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第7話 金色に輝くモンスターエッグ

「うー、ありがとうございます。ジロ吉さん、それに谷川さん」


 僕たちは銀髪の少女パールにひどく感謝された。谷川と僕がこの世界で初めて行き着いた、あの町で。

 エルフ、リザードマン、サイクロプスなど、ポケッツアドベンチャーに登場する様々な種族が行き交っているあの町である。


 パール自身が召喚した数匹のラプトルに追われ、走力、体力補助の魔法が尽きかけていたその時、谷川の機転――秘技おむすび投げ――が炸裂し、窮地を脱することが出来た。

 谷川のハサミ追いかけ回し事件についても、谷川の先の活躍のこともあり、表向きには両者の間で清算されたようだ。

 まず谷川はハサミを持ってパールちゃんを追いかけ回したことを謝罪し、対するパールちゃんも自身の命を救ってくれたことで、感謝の意を示し、これまでのことは全て水に流すと言っていた。

 ……表面上、パールちゃんはこのように谷川の行いを許すと言っているが、実際のところどうなのかは定かではない。

 何せ谷川は他人の髪の毛を勝手にむしり取って、自由研究にしようとしたのだ。

 普通の心を持った人間なら、いくら命を救われたとはいえ、それとこれとは話が別で、到底許さないと思うのだが……。

 まあ真相は闇の中である。


「あの、これわたしからのお礼です。受け取ってください。モンスターの卵です」


 パールちゃんからは助けてもらったお礼として、商売道具のモンスターの卵を2つばかりもらった。

 それらは燻製くんせい物の卵のように、やけにキンキラキンに輝いていた。

 俗に言うゴールデンエッグと呼ばれるやつだ。


「うっひょおー! これ星5の卵みてえじゃん! ぜってえレアじゃん!」


 最近谷川がハマっているとあるスマホゲームに、これと同じようなアイテムがあるらしい。

 何やら”課金”というのをして、ガチャというのを引けば、ゲットできるのだとか……。

 僕はまだスマホを持ったことがないので、谷川の言うことがよく理解できなかった。

 

「これ、何の卵なの?」


 僕はパールちゃんにそう尋ねる。


「その卵はね、ツチノコっていうレアモンスターの卵なの」


「ツ、ツチノコ!? ツチノコってあのずんぐりむっくりしたヘビみたいな!?」


「ええ、そうよ。よくわかってるじゃない。これ、あなたたちにあげるわ。大事に育ててあげてね」


 まさかこの銀髪のモンスターテイマーの女の子を救ったことで、こんな隠しイベントに遭遇するだなんて……。

 人生何が起こるかわかったもんじゃない。


「っで、実際に僕たちはこの卵、どうやって育ててあげたらいいの? いつ頃に、卵は孵るの?」


「ちゃんと布団か何かで包んであげれば、大丈夫よ。とにかく何かで卵を温めておきなさい」


「そ、そっか。じゃあ電子レンジで温めても大丈夫だよね?」


「で……電子レンジ? 何なんですの、そのキテレツな単語は。

 それが何かはわからないけど、まあ卵をちゃんと温めておけば大丈夫よ。そしたら早くて明日、遅くても明々後日までに卵は孵るわ」


「わ、わかった。……この卵、大事にするね」


 僕はパールちゃんから譲り受けた卵を、そっと手でなでた。


 こうして僕たちが、パールちゃんから金色のモンスターの卵をもらった。

 なぜ僕たちがツチノコの卵をもらえたのかと言うと、きっかけとしては、谷川が命を助けた見返りとして、対価を求めたからだ。

 今日の学校の道徳の授業で、確か無償の愛――対価を求めず、見返りを求めないことの大切さ――について、勉強していたはずだが、当の谷川はすっかりそんなことを忘れているみたいだ。

 別に僕としては、ただこのパールちゃんに”時の扉”を使って、元の世界に戻させてくれたらそれで十分だったのだが……。

 残念なことに、谷川は強く自由研究に成り得るような対価を求めたのである。

 そこでパールちゃんが、谷川を含め、この僕にも金色のモンスターエッグをくれることとなったのだ。

 

「にしてもツチノコの卵かー。……全く予想だにしないところで、目的を達成しちゃったなあ」


 鳩山でツチノコ探しをして、途中で全てをほっぽり投げて、帰ろうとした矢先に現れた白銀のブラックホール。

 結果的に、それがツチノコをゲットするためのカギだったのだ。

 得体の知れない穴に、得体の知れないポケッツアドベンチャーまがいの世界。

 テレビでも見たことのない世界を目の当たりにして、内心とても恐怖していたが、終わりよければ全てよし。

 こうしてツチノコをゲットできたし、それにこのいたいけな銀色の少女とも出会うことができたのだ。

 ……またこの世界に、遊びに行けたらなあ。きっとこの世界には、僕のまだ知らない世界がたくさんあるはずだ。

 どこまでも輝いていて、楽しいことがたくさん待っているはずだ。


「ねえ、パールちゃん。この世界にまた遊びに来てもいい?」


 見ず知らずの世界に放り出され、内心恐怖を覚えていたこの世界に、僕は再び訪れたいと思っていた。

 そして肝心のパールちゃんの返答はというと……。


「いいわよ。いつでもいらっしゃい。

 ……あなたたちの話を聞く限り、どうやらあなたたちの世界とわたしの世界って、完全に別々の次元にあるみたいなのよねえ。

 わたしもあなたたちの住む新世界のことが気になるし……。

 じゃあ近いうちに、またあの山で会いましょう。それまでわたしのペンダント、あなたが預かっててくれない?」


 そう言うと、パールちゃんは青いペンダントを僕に手渡してきた。


「それは共鳴石といって、わたしのスキル”時の扉”に反応するの。

 まあ簡単に言うと、そのペンダントを持っているだけで、わたしがスキル”時の扉”を発動した時に、いつでもわたしとあなたたちの世界を行き来できるようになるってわけ。

 そういうこと。だから絶対になくさないでね。

 ……ということで、準備が整ったわ。あの時の扉をくぐれば、元の世界に帰れるわよ」


 パールちゃんが指差した先を見ると、ちゃんとあの白銀のブラックホールがあった。


「うん、ありがとう。パールちゃん。じゃあまた近いうちに」


 僕は意を決し、ひとまずの別れの言葉を言った。

 パールちゃんもそれに応え、僕と谷川に対して、手を振ってくれた。

 そうして僕たちは白銀のブラックホールをくぐり、ポケッツアドベンチャーまがいの世界から脱出したのであった。

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