歪んだ冤罪
電車冤罪
毎日の流れ、今日もそのはずだった。朝の眠たい体を起こして歯磨きをして顔を洗う、朝ごはんを食べる時間を惜しんで早めに家を出る、会社に行くための満員電車に乗り暑苦しさに嫌気を感じながら向かう、電車の中では痴漢と思われないよう必ず両手をかばんの持ち手に添え女性に対しては必ず背を向ける。長い20分を終えた後は徒歩5分ほどの見慣れたビルへ向かいいつもの席へ座り机の上に積み上がった仕事をこなして家に帰る。もはや愚痴すらつくことの無くなった毎日のはずだった。
その日は違った、誰かのせいにしたいがどれを理由にしても自分が悪かったようにしか思えない。寝坊して電車を一つずらしたこと?かばんを手下げから肩掛けにしたこと?いつもよりひどい満員を言い訳にしたこと?そもそも昨日仕事を大量において帰った課長が悪いのでは?あれさえなければもっと早く寝れていたのにと今更ながら後悔が襲ってくる、そんな一日の始まりだった。
朝の目覚めは最悪だった、時計を見てすぐさま飛び起きる、起きる時間なんてものじゃない、もう出勤していなければいけない時間だ。
朝のルーティンも忘れスーツに着替え外に出る。寝起きすぐに走り出したことによる動悸が止まらないがそれどころじゃない、最寄りの駅まで全力ダッシュし扉がしまろうかという時に駆け込む、呼吸が落ち着かず息が荒いがどうしようもない、いつもより多い人混みの中だが電車に乗れたことで多少の余裕が生まれ会社に遅刻する旨を伝えようとポケットを探る。無いことに気づく。
会社で怒られることを覚悟しつつ呼吸を整えると次の停車駅になりものすごい人数が押し寄せてくる。スーツに学生服におじいさんのお集まり、経験したことないレベルで押し込まれる、手を動かす隙きもない地獄だった。そして反対側の出入り口まで押し込まれ最悪の事態に陥る、目の舞に女子高生がいた、この満員電車の中でそれは不味い、幸いにも女性は出入り口側を向いているため後ろに男性が居るくらいじゃなんとも思わないだろう、しかし距離が危ない、この限り無く詰め込まれたスペースで開けられる隙間なんて拳一個分にも満たなかった。
呼吸もまだ整えきれてない現状でもし触れるようなことがあればアウトである、後ろを向きたいが方向転換するための余裕はなくただ目の前にいる人物に接触しないよう心を無にしていつ電車が揺れても対処できるように少し荷重を後ろにかける、後ろの人にはキレられそうだが痴漢で人生が終わるよりはマシである。そう考え万全の体制で構えると落ち着いてきた。
目の前にいる女子高生はよく見るとかなりやんちゃな格好をしている、髪は金髪に染めておりポニーテールにまとめられているためか根本は元の黒色が若干見えているし体は日焼けしていて遊んでいる感じが伝わってくる。服装は夏用の学生服と言った感じだがスカートは馬鹿みたいに短い、後ろ姿でしか判断できないが身長は自分とそう変わらないぐらいで圧迫感がある、正直な所向こうを向いててくれて助かった。そう思っていたのもつかの間、急に電車がブレーキを掛けたかのように揺れる。
対策は万全にしていたつもりだった、それでも足りない点があったとすれば両手がふさがっていなかったところだろうか。
急な揺れは乗客全体に渡り波のような勢いで押されていった。体の重心をいくら後ろの人にかけてたとは言えそちら側から押されてしまえば意味はない、むしろ逆効果だったと言えよう。案の定耐えきれずに押され、体を支えようと動かせない手を無理やり上げようとした結果事故が起こった。
完全に言い訳が出来なかった、中途半端に飛出た手はピッタリと彼女のお尻にフィットし容赦なく押し付けていた、それはもうわしづかむような勢いで、思考が急加速し手を離さないと人生が終わると警告しそれに従おうともがく、結果で言えばさらに逆効果だった、満員電車の人混みが波のように体制を少しずつ崩したのだ。すぐに後ろ下がれるわけはなく手元は無駄なあがきとさらに押し付けるだけの形になっていた。
「んっ!……」
かすかに漏れる声、可愛い声だったがこれからの社会生活が終わりを向ける合図だった。瞬間走馬灯のように今までの思い出がフラッシュバックする。昆虫採集で楽しんだ小学生、好きな女の子に振られた中学生、都会に出ると友達に大見得貼った高校生。どれもありふれた日常で山も谷もなく平凡なはずだった、どうしてこんな事に……
ようやく体制を持ち直し間隔を開けられた。が現実はそうも行かない、目の前の女の子の肩が震えておられる、それはもうわなわなと、熱量が完全に火山のそれだった。あぁ終わったなぁ、彼女が勢いよくこちらを振り向く、鋭い目つきで襟元を捕まれる。きれいな顔立ちだなぁ、あははは……
「このっ!?」
叫ばれそうな様子をボケーッと眺めながら既にあの世に思いを巡らせていた、あぁお父ちゃん……こんな不出来な息子でごめん、来世は結婚相手紹介するから……
そんな時また電車が揺れる、波が起き、さっきと違い抵抗のない自分の体は勢いよく前へ倒れ込み彼女の体へ接触する、もはや虚無の感情だったが奇跡が起きた、両手で掴まれた襟元と揺れの勢いにより彼女の顔と自分の顔が急接近する、無抵抗な自分の体と両手の塞がれた彼女に対し遮るものは何もなく勢いよく口元へキスをした。
「んむっ!」
吐きかけていた言葉はかき消され抵抗しようにも波のせいですぐにはどけられない、そんな僅かの時間に悪魔がささやきかけてきた。このまま降りるまで続ければ叫ばれること無くすむのではないかと、普通に考えれば後から通報されておしまいだがもはやそんなことは遅いか早いかの違いしかなかった。意を決したからには手元を彼女の体に回しガッチリホールドする。抵抗しようともがく彼女を押さえつける成人男性、言い逃れようのない現行犯だ。
「ん〜〜〜〜〜!!んっんっ!」
何を言っているのかはわからないが、どう考えても良いことではないのはわかる、今だけの口封じだ、周りから通報されても終わるし、この子から口を離されても終わる、どう考えてもアウトだが本人は命がけのバカをしている。降りる駅まで後二駅、冷静に考えれば無理なのだ。
