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第二十五話 神天狐との邂逅

 




「証拠提出まで、あと残り二日か……。今日と明日でアルバラスから、カイザルがこの世界にとっての危険分子である事を証明しないといけないのか……その上、今度は桜庭が俺を遠ざけるし……はぁぁぁ」

「鳴神様っ、お気を確かに!」


 今度は宗士郎が憂鬱としている中、その背中を和心が優しくさする。


 喫茶『ソムニウム』で臨時のバイトをしてから二日が過ぎた。


 現在は月曜日の朝。春学期を締めくくる終業式がある日。終業式を目前に控えた少しばかりの時間を教室で過ごしている所だ。


 バイトした次の日、日曜日の朝から晩までアルバラスを探すついでに、喫茶『ソムニウム』で邂逅したみなもの姿をした何者かを探し続けたものの、結局手掛かり一つすら掴めず仕舞いに終わった。


 また、その日の夜に、何度もみなもに話し掛けた宗士郎ではあったが、その度に無視され、あまつさえ彼女の態度が急変した理由も掴めていない。


 その上で、大成総理に突きつける証拠を未だ手に入れられていないとなると、悩みの種が多い宗士郎が独り、重い溜息を吐くの仕方のない事だった。


「あいつが溜息なんて珍しいなぁ」

「だね……相当心労が溜まってそう」


 教室で席について溜息を吐く宗士郎を見るなり、終業式前で暇していた亮と和人が目を丸くする。


 傍から見る分には、宗士郎の周りを暗黒のオーラが包み込んでいるとさえ幻視できる程だ。誰も宗士郎の周りに近付こうとはせず、空気を読んでそっとしているが、多分話し掛けられても気付きもしないだろう。


 それ程に、憂鬱な雰囲気が漂っている。


 そんな二人の元へ、苦笑しながら響が会話に混じってくる。


「みなもちゃんが宗士郎を遠ざけてるのも原因の一つではあるな」

「今度は桜庭がかよぉ。暴走した自衛隊を鎮圧した後、自分を責めて凹んでるのは見たけどよぉ」

「いや、その後宗士郎が何とかして、元のみなもちゃんに戻った」

「もしかして、その後に何かあったの?」

「何があったかは分かんないけど、楓さんの家で身体を休めた次の日には、みなもちゃんがおかしくなってたんだよなー。どっちに話聞いても、得るもんもなくて困ってるところ」


 響が話題に上がったみなもの方を見やり、ほとほと困り果てる。


 近寄りがたい雰囲気が彼女の周りを取り巻き、女子クラスメイトの中では一番仲の良い蘭子と幸子が、様子がいつもと違う理由を聞こうと奮闘している。


 しかし、考え事をしている所為か宗士郎のように無視するまではいかなくとも、たまにしか返事が返ってきていない。彼女達も宗士郎や響同様、少しやつれた顔付きになってきている。


「これ、ほっといていいのかぁ? 夏休みになったら、毎日顔合わすんだろ」

「ほっとける訳ない。もしかしたら『異界の門(アストラルゲート)』通って、『異界』に行くかもしれんし」

「え、それってどういう…………」


 ――キーンコーンカーンコーン!


 会話を遮って、予冷のチャイムが鳴り響く。


 響が口から漏らした単語について、二人が「説明求む」と目線を送ってきていたが、それ自体が失言だった為、響は何とか誤魔化して自分の席についた。


 他の生徒もそれぞれ自分達の席へと戻り、和心も彼女に用意された小学生用の席に座って、先生が来るのを待った。


 しばらくすると、死亡した牧原 静流の代わりにやってきた臨時の担任がツカツカと教室へと入ってきて、出席を取り始める。


「…………」

「――桜庭さん? 桜庭 みなもさん!」

「あっ、はい…………」

「明日から夏休みなので、気持ちはわかりますが、ボーっとしていては駄目ですよ? え~瀬戸田――」


 二度目の確認で項垂れていたみなもはようやく返事をする。


 臨時の担任が少々的外れな指摘をするも、みなもの異変には目も暮れず、引き続き出席を取り始める。みなもが再び顔を伏せると、彼女の異変を知る響達は揃ってそちらを向いて心配そうな視線を注いだ。


