プロローグ:ログアウト方法は、デートしてキスをする。
――戦闘システムは《リアルデートバトルシステム》。
現実または異世界でデートしなければバトルにも勝てない、そういう仕様で。もうこの最初の文言から意味不明でぶっ飛んでいる。
しかも、男と女。異性とキスしなければ、現実世界にも帰れないし、異世界にも行けないらしい。
しかもしかも、プレイヤーは最初。1000万人全員《強制転移》だったので、1度は誰かとキスしなければ。元の世界に帰れない仕様になっていた。これはプレイヤー×プレイヤーでも、プレイヤー×異世界人でも良いらしい。
いやよくない、何もかもよくない。こんな理不尽リア充計画なんてあって良いはずがない。何故なら「はーい2人組作ってー」と学校で言われるのと同じだからだ。変わり者・異端児は省かれる。孤独にひとりでポツンと給食を食べる。そんな苦い負け組判定をする方もされる方も嫌だろう。
そういう振るい・天秤にかけられ落とされてゆくのだ。続ければ続けるほどリア充度は増していき。かっこうのデートスポットとなることうけあいだ。てゆうかどこのエッチなお店だ! 運営バカじゃないのか!?
そんなこんなで、意気揚々とエンジョイプレイを楽しもうと思って始めた普通のゲームが。いきなり《キスゲーム》となり、異世界『アンノーン』に転移させられた。
少年、浮遊戦空と少女、凪ノ唄夜鈴の中学1年生コンビは。いきなりギスギスオンラインとなってしまったのだった。
ゲーム風なアナウンスがステータス画面に表示される、無駄に豪華に音声付きだった。
《このゲームのログイン・ログアウト方法はただ一つ『デートして、キスをする』。そして、ゲームのクリア方法は『真実の愛がなければクリアできない』以上です。ではプレイヤーの皆さん、楽しい『エレメンタルワールド・オンライン』ライフを――!》
少女は恥ずかしそうにこう言う。
「……どうする、センクウ。キスする? しない?」
「……しない、まだ冒険してないから冒険する―! とりあえずいこうぜヨスズ!」
無邪気とギスギスともじもじが入り混じる、混沌とキュートとパワフルが混ざって。少年少女の心は動揺を隠せなかった。恋や愛なんて、まだ遠い先の話。そう思っていた。
しかし脈絡のない少年にも《リアルデートバトルシステム》には困った様子で。
「……、とりあえずデートして強くなろうぜ!」
「――ッ!?」
両方ともギスギスな恥じらいと共に、このロマンスゲームは幕を開けた。