もがく彼女だが手は体と体の間に挟まっており動かすことは出来ていない、大きい胸の間にはまれることでなおさらその可動域を狭めていた。
一分も時間が立たないうちに彼女が声をだすことを諦め顔を精一杯離そうと首を無理な角度に曲げようとしているがそんなことはさせまいと必死に追いすがる。これはもはや顔でバトルしてるに等しい。
二分もしたら疲れ始めたのか抵抗が少し弱くなってくる、よしよーし、このままで行けば降りるまではどうにか拘束できそうだと考えていると余裕を持ち始めた自分の中の悪魔が囁いてきた。お持ち帰りをしてしまえと、そんなことはいけないとは思いつつ口は離さない。だがしかし一度考え始めた不埒な思考は繊細なイメージと脳内物質をドバドバ出し始める密着し完全ホールドしたその細く柔らかい体は頭をおかしくさせるには十分で、口元は現在粘膜までとは行かずとも触れ合っていた。頭の枷を外すにいささかオーバーなほど犯罪的だった。
「んんっ、はっ、んぐっ」
急なことに彼女も戸惑いを見せる、それもそのはず抵抗も少なくなっていた口元に強引に舌をねじ込む、体はビクッと強張り予想していなかっただろう出来事に目を見開いているがやめられない、
抵抗が強まるがその分こちらもしっかりホールドする。
もがく体が思っていたよりも熱く、夏のはずなのに離したくないと思える、恋人なんていたことはないがハグしながらのキスがここまで心地の良いものだとは思いもしなかった。とは言え一方的なものでいけないことに変わりはなかった。
「んちゅ……はっ…んっ……」
だんだん口元の抵抗がなくなっていき舌を絡めてくれるようになってくると体の方にも変化が現れてくる、目元は少し潤い顔が少し赤い、体は抵抗を続けているが明らかに弱くなっており体の熱量は増すばかりだった。完全怯えているそれを見てしまい一瞬素に戻り口を離してしまう。
「……」
体は少し震えているが襟元の手は離さず泣きかけの目元が訴えかけてくる、どうしてこんな事をしたのかと。言い訳なんて出来るはずもなかった。口で答えるわけにも行かずただ目をそらさずに合わせ続ける、そうしているとまたイケない気持ちが沸き上がってくる、今度は口封じでもなんでも無くただ口元を貪る。彼女は抵抗することもなく受け入れていた。
キスをするたびに息が漏れ唾液が混ざり彼女の顔は紅潮していき、接触している体の熱は火を出しそうなほどだった。かわいい、この子を離したくないというどす黒い考えがどんどん頭の中を占領していき体のホールドは強くなっていく。
理性なんて飛んでいて一駅目の扉が空いたことにすら気づかずそのまま元々の目的地だった二駅目に向かっていた。
もはや彼女の体は抵抗を見せておらず完全に体を預けてきていた、互いに倒れそうなほどの熱さを抱えながら舌を絡め合う、最初はただこちらから舌を入れていただけの動作がだんだん彼女の舌こちらの口腔を責めてくるようになり舌を絡めるだけでなく口の中のほっぺや歯、舌の裏側など様々なところをなめられる。どこにでも届きそうなほど長い舌が最初の立場を逆転させて責める側から責められる側にさせられていた。
この時間を手放したくないと思いながらも電車のアナウンスが目的地へ近いことを教えてくれる。下り口は今目の前にいる彼女の後ろであり、見られたら言い訳のしようがなくなる。逃げる準備をするべく居心地の良かった口元を離れようとすると襟を思いっきり引っ張られた。
なんの間違いかと思ったが引っ張られている、まだ続けろということらしい。これは現行犯待ったなしかも知れない、彼女の策略かわからないがこれを拒否するすべは持っていなかった。
目的の駅へ停車する、長い時間キスをしていたその顔はとろけており口元はだらしなく少し濡れている。体は力が抜けたようにこちらへ預けおりもはや歩こうとしていなかった。空いたドアから出るためにも彼女を支えるような形で歩く、その間も彼女はどこかぼーっとしていた。
「えーっと、大丈夫?動ける?」
「……」
反応はないがこれ以上こうしているわけにも行かない、彼女の手元へ自販機で買った水を置いておき早々に職場へと向かう
「ごめんね仕事があるから」
「……」
すごい惜しい事をした気持ちだった。
中山真昼の話
いつもどおりの朝のはずだった、学校に向かうための電車に乗り少し満員電車に揺られながら偶々を装った痴漢なんか首元引っ張って警察に突き出す、そういった日が多く遅れることも多くなり必然的に私は学校へ向かう時間が遅くなっていた、最初は真面目にしていてもこれが何度も続けば周りは私がなにかしてるんじゃなかろうかと怪しむし、噂も立つ、気がつけば周りに友達は少なくなっていたし変な事を持ちかけてくる同級生も増えてきていた。
そんな奴らになめられないように黒くて長かった髪を金色に染め、だらしなく見えないようポニーテールにまとめてみて背筋も伸ばすことで身長167センチと女性にしては高めの武器を使い誰も近寄らせない圧を身に着けた。夏場の内に少し日焼けしたことによりなおさらいかつい印象を与え、こちらから喋りかけない限りは誰も口を出してこなくなったし、痴漢もそれっきり収まったはずだった。
それなのに今日は信じたくない出来事が起きた。きっかけはきっとあの急ブレーキだった、思い切り後ろから押されたのだ、それもお尻を。
一瞬不慮の事故みたいなものだろうと思い我慢したが離れることはなく、思いっきり手を動かし始めた、何をしたいのかはわからないが最悪なことをされたと思い頭が完全にオーバーヒートしていた。数秒してから手は離されたが気持ちは収まらない、事実確認する相手なんて一人しかいない。この満員電車の中動けるはずもなく真後ろに居るやつが犯人に違いないと決めてかかり振り向きざまに首元を掴み叫んでやろうと口を開くがその時また揺れが起きる。
「んっ!!……」