「(本当にどうするか。アルバラスは和心を奪いに必ず姿を現すから、優先度的には低い。なら、目先の問題はやっぱり桜庭だな。今回ばかりは嫌われるような事もキツイ事を言ってないし、桜庭がああなった理由がわかれば、打開案が浮かぶかもしれないんだがな…………)」


 そんな中、宗士郎は教室に教師が来た事も出席を取り始めたのにも気付かない程に、考え事に集中していた。


「鳴神様…………」


 横の席に座っている和心が「何か手助けできないか」と考えた時、


「――見つけたぞ、鳴神 宗士郎」


 それは唐突にやってきた。


「――!?」


 突如として教室内に響いた声。


 冷ややかでもあり、それでいて怒気がハッキリと認識できる言の葉。音に込められた言霊(ことだま)は心の臓を穿ち、宗士郎を否応なしに戦慄させた。


「(なんだ……今のはッ!? 途方もない殺気を感じる……! 心だけじゃなく、魂をも屈服させられるかのような圧倒的プレッシャー!?)」


 破裂するかのようにばくばくと脈打つ心臓。身体中のありとあらゆる穴から脂汗が大量に湧き出て、過呼吸を繰り返す。思考を中断させられた宗士郎は心臓すら握り潰す勢いで胸に爪を喰い込ませる。


「(まるでカイザルの……! 魔神の如き圧迫感ッ……でも何でだ? どこか懐かしい雰囲気でもある……ッ!?)」

「こ、この気配は…………まさかっ」


 宗士郎だけが謎の声の影響を受ける中、教室内に増えた()()()()()に和心の顔がほころんだ。


「お母さん!!」

「ようやく再会できたのじゃ、我が娘よ」


 何の前触れもなく教卓前に姿を現した黒髪和装の女性は教室の誰にも目をくれず、真っ先に()()姿()()和心に温かな視線を送った。和心を〝娘〟と呼んだその女性は再会の喜びを嚙み締めるように、(しばら)く和心と視線を交錯させる。


 その間、クラスメイトのほとんどが彼女達の関係を推測していた。


「母さん? 娘? っていう事は…………」

「和心ちゃんの、お母さん?」

「言葉通り捉えれば、そうなるなぁ」

「じゃあさっきの声も何か関係あるのかもな」


 和装の女性が人間姿の和心を〝娘〟と呼んだ事や和心が彼女を〝母〟と呼んだ事、登場の際に何もない空間から現れた事を鑑みるに、彼女はただの人間でない事は明らか。更には二人の関係が『親子』である事も会話から容易に推測できる。


 和心の事情を幾ばくか知る響、蘭子、亮が彼女達の顔立ちや雰囲気を見て納得の表情を浮かべ、教室内に響いた声と名指しされた宗士郎が何らかの関係があるとも考え、宗士郎へと目を向けた。


 当の宗士郎は先程の声の影響下から脱しておらず、制服の上から自らの胸を未だなお力強く握り締め、魔神カイザルにも似た圧迫感に苛まれ続けている。


「な、なんだい君は!?」

「しばし黙っておれ」

「むぐ!?」


 臨時の担任教師が急に現れた女性に向かって怒声を浴びせるが、彼女が言葉を口にした瞬間、まるで金縛りにでもあったかのように身体を強張らせ、その勢いで黒板へと叩きつけられる。


「焦らなくとも、吾輩の目的は我が娘、和心と……そこにいる鳴神 宗士郎だけじゃ」

「和心ちゃんだけじゃなく、宗士郎までもが……!?」

「テメェ一体、何が目的だァ!?」

「言うたじゃろう。娘とそこにいる男に用があると…………あの世に行きたくなければ、そこでジッとしておれ」


 和心と宗士郎の名を口した時では、温度差がまるで違う事に気付いた響と亮が即座に臨戦態勢に入るが、掛けられた言葉の圧に二人はその場から一歩も動けずに静観する事になった。


