サンタまりあ
それは、ある日の出来事だった。
凍てつく雪風が吹きすさぶ。と思う。
暗闇だ。
雪の白と暗闇の黒。
いつか見た景色だ。
山の中、誰もいない場所だ。
無情の場所だ、人が生きることが出来ない。
私が居ない世界だ。
私の半分は、きっと雪と闇でいい。
時を超えて見ることが出来た。
白い入道雲と、何処までも果てしなく続く青い空。
光溢れる砂浜、光煌めく波間、青い海。
暑さが地面から漂うようだ。と思う。
家族と従姉弟で来たことがある。
楽しかった、宝石箱のような思い出。
季節を越えて見ることができた。
桜の散る様が美しかった。
風もなく漂う様は雅であった。
光の中、桃色の花が輝いていた。
桜舞う中で、終わりにしたい。
懐かしく悲しい気持ちになった。
遡ったのか、遥か先の出来事なのか、一瞬で跳ぶことが出来た。
枯葉が落ちる様が、踏み締める音が、とても風情だった。
ストーブの暖かみが、ヤカンから出る蒸気の音が心地良かった。
プールから上がった後の気怠るさのような、ゆっくりと流れて行く時が、終わりを待つ諦観にも似た世界が、それでよかった。
先が見えた気がした。
もうすぐ冬が来るだろう。
桜は見れるだろうか。
新緑や、雨上がりの田園は。
蝉時雨を、もう一度聞くことは出来るだろうか。
私は、私として、今日一日を過ごせただろうか。
と寝る前に思った。