最悪のタイミングでこちらへ押される男、こちらから引っ張ったこともありもはやその勢いは止めようがなかった、思い切りキスをされた、初めてを痴漢野郎に奪われた腹立たしさと押し返しても重量の違いからどけられない男にムカついた。
そんな事をしている内に腰に手を回され固定される、完全に獲物をとらえるような手際だった。こんな手慣れている男に私は襲われたのかと少し怖くなり抵抗する、が、口をつける以上のことはしてこなかった。なぜかキスしているというのに男の目は死んでおり抵抗する力が弱まる。
今までの経験からもっと他のところを触られたり思い切り服の中に手を入れてこようとするものなのだと思っていた。事実から言えば私は今手が使えず何をされても抵抗ができないのだ、そんな状態でこれだけで終わるなら我慢して駅員連れて行こうと思っていると舌をねじ込まれる。
「ん〜〜〜〜〜!!んっんっ!」
気を抜いていたのも悪いが急なことに頭に電気が走ったような衝撃を受ける。体がどうしてしまったのか思うように動かず抵抗しようにもうまく行かない。結局口の中への侵入を完全に許してしまい情けなく怯えてしまった、今までの私の弱さは変えられていなかったのだと感じ、女性としての純粋な恐怖が襲ってくる、体が震え心が折れる音が聞こえ、なすすべもなく蹂躙されていた。
それを感じ取ったのか彼は急にビクッとしたかと思うと口を離した。目が合う。私はきっとみっともないだろう顔を晒していたが、彼はそんな私の顔色をうかがうように見つめていた。
ふざけるなと言いたかった。自分から襲ってきたくせに何を考えているのかと、そんな顔をするなら最初からするなと言いたかった。ここで気づく、最初から事故だったのではないかと、一度目のお尻を触ったときだって揺れが来ていたし、二回目にキスをされた時も揺れが原因だった。
本当にどうしようもなかった。
事故にしたって私の口を奪いあまつさえ中まで侵食しておいて何だその顔は、どうしたら良いかわからないじゃん。
「んちゅ……はっ…んっ……」
今度は確実に自らの意思で私の口を奪ってきた、抵抗はしなかった。これで完全に彼は悪者で、わたしのものだ。
ごちゃごちゃの思考の中ではっきりと一つだけわかることがあった。彼は私から逃れられない、どれだけ私を蹂躙しようと、どれだけ私より力が強かろうと、自ら女の子に手を出したのだ。やけどでは済まされない。逃さない、彼が善人であっても悪人であってもその人生は今私に握られている。
その実感が私に熱をくれる、火照った体は血液を加速させ汗や唾液が大量に分泌される、この密着状態での分泌液は確実に彼の体、衣類、粘膜全てに染み込み私との関係性を証明してくれる。
彼の口の中すべてを蹂躙する、先程までの彼の下手くそで可愛らしいキスのお返しと、彼の舌では私に届かなかった所もすべてを犯す。気持ちが良かった、生まれてはじめてだった、堕落してはいない、堕落させたのだ、その喜びが私をさらに快感をもたらす、あぁ、私はは今彼のすべてを支配している。
彼がそわそわし始めた、何を今更と思ったが降りなければいけない駅なのだろう、可愛らしい、何を逃げようとしてるんだ、許さない、続けろ。
かくいう私も体に力が入らなかった。これじゃはしたなくみえるだろう、本当にもう少し考えてほしい。体を離すんじゃないぞ。
あ、私を抱えて駅を降りた、降りる駅も聞かずに勝手にと思いながらも、体は動かずぼーっとしていた。私の手元に水をおいて立ち去るのを確認してやっぱりあれは事故だったんだろうなと確信するとともに変な笑いがこみ上げてくる。
彼は私とのキスに夢中で気づかなかったのだろうか。
私はそっと胸元から一枚の名刺を取り出す、そこには松井玲生という名前と職場が書き込まれていた。
松井玲生のお話
あばばばばばばぷぺぴぇ
頭がおかしいとかじゃなくてもう壊れてるむりむり仕事なんか手につかない、なんだこれ、なんだこれ、頭の中は完全に今朝の出来事でいっぱいだった、最初は事故でもあれだけやっていれば十分な犯罪である、短かった社会人生活、ひいてはこれまでの人生にお別れを言ってこれから立派なムショぐらし、お先真っ暗どころか現在位置が不明まである、人生って夏休みの宿題から逃げた時点で終わりのない終わりが目の前に広がってる感じがするあばば、終わらせることは先に終わらせるべきってばっちゃが言ってた。
多分だけど今回の終わりってすべてが終わるってことだよね気分ジェットコースター、頭の中の思考回路すべてがこれからどうするべきかについて無駄な考えを巡らせてはやはり国外逃亡するしか無いのではと訴えてくる。
意味ない気がする、どうしよう。
電車の中にいた時もろくな答えを出してくれなかった天使と悪魔が舞い降りてこう言ってくる。
『あなたに善良な心があるのなら死あるのみです……』
『いっそのことやりたいことやって死んじゃおうぜ』
やべぇ役に立たねぇ、どちらとも生きる方向に向いていない、なぜ。
『当たり前だろう、お前が犯罪者になっちまえば職場には多大な損害を与えた上に家族なんてお前に恨みを持つだろうぜ。それならいっそのこと楽になって全てから逃げちまえばお前一人の苦しみで済む、どちらにしろ親不孝モンに変わりはねぇけどな、謝ることはないぜ、あの女の子には謝りに行ったところで棒に振るようなものだからな、どちらを取るかだぜ』
悪魔くんが辛辣なことを言ってくるが真実だった、自分がしでかした出来事はすべての人に対する裏切りだった、大切に育ててくれた親に対して不名誉を着せ雇ってもらった職場には損失という裏切りをしている。
考えるまでもなく屋上へ行こう、そう考えていた時、上司から声をかけられた。
「松井くん、大丈夫?顔色悪いよ?」
「大丈夫ですよ、少し今日寝坊しただけなんで」
「士気が下がるから帰ってほしいなって」
「え、わかりました……本当にですか?」
「そりゃ死人も真っ青なくらいだよ、文字まともに打ててないし、病院相談してあげよっか」