「全く、愛娘との再会が台無しになるではないか……」


 和装の女性はそのまま悠然と和心の元へ歩き進み、一歩踏み出す毎に彼女の身体を淡い光が包み込む。


 神々しくも温かな光のベールが和心がいる場所の一歩手前で弾け、真なる姿を現した。


 黒だった髪と瞳は蒼く銀色に輝くロングヘアー、真紅の瞳に。何もなかった頭部には三角形の耳、臀部(でんぶ)には髪と同色の太い房状の尻尾が十本も生えている。


 煌びやかな上下セットの真紅の和装。下の布地が覗かせる艶かしい白い生足は、何とも言えぬコントラストを生んでいる。


 それはまるで、幻想の世界から生まれ出でた女神のよう。


 数人を残し、この教室の全ての人が彼女の容姿に目を奪われ、魅了されていた。


「いや、もう既になっておるか…………鳴神 宗士郎、おぬしの所為でな」

「っ、お前、か……! この殺気はっ」

「お、お母さん? どういう事でございますか……?」


 燃え盛るような紅い眼を向けられ、宗士郎はようやく彼女の存在を認識する事ができた。一旦、彼女は宗士郎に掛けるプレッシャーを解いてはくれたが、それでもまだ宗士郎に怒りの矛先を向けている。


 彼女は和心を優しげな眼で制すると再び宗士郎に殺意を向け、口を開いた。


「そうじゃ。吾輩は狐人族の茉心(まこ)。そこにいる和心の母親で、神に仕えし神獣――『神天狐』でもある」

「なっ――!?」


 和心の母親である事を知ると同時に宗士郎は驚きに目を見開いた。


 その次の瞬間、驚愕が困惑へと変わった。


 バン!!!


「吾輩が怒っているのは、これが理由じゃ」

「えぇ?」


 茉心が胸元から取り出し、宗士郎の前に叩き付けられたのは、一通の手紙。


 見覚えがなく、和心の母親からブちぎれられるような心当たりもなかった宗士郎は疑問を露わにする。その反応が癇に障ったのか、茉心の怒りは拳に込められ発現する。


 直後、宗士郎の机が茉心の拳でドゴォ!!! と跡形もなく粉砕。流石の宗士郎もその一撃を喰らえば、命はない事を悟る。


「おぬしが和心に書かせたんじゃろうが!? 内容には『鳴神様の家の子になります』と書いておったぞ! よくもうちの娘を……! 和心を奪っていくとは何事じゃあ!!?」

「んん??」

「あれ? この手紙は……まさか」


 茉心、怒りの説明に宗士郎と和心が揃って首を傾げた。まるで覚えがあると言わんばかりに。


 それもその筈。


 手紙の形自体は知らないが、その内容は和心が神社へと残してきた置手紙の内容そのものなのだから。


「な、なあ和心。お前、もしかして本当にあの内容を書いた訳じゃないよな? 俺、確認したよな? それで〝冗談〟って言ったよな?」

「…………」


 そもそも入れ違う可能性を危惧して残したものだった筈だが、あまりにも内容が社会的に宗士郎を抹殺へと追い込むようなものだったので、神社から和心を連れていく際に確認したのだ。


「嘘だよな? 振りじゃないからな?」という宗士郎の視線に、和心は少し黙って――


「てへっ」

「やっぱりかぁあああぁぁあああ!!?」


 舌を出して笑った。


 つい出来心で! といった様子で。


「おい今すぐに誤解だと言え。いや、言ってください和心さん!! お前が招いた結果なんだ、ちゃんと尻拭いくらいしてくれよ!?」

「あ~っと、それは無理でございます。すみません」

「は?」


 ペコリと可愛らしく頭を上げる和心に、宗士郎は呆ける。刹那、宗士郎の肩が誰かに掴まれた。否、尋常ではない程の握力で()()()()


