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異能学園の斬滅者 ~創刀の剣士は平穏を守らんとす~(旧クオリアン・チルドレン)  作者: お芋ぷりん
第二章 停滞へのカウントダウン編

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第五話 軋み始める関係

 




「急げー! 宗士郎が魔物を全部食い尽くしちまうぞ!?」


 響が二十人弱程のクラスメイトを引き連れ、道路の真ん中を走り抜ける。避難が終わった後なのか、人の気配が全くと言っていい程ない。


「いくら鳴神君でもそんな事しないんじゃ……! 実演するって言ってたし」

「最近ストレスが溜まってたからその可能性は薄いっ」

「確かになぁ。さっきから魔物の悲鳴が止まんねぇしな」


 断続的に聞こえてくる魔物の絶叫と携帯端末の位置情報を頼りに、響の両隣りにいるみなもと亮が現場に向かいながら、魔物が既にいなくなっている可能性について話し合う。こうしている間にも魔物の断末魔が幾度となく響き渡っていた。


「ねぇ! あれ、鳴神君じゃない!?」

「え…………うわぁ」


 さらにその後ろから感覚武装(ディヴァイズ)光線銃(レイ・ガン)を所持した蘭子が前方に叫ぶ。その声に釣られて響が前を見ると、そこにはゴブリンやオークなどの魔物の残骸と無慈悲に飛び散った鮮血が広がっている。


 残骸の中心には血を纏うように着こんでいる殺戮狂の姿が…………。


「――ハハハハ!!! もっと()り合おうぜ……!」

「あれが…………鳴神、くん?」

「信じたくないだろうけど、宗士郎なんだなぁ。前に一回言ったと思うけど、あいつ戦闘狂なんだよ」

「戦いが好きで好きでたまらないって奴かぁ、流石の俺もドン引きだわ」


 未だに宗士郎の本性を知らなかったみなもと亮の二人は眼前に繰り広げられる殺戮ショーを目の当たりにして、文字通り開いた口が塞がらない様子だ。他のクラスメイト達も唖然としている。


 昂揚した気分が落ち着いた宗士郎が響達の存在に気付き振り返る。


「ふぅ……あ、遅かったなお前達。もう数体しか残ってないぞ」

「お、おう。とりあえず身体拭けよ、皆怖がってるって」

「すまないな、確かこれは『洗浄玉』だっけか」


 響が宗士郎に近付き、一つの爆弾を取り出して渡す。宗士郎がそれを地面に向けて投げれば、噴出した煙が血を洗い流す仕組みだ。瞬く間に身体にこびり付いていた血は消え失せる。それと同時に瞳の奥に燃ゆる狂気的な闘志は収まりを見せる。


「サンキュ。……どうしたんだ皆。そんな〝見てはいけない物を見た〟みたいな顔して」

「それは……ねぇ?」

「あぁ」

「宗士郎の殺人鬼並の気配がやばかったんだよ」

「これくらい普通だろ」

「普通じゃねえよ!? まあ、久々の戦闘だから逸る気持ちもわかるけどよ…………」


 宗士郎から視線を外して、響は残っている魔物に目を向ける。


「残ってるのは、レッドグリズリー二体とポイズンスライム、それにオークジェネラルか」

「いや、レッドグリズリー二体は()()()

「どういう事?」


 屍山血河(しざんけつが)が築かれた戦場には、赤い体表の狂暴な熊と接着面を溶かしているジェル状の生物、そして部下を失った豚人間が存在している。宗士郎の見解ではレッドグリズリーだけは見た目通りの存在ではないらしい。