思っていたより顔色が悪いらしい、それに直球でそこまで言われると結構傷つくのだが本人はお構いなしとばかりにニコニコしながら告げてくる。だが実際これは丁度いいタイミングであり考える時間をもらえたと言っても良い、前向きではないがそれでもありがたい。
帰ってからゆっくりしようと思い荷物をまとめ外へ出る、駅まで上司に見送られながら重い足取りでいると駅の待合席にあの子が座って待っていた。
夢であってほしかった。
「意外と早いんですね、おにいさん」
倒れそうだった
脅される話
「待ってましたよ、今日のお仕事は早退ですか?たぶん通常営業なら今日の夕方ぐらいまでいたと思うんですけど、それもそうですよねそのおにいさんの顔なら帰っちゃいますよね、朝あんな事をしたんですもん、予想があたっててよかったです。お昼ごはんはどこで済ませますか?積もる話やこれからの話し色々あるでしょうし、私も話したいことがたくさんあるんですよ?お兄さんの好みとかタイプの女性とか、決して合わせようってわけじゃないですよ?参考までにと思って、私もこういう経験は初めてでどこから話せばいいかわからなくて、お兄さんも困りますよね、ああごめんなさい気持ちを考えてあげられなくて体調悪いんですもんねすぐ近くにあるネカフェとか行きますか?いきなり気が早かったですねすいません、それじゃぁ手軽にそこのレストランはどうですか、私はこの駅で降りたことがないので味はわかりませんがお兄さんとなら美味しく食べられそうな気がします、私好きなんですよパフェとかハンバーグとか、食べるのも好きですけど作るのも好きです、腕によりをかけて作りますから期待しててくださいね、あっそれはそうと」
「さっきの女性って誰ですか?」
ゾッとするような勢いで受け止められないほどの激情をぶつけられた、恐ろしい事にまだ二回目の対面でしかも朝あんな事をしてしまった相手だ。正直な所怖さよりも戸惑いのほうが大きかった。色々と突っ込みどころがたくさんあった、それに。
「えっと、ごめん今日の出来事は良いの?」
直球で聞いてしまった、だがどうしても一番がそこに気になってしまった。むしろそれ次第によっては首をつるか釣らないかが変わってくるのである、しかし彼女は話に乗ってはくれなかった。
「おにいさん話聞いてましたかさっきの女性は誰かと聞いているんです、恋人ですか?」
怖いぐらい向こうから詰めてくる、もはやこちらを意に介していない、可愛いけど怖い、お願いだから朝のあの子に戻って欲しい。それを察したのか向こうは頬を膨らませてきた。
「答えてくれないならこちらにも考えがあります」
「待て待て待て、あの人は俺の上司で体調が悪そうだからって見送りしてくれただけだから」
「ただの下っ端会社員相手にそこまでしますか?」
「するよするする、とりあえずお店入ろうか」
「そうですね、落ち着いた話もできないですし」
やったことがやったこととは言え完全におもちゃにされている、ネタに脅されるってこと?いやもうこの際どうしようもない、諦めて流されよう。
そう思い店にはいりテーブル席に座ると何故か隣りに座ってきた、テーブル席の意味って。
「お兄さんは何にします?」
「俺は唐揚げ定食かな」
「口の中が油っぽくなるので辞めてください」
「えっ何なら良いかな」
「そうですね、控えめにうどんとかどうですか?」
「そっか、ならそうする」
「私もそれで」
「ドリンクバーは?」
「いらないです、おにいさんもだめですよ」
なぜだが食事をものすごい制限される、よくわからないことだらけで頭がはてなマーク、考えるの辞めたいけど怖くて手が震えてる。
話はこのまま進める他ないようだった。
「ところで話って?」
「おにいさんが私を無理やり襲った話ですか?」
「……」
「お兄さんが黙らないでくださいよ、私のほうが恥ずかしいんですからね」
「すいませんでした」
「許しませんよ、分かってますよね」
やっぱりそうだった、あたり前のことだが無慈悲で残酷で待ち受けている結果だった。これから僕は一体何を要求されるのだろうか、自首?彼女が目の前に来ることはなかっただろう、そうなったらお金?もしくは他のなにか?わからないことだらけだが逆らえないことは確かだった。
「警察に言わない条件、わかりますか?」
「お金……ですか?」
「それだけじゃないです」
「体……?」
「全てです」
「つまり責任とってくださいってことです、わかりましたか?」
圧巻の答えが帰ってきた、この子は今日の朝のことを踏まえて言っている、つまり今日の朝の行為がアプローチとして受け取ってもらえたってこと?それは願ったり叶ったりですごく嬉しい。
「勘違いしないように言いますがおにいさんに主導権はないですからね、もちろん仕事、食事、睡眠、日常生活、金銭、友好関係、女性関係に夜の事についても私が決めます、趣味や家族に関することも私を通してください、全てです」
言葉が出ない、どうしてかわからないがこの子は既に僕のことを支配している、なにがどうして、わからないことは更にわからなくなるばかりだ。理由だけでも聞きたいと思い聞こうとするが。
「まさかなんでなんて変なこと聞くわけじゃないですよね、そんな事すればすぐ警察に行きますよ」
「私の体には今あなたの汗や体液がたっぷり服や体に染み付いているんです、それもちょっとじゃないです、あの満員電車の中にいる間、ずーっとです、お互い熱かったですよね、たくさん密着して私のことあんなに抱きしめて、声も出せないよう私の初めてを奪って舌を絡めて吸い付いてきて、あんな事しといて私の体にあなたの残り香がしないとでも思います?私の口の中も体の形もあなたに良いようにあの時間ずっとされてたんです。気づいてましたか?最初の抵抗の時私あなたの首筋に爪立ててたんですよ、それも爪に皮膚が残るくらいにです。わかりますか、証拠だから消せないんですよ、洗うことも服を着替えることも出来ないんです、わかりますよね」