 ギギギギとブリキの玩具のように後ろを向くと、そこには途轍もない笑顔を振りまく茉心が。


「責任とって死ね」

「いやそこは結っこ――」


 次の瞬間、毒を吐いた茉心と宗士郎がその場から一瞬にして姿を消した。


 教室を満たす、沈黙の空気。誰もが今の光景を見て、啞然としていた。しかし、その中でみなも一人だけが至って冷静でいた。


「和心ちゃん、二人がどこ行ったかわかる?」

「? わかりますが……もしや、追うおつもりで?」

「うん。お願いできる?」

「はいでございます!」


 みなもの瞳の奥が揺れ動いているのを感じ取った和心は敢えて訳を聞かずに頷いた。続いて、みなもと和心も転移して教室から姿を消す。


「オイオイ、あいつら消えちまったぞ!?」

「そう、みたいだね…………どうしよう」

「うわっうわぁああ! うわっ!? 二人に知らせないと! 楓さんと柚子葉ちゃんに! 宗士郎が拉致られたって!!?」


 亮が軽くパニックに、幸子は少し冷静に、響は気が動転して取り出した携帯端末をお手玉している。


「が、学園長! 鳴神君が拉致られました!!」


 この場から茉心が消えて、黒板に叩きつけられていた臨時の担任が学園長である宗吉に連絡を入れる。その後、宗士郎を除いた全校生徒で終業式が始まったのだった。





「ここなら思う存分、おぬしを完膚なきまでに叩きのめせるのぅ」

「いや、待て。誤解だ、あれは和心が冗談で書いたものでな……!?」


 近くの山奥に連れてこられた宗士郎は、指をバキバキと鳴らして激昂する茉心を何とかして宥め、説得しようとしていた。


「(一応、ここは俺のホームグラウンドな訳だが……もし戦いになったら、勝てるかどうか)」


 周りの風景に見覚えがある。


 清涼感に満ち溢れた雑木林。その新緑の世界は、宗士郎が鍛錬に使う家の裏手にある山だった。


「自らの非を認めぬとは何と愚かな男じゃ。しかも和心を言い訳に使いおって……我慢ならぬわ!!!」

「おわ!?」


 怒髪天を衝く茉心が咆えると同時に、四つの白い爆炎が彼女の周りに漂い始める。宗士郎がその白炎を見つめた瞬間、炎の中心から白い熱線が地面を焼きながら宗士郎に襲い掛かった。