「こいつは――」


 と、宗士郎がレッドグリズリーに近付くと…………。


「おい、こいつは…………!」

「レッドグリズリーじゃない!?」


 宗士郎の前に立ち塞がった二体の紅の大熊はドロドロと水銀のように姿形が崩れ始め、次第にある()()()へと姿を変えた。


「柚子葉ちゃん!?」

「こっちは楓さん!?」

「『ドッペルゲンガー・ワン』、視認した対象からごく最近の記憶に色濃く残った存在に化ける魔物だ」

「初めて見たぞ、俺っ」

「こいつぁたまげたな。まさか、化ける魔物がいるとはなぁ」


 ドッペルゲンガーを今まで見た事がなかったみなも、響、亮は驚きを隠せない。


 今まさに学園で勉学に励んでいるであろう二人が目の前に現れたのだから。


「まあ、特に攻撃方法はないから安心しろ」

「な~んだ、別に危険はないね」

「だけど、これだけは気をつけろ。〝自分と近しい人物に化けられても必ず自分を強く持て〟。でないと、奴等と同化してしまう」

「な、なるほど。わかったぜ」


 宗士郎が以前に一度見た経験からの忠告だった。


「(あれは悲惨だったな…………)」


 幸いドッペルゲンガーには、攻撃性は全くない。特異的な部分があるだけだ。なので宗士郎はドッペルゲンガーを無視し局所的に当てていた殺気を解き、ポイズンスライムとオークジェネラルに対峙した。


「さっきの授業の続きを始めるぞ。感覚拡張(クオリス)を超える技術を見せてやる」


 知性がなくとも本能だけは存在する魔物二体が数々の同胞を殺された怒りで宗士郎にだけ向かってくる。宗士郎は説明する口を止めずに回避する。


「今から行うのは、感覚拡張(クオリス)の上位互換。並の集中力とイメージ力でないと成功しない技術だ。よく見てろ――」


 クラスメイト達が見守る中、宗士郎が刀剣召喚(ソード・オーダー)でオークジェネラルの背後に刀を創生して尋常ではない程に集中し始める。オークジェネラルが装備している大斧で薙ぎ払おうとした…………その瞬間――


「え!?」


 宗士郎の姿が消え、大斧が空を裂く。代わりに宗士郎がいた場所に異能で創生した刀が現出する。突然、姿を消した宗士郎にみなもが驚愕の表情を浮かべた。


「宗士郎っ、どこへ……!?」

「おいっ、あそこだぁ!」


 突如として消えた宗士郎に、オークジェネラルもポイズンスライムも動揺を見せる。響が周りを見渡すと、オークジェネラルの方向を観察していた亮が宗士郎の姿を捉えた。


「――ッ! 概閃斬ッ!」


 その次の瞬間には、感覚拡張(クオリス)で異能の形を変えて宗士郎が放った一撃――『概閃斬』によってオークジェネラルの生首が転がっていた。


「……まあ、こんな感じだ」

「〝こんな感じだ〟……じゃなぁあああい! なんっの、説明にもなってないよ!?」

「そうか? これ以外に説明のしようがないんだが」


 目の前で行われた宗士郎の超技術は誰にも理解できず、代表してみなもが少し溜めてから叫んだ。


「今のは刀との相対位置を入れ替える、疑似空間転移だ。圧倒的なイメージ力による性質の変化で、俺の異能力からは本来有り得ない技を編み出す――感覚昇華(クレイズ)って技術なんだよ。前に桜庭には説明しただろ」

「そうなんだけどっ! 感覚拡張(クオリス)でさえ、難しかったのにそんなイメージなんかできる訳がないよ!?」


 うんうん、と戦場にいるにもかかわらず、魔物そっちのけでみなもに賛同する響達。その間にもポイズンスライムは宗士郎の背後へと迫ってきていて……。


「ともっ、かく……教えはしたからな。後は魔物の殲滅だ、危険度Cの奴等だから大丈夫だろ」


 ポイズンスライムの毒攻撃が宗士郎に飛来するが、疑似空間転移で再び回避。技の影響で三半規管が激しく揺れ、気持ち悪くなるが許容範囲だ。


「ところで和心は? 一緒じゃなかったのか」

「一緒に……ってあれ!?」

「愛しのマイスイートハニーがいない……だと……!」

「さっきまでは一緒だったのに、どこに……まさか攫われたなんてことないよね!?」

「誰も気付かなかったのかよ…………今、気配を探る」


 全員揃いも揃って和心がいなくなった事に気付かなかったらしく、亮や幸子、非異能力者の和人や蘭子達までもが困惑し始める。宗士郎は闘氣法・『索氣』で闘氣の波を周囲に分散し、和心の生命反応を探し始める。