それは苦痛を訴えたかったのか、それとも独占欲のようななにかから来るのかはわからなかったが事実だけを言えば、もうこの子には逆らえない、その事実だけはどうあってもひっくり返らないらしい。
背筋がゾッとして謎の緊張感と逆らってはいけないという本能が体に覚えさせられる。もはや朝の姿はどこにもない。
「ところでうどんがきたよ、食べようか」
「無視ですかそれなら私にも考えがありますよ」
「大丈夫、無視はしてないから安心して」
「大丈夫じゃないですよ、ほら目を閉じてお口を開けて、いう事聞かなかったら熱いのそのままぶち込みますから」
自分のことは棚に上げて怖いことを言い始める、従うしか無いため怖い気持ちを抑え目を瞑る、耳に聞こえる音が情報源になり緊張するが可愛らしくふーふーと冷ます音が聞こえ、ますます何をしたいのかがわからなくなってしまった。冷ましたように聞こえる音はわざとで熱いものを入れる?箸を喉に入れられる??こわい、何があるかわからないのが怖い、目で確認することも出来ずに待ち受ける恐怖が来た。
きっとこの光景を傍から見たらシュールで面白いのだろうか、少し考えて恥ずかしくなり口を閉じた瞬間柔らかいものを突っ込まれた。
「〜〜!!??」
混乱する、何が入ってきたのかわからないまま口の中に生暖かいものが注ぎ込まれていく、味はよくわからず少し固形のようにも感じドロっとした感触で嫌な想像がつく、しかし飲み込むのが嫌でそのままにしているとねじ込まれている物が舌だと気づき飲み込むまで離してくれない事を理解する。
「んっ…んぐっ……ん…ぷはっ……」
「おにいさんよく飲み込みましたね、偉い偉い、でも口を閉じた罰ですからね、無理やり入れちゃいました」
「……なにを飲ませたの」
「何ってうどんですよ、ほら、見てくださいこの通り、私がふーふーして咀嚼して食べやすくしたものをおにいさんに上げただけですよ」
「おにいさんが何を飲まされているかわからずに怯えている姿、とっても良かったですよ、気持ち、わかりましたか?怖かったですよね、吐き出したかったですよね、初めての感触は怖かったですよね、なんの説明も受けず辛くて辛くてどうしようもなかったですよね、その気持を忘れないでください、これからずっとそういった幸せをあなたにあげますから、脅してるわけじゃないですよ、幸せになってほしいだけです」
言動がメチャクチャだった、この子は自分がされたことを相手にも不快な形でさせるために行動している、もちろん僕に拒否権なんて無い、ただそのにこやかに見つめてくる姿はとても学生とは思えない雰囲気を醸し出していた。完全にこの子のかごに今捉えられている。逃げようとすることも許されずこちらが抵抗をやめてもきっと同じことをし続けるだろう、最悪の気分だった。こんなのどの道詰んでる。
「それはそうとおにいさん、早く食べないと冷めちゃいますよ、さっきの食べ方でって言われても断りますよ、ただのご褒美になっちゃいますから、それとも別のいじめられ方、したいですか?」
「いいよ、大丈夫、そんな事してたら君のも冷めちゃうし」
「気遣いができるなんてとっても良い方なんですね、今朝手元においてくれた水も口の中をキレイにさせるためだったんですよね、きっと不快な思いしたんだろうって私に気を使って自分がダメージを負わない最善を尽くした結果なんですよね、好きですよそういう所、でもおにいさん、これだけは言っておきますね」
「そんなやり方じゃ、絶対に女の子の中はきれいになりませんよ」
「口の中をあれだけ執拗に責められて、経験のないのを良いことに抵抗の出来ない体を押さえつけて嫌がってもやめてくれず…一度止めたと思ったらまた挿れられて、口の中の味が変わっていくのがわかりました、あの時私の口の中は汚されたんですよ、いくらきれいにしても汚い、どれだけゆすいでも落ちないに決まってます、それだけのことだったんですよ」
「……ごめん」
「ごめんってなんですか、私はあなたに襲われたんですよ、そういう素直なところは好きですがやったことは許されないことなんですよ」
「とりあえず食べましょう、伸びちゃいますよ」
あれだけのことをしたのだ、これからも言われ続けるのだろう、受け止めるしかない、いやいやでは無くしっかりと気持ちに答えるべく。後悔したところでこの子は収まらない、既に地獄へ腰まで浸かっている状態だ、いくら沈もうが変わらない結果だ。
「これからどうするの?」
「私ですか?何言ってるんですか、これからあなたの家に行くんですよ」
「えっどうして」
「断るんですか?」
「そうじゃないけどわざわざ嫌いな男の家に行くの?」
「何言ってるんですか、好きですよ、あなたのこと」
「???」
「好きな人には意地悪したくもなるし何をしてるかとかも気になるじゃないですか」
「そうだけどさ?なんか違うじゃん?」
「うだうだ言わないでください、叫びますよ」
「ごめん」
その時はまた口をふさいでも良いのかとは聞かないでおいた。
二人の帰り道
このビクビクしている彼を見ているととても心が落ち着く、とても本人には言えないし言ってしまえば鼓動が早くなる気さえする。しかしあの目をつむったまま口を開ける顔はとても愛らしかった。出来ることならなにか口の中に加えさせて閉じれないようにさせておきたい、きっとだらしないそのさまは本人に限りない屈辱を与えられるのだろう、はやく道具を探さないと、駅にある百均では品揃えが悪く思ったように揃えられなかった。だが彼をいたぶるには最低限の品は揃えられている、後は楽しむだけだった。
「おにいさん、早く駅に乗って帰りましょう、私お兄さんの部屋がどんな感じなのかすごい興味あるんですよね」
「そんな面白いものじゃないよ」
この人は口数は少ないが顔が面白いくらい正直で隠すという言葉を知らない、きっと家に入れたら変なことをされると思っていても良心が逃げることを許さないんだろう、私だって逃さない。早く可愛い姿を見たい、みっともない姿を晒してほしい。
