんからね。もったいないですよ!」
ちなみにだがエマはウィルが皇子であることは知らない。
メイドがいることから貴族なのかなとは思っているが、それ以上深いことは聞いてもいなかった。気にならないというわけではないが、向こうから語らないのであれば深入りすることではない、そう思っていた。
「ですから貴女には感謝しています。ウィル様を見つけていただきありがとうございますね」
「えへへ、なんだか照れちゃいますね」
正面から感謝の言葉を言われ、エマは照れくさそうにする。
すると今まで穏やかな表情をしていたルナがキリッと真面目な表情になり冷たく言い放つ。
「ですが必要以上にウィル様に接近することは禁止します。夜にこの部屋から出ることも許しません」
「そ、そんなあ!」
こうして二人の女子の夜は、騒がしく更けていくのだった。
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