 反応するのがやっとの速度で迫る熱線を間一髪でローリング回避すると宗士郎は悪態をついた。


「危ないだろうが!? 山の木々に燃え移ったらどうするつもりだ!」

「安心せい。焼くのは対象であるおぬしだけ。他は少し焦げるだけで済む。それに、この魅力的な空間を壊すのもどうかと思うてな」

「ならやめろよ!?」


 再び宗士郎の身を白い熱線が襲う。今度は四つの熱線が四肢を焼き尽くさんと、それぞれ違う角度かつ物凄いスピードで迫りくる。


「凄い事になってるね…………」

「早く誤解を解かないと、鳴神様が死んでしまいます!?」


 遅れてやってきたみなもと和心は茉心が宗士郎を攻撃する構図を見て、慌てふためく。


 実際に慌てているのは和心だけだが、みなもは内心そう焦っていなかった。


「鳴神君は簡単には死なないよ」

「そうでございますが…………お母さあああん!!! あの手紙は誤解なのでございます!!! だからやめてください~!!!」


 和心が必死に誤解を解こうと、小さい身体で声を張り上げるも茉心には届かない様子。それでも和心は必死に叫んだ。


「――なら止めてあげるわぁ。和心ちゃん」


 その願いを聞き届けたかのように、突如として声が響き渡った。


 その刹那、


「ぐっ!!?」

「な、何事じゃ!?」


 空から降って降りてきた何者かが、宗士郎と茉心の間に割り込み、辺りを土煙で覆った。


 すぐに土煙は止み、煙の奥から一人の女性が姿を現した。


「久しぶりねぇん……和心ちゃん」

「あ、あなた様は!?」

「やぁね、忘れたの? 私はアルバラス、貴方を攫いに来たものよ」


 以前と姿は違えど、纏う雰囲気はアルバラスそのもの。アルバラスは和心と……みなもを見やった後、宗士郎達へと視線を向けた。


「よくもまあ、姿を現せたものだな。アルバラスッ」


 向けられた視線に宗士郎は警戒水位をMAXまで引き上げる。次いで、()()()()愛刀である『雨音』を鞘から抜き放った。


「(なんで俺、『雨音』を抜いたんだ?)」


 薫子の形見である剣よりも、刀剣召喚(ソード・オーダー)の得物の方が殺傷力は高い筈であるのに、何故自分はそうしなかったのか。青白い刀身を見つめて宗士郎がふと疑問に思った。


「あの得物は…………」


 そして、茉心もまた……無意識に宗士郎の持つ『雨音』に目を向けていた。


「今はそんな事を気にしてる場合じゃないな。茉心って言ったな」

「呼び捨てにするでない!!」

「今は緊急時なんだ、許せ。それよりも奴は和心を……『神天狐』であるお前の娘を狙ってるんだぞ」

「なんじゃと? ……あの時に聞いた名前、たしか〝アルバラス〟と言っていたような気もするの」


 その言葉に茉心の中でも心当たりがあったのか、少し考え込む。


「お母さん! あの人は魔人族なのでございます! 私はあの人に何度も連れていかれそうになって、鳴神様に助けてもらっていたのでございます!! あの手紙も誤解なのでございますぅー!!!」

「まことか!? 誤解じゃったのか……吾輩は娘の恩人に危害を加えようとしていたのじゃな……」

「だから誤解だって、さっきからそう言ってただろうが!?」


 その兆候をチャンスだと考えた和心はアルバラスに罪をきせ、なんとか誤解を解こうと説得。娘の言葉にすんなりと納得した茉心の顔は驚きの一色に染まる。


「ならば、奴は吾輩が仕留めようぞ。里の者や娘を襲った罪、(あがな)ってもらうぞ」

「クフフフフッ!!! まさか『神天狐』本人がこの場にやってくるとは! 何たる僥倖! 何たる幸運!! 娘共々、我が主の供物にしてくれるわぁ!!!」


 怒りの矛先を宗士郎からアルバラスへと変更した茉心がアルバラスを睨み付ける。アルバラスは茉心の姿を見て確信を得たようで、笑いと喜びの笑みを隠そうともしない。


 その薄ら笑いを不快に思ったのか、茉心は一瞬の内にアルバラスに肉薄して頭を引っ掴むと、


「――神焔(しんえん)劫火(ごうか)

「へ? うぎゃぅおおおおおうああああッ!?!?!?」


 大空へと放り投げ、圧縮した白焔を掌から放ち、アルバラスを焼き尽くした。


 断末魔の声がやまびことなって返ってくると、空から一人の女性の身体が落下してきた。


「ほいっと」


 茉心はその身体を抱き留めると、その場で寝かしつけた。


「今のは……本体であるアルバラスだけを狙って撃ったのか?」

「そうじゃ……こやつは何の関係もない事は既にわかっておったしな」


 アルバラスが普通の人間に乗り移っている事を最初から見抜いていた事と本体だけを狙い撃ちした技量。自分と対峙していた時の茉心はまだまだ全力ではなかったのだ。その事実に、宗士郎はゾクッと背筋が震えるのを抑える事はできなかった。





和心の母親でもあり、噂に聞いていた『神天狐』である茉心と出会った宗士郎。なんとか誤解を解く事ができた良かったというのが、本心である。



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