帰るのが怖くて電車に乗るのを躊躇しているのだろうか、家に帰るまで安全だと思っている彼の顔を歪ませたい、もっと見せてほしい、心が汚されていく様を。
「またぎゅってしてくれますか?満員電車って怖いんですよね」
「帰りも都合よく混んでいるなんて限らないぞ」
「あなたって本当に女心がわかってないですよね、分かっていたら私を襲わなかったと思いますけど、電車が来てみればわかりますよ」
半信半疑で見ているその顔もいいがやっぱりあの真っ青の顔がいい、そんな事を考えていたら電車がこちらに向かってくる、いつだってこの電車は人がぎゅうぎゅう詰めで、快速の為に乗客の快適性をロスしている。今までその乗る時間の短さで痴漢による被害も最小限に抑えられていたというのにこの結果、だが帰って彼との出会いをくれたのには感謝出来る。私だけの彼が手に入ったのだから。
「来ちゃいましたね、早く乗りますよ」
満員の電車に乗り彼を逃さないよう壁際に挟み込むような形で抑える、朝の形とは真逆だった。
「やり返し?」
「そうですね、そんな感じです、焦らなくてもいいですよ」
「〜〜!!!??#$&%??」
「どうかしましたか?」
そんな風にとぼけてみるが彼は言葉が出ないようだった、やはり男性の急所に洗濯ばさみは相当に答えるのだろう、彼の苦悶に満ちた表情は素晴らしかった。抑えきれず彼に抱きついてしまう、もうこれは私のものだ。いくら好きにして壊れても私を責めるものはいない。思わず締め付ける勢いが強くなる。彼との身長差はそれほどなく今の縮み上がった彼と私では私が上から見下せるぐらいだった。朝とは違い腕が自由になっているのも良い、細い彼の体を覆って逃さないように出来る。怯えている彼は本当に可愛らしかった、いじめたくなるくらいに。
「んっ……あっ……んっ…ん……んぐっ!?」
怯えていた彼を安心させようと思い切りキスをする、最初から舌を挿れているがそんな事気にするような人じゃないだろう、彼の口を穢している間に少しづつ安心したのか柔らかい表情になってくる。いい調子だ、私に身を委ねてリラックスしてくれればいい、慣れてきて警戒を解いたのをしたのを確認したら、彼の舌に私の舌を巻き付かせ思い切り吸い取るようにする。彼は驚いたような顔とえづくような動作を同時にしてすごい汗を流していた。その表情が見たかった。
「んっ驚いた?」
「……」
声も出ないくらい良かったようだ、それはとても嬉しい、彼の額に付いてる汗を少し舌を出して舐めると体をビクッと震わせていた。あぁ本当にかわいい、だが彼の顔がどんどん青ざめていく、ようやく効果が出てきたようだった。
「最初にあなたが私のことを抱きしめてキスした時、最初はそうでもなかったのにだんだん私との感触で興奮してましたよね、私の口の中が良かったのか、体の感触が良かった、それとも怯える私の表情が良かったのか、あるいは全部か、わからないですけど、直接でなくても当たる感触ってものすごく不快なんですよ、なのでその苦しみ味わいたいと思って、ちょっとしたお仕置きです」
彼の急所についている洗濯バサミが役立ってくれているようだった、形が変われば痛くもなる、だが痛くなればまた興奮が冷めてしまうかも知れないがそれは困る。彼の頭を片手で抑えキスをする、逃げられないのを自覚させた上で優しく口腔内をなでてあげることでまた彼はリラックスしてしまうだろう、ほら、また顔が苦しそうだ。
「んっ…んっ…はっ……ん……んー!!!!」
もはや痛みと気持ちよさで頭が馬鹿になっている頃合いだろう、体に抵抗する気配はみじんもないのにずっと体が震えている。愛おしすぎて手に力がこもってしまう、またお互いの体がどんどん熱くなっていく、彼の顔は涙目で耳はトマトのように赤く流れる汗は今朝の日ではなくとてもぐっしょりしていた。
そんな中彼が最初に飛び込んできた駅が近くなっていることをアナウンスで把握し、舌を使っていく、疲れ切っているであろう彼の舌を転がし唾液をたくさん飲ませていく、彼が私を穢したように私も彼を穢して、足腰を立たせないようにするまで頑張る。
すると彼の別の部分が頑張ったのか洗濯バサミがパチンっとどこかへ飛んでいく音が聞こえる。それに苛立った私は彼を思い切り。
「このっ!!」
「◎△$♪×¥●&%#?!!!!???」
彼の熟した果実のように真っ赤な耳を思い切り噛み、彼の股ぐらに思い切り蹴りを入れる、すると彼は私の胸に顔をうずめながら声にならない声を上げて体を思い切り跳ね上げた。耐えきれなかった彼は張り上げそうになった声を我慢するために思い切り顔を胸に押しつけ空いた口は私の服へ多量の唾液を染み込ませていた。幸せそうな彼の体は時折痙攣をさせながら私にもたれかかっており動けないと言った様子だった、今の私達は少し汗臭いかも知れない、早く電車を降りようと体を支えてあげながら降りる。
「おにいさん、すごかったですね。あんなにもだえて年下に良いようにされて、気持ちよくなろうとしたら激痛が走って、なんとか助かろうと思ってあれを外したんですよね、痛かったですよね、でもそれで終わるなんて思われたら私我慢できなくてつい……最後とっても可愛かったですよ、先輩が私に思い切り抱きついて顔をうずめて、ほらここ、おにいさんの唾液であとが残っちゃってるんですよ。早く家に帰って着替えなきゃですね、お兄さん?たてますか?」
声をかけてみるが返事は帰ってきそうにない、目の焦点があっていないためもう少し時間がかかりそうだった。
「仕方のない人ですね、水を飲ませてあげるのでこっち向いてください」
彼の顔を少し持ち上げペットボトルの水を飲ませる。口移しでも良かったのだが彼には水を渡される時に酷いことはされていないため躊躇する。
それにしても疲れ切って意識が朦朧としている姿を見ていると心が満たされていくのを感じる、家族と一緒にいるときのような物といって良いのかわからないが、寝たきりの彼をこういう風に世話してみたいな邪な考えも出てくるが、反応がないのではつまらない気もした。
「そろそろ行きますよ、おにいさん」
そして家へ
彼女に電車で酷いことをされてから少し時間が立ちようやく意識が戻ってきた頃。彼女は私に水を飲ませてくれていた。その姿はどう見ても天使で、どうして私はこんないい子に手をだしてしまったのかと後悔する、謝ろうにも意識がふらついており熱はまだ冷めない、だが彼女はは私の手を引いて少しずつあるき出す、家の場所なんて教えたっけと思いつつふら~っとした足取りで引っ張られていく。家についてもちょっとしか回復せず寝起きのような思考の遅さがある。
「さ、おにいさん、汗もかきましたしお風呂に入りますよ」
そう言って服を脱がせてきた、抵抗しようにもうまく行かず、むしろ彼女の機嫌を損ねるだけだと思い身を委ねる。すると微笑みながら僕の服をすべて下ろしてしまった。彼女も着替えるのかと見ていると目の辺りにガムテープを貼られた。見せる気はないんだろうと思いつつ、音だけであ楽しむ、お風呂にはいる準備が完了したのか手を引かれる。
「わ〜、二人だと狭いですね、まぁそれくらいが密着出来ていいですか」
「そろそろ喋ってくれても良いんですよ?」
「なんだか味気ないですね、ぱっと洗って上がっちゃいましょうか」
せっかくサービスしてあげようと思ったのになーという信じられない文言を無視していると体を丁寧に洗われる。頭皮を手で揉みほぐしてもらいながら少し強めに全体をマッサージされる、意識しているわけではないのに声が漏れ、快感を覚える。
その次に首を優しく揉みながら親指の腹の方を使い首の凝っている所を押し流すような動きで気持ちよくされ、肩、背中に続いていく、この流れ本当に気持ちよく、お湯でほぐした体に効いていた。後ろが終わり前側に回られる。
「やっぱりここ汚してたんですね、きたないなぁ〜。まぁその分しっかり丁寧に洗ってあげるんですけどね」
鼻歌を歌いながら手、胸、お腹、下半身の順番で洗われ、足の指の間まで細く長い手を使ってきれいにされた、きっとこの体で彼女が把握していない部位はほとんど無いだろう、望んでいた形では無いが初めて女の子とお風呂に入り背中を流してもらえたのだ。喜んでも良いのかも知れない、そう考えていると背中を浴室の壁につけるような形で座らせられ、丁度自分の足と足の間に入るような形で彼女が座ってくる。なんだかものすごいフィットするのが悔しい、この状態に落ち着いてしまっていた。彼女は気にすること無くもぞもぞと動きながら髪を洗ったり体を洗ったりしていた。その間も接触があるので落ち着かないのだが、電車でのセリフを忘れたとばかりにスルーされる。
「変なこと考えてても知りませんからね、私は洗った後まで世話したくないですよ」
洗う前なら良かったのかとか馬鹿なことを考えていると上がるのか浴室の扉が開かれる。名残惜しいが、人から洗ってもらう感覚は非常に良く、これまでに感じたことのない幸福感を与えてくれていた。お風呂から上がりタオルで全身をくまなく拭かれるとガムテープは外されることのないまま手を後ろして結束バンドのようなもので縛られてしまった。
「おにいさんは何をするかわからないのでこのままでいましょうね、変なことはしませんよ」
そう言われベッドの位置まで連れて来られると押し倒されてしまった。この状態は良くないんじゃなかろうかと思いつつももはや抵抗する意思も気力も心も体力も人生も全て彼女が握ってしまった。二人の間に遮るものはなくともその絶対的格差は不埒な思考を許さなかった。
「今日は色々あって疲れましたもんね、良いですよ、疲れが取れるまでいっぱい寝かしつけてあげます、少しくらいなら元気になっても見過ごすので存分に甘えてください」
そう言うと彼女は額に優しくキスをする、今日の出来事が嘘だったかのような優しいキスで涙が出てきていた、ガムテープのせいで溢れることはないが、確かに泣いていた。人生を握っている相手にすがっているというみっともなさとすがることを許された安心感でぐちゃぐちゃだ。
「泣いちゃって可愛そうですね、仕方がない人です……んっ…ちゅっ……」
今度は優しく唇にキスをしたかと思うと少しずつ舌を挿れてきた。ゆっくりゆっくり、丁寧にマッサージするような感じで、舌を舐められ唾液を少しずつ交換していく、一方的なものではなくお互いを溶かすようにじんわりと染めていく、境目なんて無いも同然で口の中を優しく溶かされていく、体が熱くなりながらも鼓動は一定で本物の安心感を手に入れていた。
やがて安心した僕を見ながら彼女は何を思ったのか今日噛み付いた方の耳を指で触ってくる。傷跡を撫でるようにそーっと、撫でる指の数は2本3本と増えていきその触り方もだんだん複雑で繊細なものになっていく、どうしても意識せざる負えないその触り方から恥ずかしくなってくる、耳元が熱くなり触られる感覚が鋭敏に反応していく。彼女は何を思ったのかキスをやめ顔を少し離す、唾が糸をひくのを実感したとともに寂しく不安になってくる。
それでも耳を触るのをやめない彼女に戸惑いを覚えながら受け入れる、彼女がどんな顔をしながら見ているのかわからず不安になる、何を求めているのか、得られる情報は耳からはいる音や接触している場所に限られているのに、今その耳は敏感に感触と撫でられる音を拾っている。
頭がおかしくなりそうになるとともにどんどん敏感になっていく耳は触られることを求めていた。
幸せで頭が一杯になり声が出そうになったその時、ピタリと辞めた。
「な、なんでやめるの……」
「やっと喋られるようになった」
気がついたら声が出ていた、諦めていた心はいとも簡単に彼女にほだされ喋る気力を沸かせていた、なんとも単純で、簡単に扱われてしまっていた。出てきた言葉は懇願の意思、これ以上無く情けなく惨めな姿を晒していた。それでも求めてしまう。
「お願いします…辞めないでください」
「頼むんだったらちゃんと名前で読んでほしいな、何何様これからの人生をあなたに捧げます、どうか温情を、くらいはさ」
「あっあっ……」
「言えないの?そうだよね、今の今まで名前なんて聞くつもり無かったもんね、所詮電車でばったりあって襲っただけの学生だし、気の迷いだったんだよね、きっと私がここまでしなければ私の人生なんて何も知らずに過ごしてたんでしょ……ねぇ、そうだよね、好きでもない相手にキスしてめちゃくちゃにするのは楽しかった?……ごめんねいじめ過ぎちゃったね、よしよし」
そう言いながら頭を撫でる、時折耳元を少しなでていき優しさを見せてくる。どうして今までこんな最低なことをしてしまっていたのか、そう思いながら謝り続けると彼女が優しくしてくれた。
「本当はねこんなふうにするつもりじゃなかったんだけどでもやっぱり好きな人には名前で呼ばれたいなって思って、私の名前まひるっていうんだ、中山真昼、これからも呼び続ける名前だから頭がおかしくなっても憶えててね」
「はい……真昼様…これからも……よろしくおねがいします」
「よくできました、特別にご褒美あげちゃうね」
そう言って彼女は優しく耳を触り始めたかと思うともう片方の手で頭を抑え強引なキスをしてくる、先程と違い強く押し付けられた唇は貪ることを目的とした事を意識させ体が少し震える、一日も立たない内にこの体は躾けられていたのだと実感しながら抵抗すること無く受け入れていく。
口の自由を奪われ視界は無く、残る耳元は指によって陥落したと言っても良かった。しかし彼女の思いはとどまらずその指の動きを止め、人差し指を耳の中に挿れていく、異物感とまひるの指が入っているという快感からキスをしていたにも関わらず声が出てしまう。
「んっ…んぐっ……んあっ……あっ……」
「ん…かわいいなもう、そんなに欲しいなら、はい」
「んっ……あっ!!◎△$♪×¥●&%#?!」
反応を楽しんでいたまひるはキスをやめ耳に入れていた指を抜き僕の口の中に一回突っ込んだかと思うとその指を再度耳に挿れた、勢いよく加減なしに挿れられたそのその濡れた指は耳の中をまひるとのミックスさせた体液で気持ちよくさせてくる、声なんて出なかった。口は空いたまま頭の中に電撃が落ちたような感じがした。鼓動は早くなり体は熱くなる。まひるの表情は見えずとも楽しんでいるのは分かった。体は興奮しておりお互いに息は荒く、いつおかしくなってもおかしくないような状態だった。
「おねがいします……もっとおかしくしてください」
「もっとおかしくなりたい?私以外じゃ生きていけないようになりたい?これから私だけを見てるって誓える?離さないよ?逃さないよ?よそ見も浮気も許さない、食事する時はもちろん、お風呂、トイレ、ベッドに生きている間は一緒に行動してもらう、否定もさせないしあなたの意見を通すかもわからない、心や体が壊れても一緒にいるって約束して、裏切りなんて許さないから」
「誓いますっ…誓いますまひる様っ……!!」
「いい子だね、それじゃあご褒美に……あむっ」
まひるに頭を胸元に抱かれながら先程まで指を差し込まれていた耳に舌を挿れられる。頭が馬鹿になるほど気持ちよくされる、自らの口から出てくる声はほとんど息継ぎのようなもので体をなしていない。どんどん頭の中が白く染められていく中まひるが舌で耳の中を舐めながら吸い上げていく、思考はすべて持っていかれ残るものは快楽だけだった。
「すきっ……すきっ……すきっ!!」
「うん……私も好きだよ…もうそろそろ頭真っ白になりたい?」
「なるっ!!なってるっ!!もう頭だめになってるっ!!」
「ふふっかわいい、もっとだめになっちゃえ」
まひるは耳の中の入っちゃいけないようなところまで舌を入れ、気持ちよくなるスイッチを入れる。体は勢いよく跳ね頭は真っ白になりながらも耳だけが強制的に気持ちよくされ快楽を貪る。もはや体は痙攣し意味のない言葉を発するだけになり限界が近づいていた。それを察したまひるが最後の命令を下す。
「大好きだよ、愛してる」
その言葉を耳に囁かれ最後の意識が弾け飛ぶ、これ以上にない幸せを感じ体の感覚を手放した。
エピローグ
彼が目をさますのを待っている間にピザを頼む、彼を堕とす為に少しベッドが汗や様々なもので汚れてしまったが些細なことだ。最後の瞬間、私のことだけを考えて私を好きだと叫ぶあの顔は記憶に残る素晴らしい光景だった。少し派手にしすぎたのもあるが汗を大量に出していた。
このまま放置しているのも健康に悪いと思い体を拭く、この体も全て私のものだと思うともっと派手にいじめたくなるがすぐ壊してはいけない。
しかし彼と私の関係性はどういったもので表すのだろうか。わからない。
そうこうしているうちにインターホンがなりピザを受け取る、彼のスマホでクレジット決済をしたため料金はいらないが玄関を少し開けなければならない、その時の私は何も考えずに受け取り元の部屋に戻っていたがどう考えても服を着ていない状態じゃ不味かった気がする。今更すぎる。
ピザを少し先に食べている間に彼が目を覚ます。
「おはよ、玲生くん、晩ごはん食べる?」
「…うん……んっ!んぐっ!!……」
少し咀嚼したピザを彼の口に直接流し込む、少し抵抗があった為耳を触りえっちなスイッチを入れる。ビクッ動いたかと思うと女の子のように体をしならせおねだりをするかのように舌と喉を使い飲み込んでいく、油っぽい口の中をお互いに共有していく。彼が短い舌を必死に使い栄養補給をしていく。終わる頃には口の周りはお互い油と唾液で汚れていた。
「美味しかった?」
「美味しかった、もっと欲しい、好き、」
「汚い食べ方ははだめ、もっと上手に食べて、わかった?」
彼にそう注意をしながらもう一度咀嚼しながら彼に口移しをする、今度はきれいにこぼしたりもどしたりせずしっかり嚥下をした。
私の言ったことを忠実に守りながら飲み込むそのさまは美しかった。
「これからもずっと大好きだよ」
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