「見つけたぞ……場所は東に五百メートル離れた所だ」

「ほっ、良かった」

「桜庭、俺は和心を迎えに行く。響、亮達と一緒に魔物を倒せ。いいな?」

「うん! 任せてよ」

「響、桜庭達のお()りを任せたぞ」

「ああ、マイスイートハニーをちゃんと連れて帰るんだぞー!」


 クラスメイト達の期待の眼差しを受け、宗士郎は闘氣法で身体強化を再度掛けなおしてから走り出す。幸いにして近い距離だったが、ある一つの疑念を抱いていた。


「和心と一緒にいたもう一つの気配…………邪悪なものじゃなかったが、何か気になるな……!」


 生命探知に引っ掛かったのは、何も和心一人だけの気配だけではなかった。スタンピード警報が発令されている今、近隣の住民は全て避難所へと向かっている筈。なのに、何故かもう一つ気配が見つかった。


 和心ならば、並の敵くらい恐らく簡単に倒せるだろうが、以前の変死体の時から和心が標的だとわかっている以上、急がずにはいられなかった。


「待ってろ、和心……!」







 一方、その頃…………。


「ううむ……おかしいのでございます。こっちでお母さんの気配がしたと思ったのですが…………」


 人気のない路地。


 日の光があまり入らず、立地的にも入り組んだ場所に和心はいた。


「再会できたら恩人の鳴神様を紹介したいと思っていたのに……残念でございます」

「――何がそんなに残念なのかしらぁん」

「お母さん!? って人違いでしたか。お母さんに会いたいあまり、お母さんが現れたものかと…………失礼致しました!」

「お母さんを探しているの?」

「はいでございます!」


 突然現れた女性が背後から和心に話しかける。母親が現れたと勘違いした和心はシュンと落ち込んだ後、屈託のない笑顔で女性に頭を下げた。


「私、さっき貴方のお母さんに会って、見つけたら連れてくるようにってぇ言われてるの。良かったら……わ・た・しがぁ、連れていってあげるわぁ」

「ほ、本当でございますか!? お母さんがこの世界に私を探しに……! もちろん、行くのでございますよ!」

「じゃあ、はぐれないように手を繋ぎましょうかぁ」

「了解でございます!」


 和心は母親に会ったという女性の言葉をあっさりと信じた。余程、母親に会いたかったのだろう。喜々として女性の手を握る姿は普通の年頃の女の子のようだ。


「(ちょろいわぁ~。この子を捕まえる為、色んな手練手管を用意していたけどぉ、やはり子供ねん。望み通り連れていってあげるわよ…………()()()()()()()()()()…………ね)」


 和心からは見えない角度で女性は、ほくそ笑んだ。スキップするように軽やかな足並みからすれば、その事に和心が気付く様子もこれから何処へ連れていかれるのかも知る事は決してないだろう。


 女性は繋いだ手を引こうとして――


「何してる、アンタ……」

「鳴神様!」

「…………」


 物陰から現れた宗士郎によって引き留められた。その眼は和心を無事に見つけた事からくる安堵と女性への疑いの眼差しで占められている。


 女性は焦る様子もなく口を開く。


「この子が迷子みたいでぇ、私がお母さんの所に連れて行こうとしたんですよぉ~」

「…………そうなのか、和心」

「は、はいでございます。このお優しいお方がお母さんと会ったと言っていたもので」

「……はぁ」


 少なくとも、嘘を言っている様子は見られない。目が真っすぐである上、その一挙手一投足に乱れは見られない。しかし、()()()()()()()()()()()()()()


和心は聡明な子だが、この様子からするとかなり純真らしい。宗士郎は呆れたように左手で顔を覆った。


「なら俺も一緒に行く。今の俺はその子の保護者なんでな」

「…………」

「まさか断らないよな?」

「ぅっ……ふぅん……」

「おい、聞いてるのか」

「――ひゃぁあん!?」

「!?」


 宗士郎が現れてからだんまりを貫いていた女性は宗士郎に肩を触れられると、突然身をよじり悶えだした。顔は興奮したかのように朱く染まり、何かに耐えるように自らの身体を強く抱きしめている。


「……はぁっ……はぁっ……溜まらないっ、溜まらないわぁ~」

「(何だこの女っ、急に悶絶し出したぞ……)」

「ごめんなさぁいっ……ちょっと体調が悪くなって。お母さんはこの先にいるわ…………私は少し休憩してから行くからぁん」

「ッ!?!?!? わ、わかった……行くぞ和心っ」

「な、鳴神様!? お母さんの事、ありがとうございましたー!」


 女性が醸し出す不可思議な雰囲気が宗士郎の背筋を否応なしに凍り付かせた。気味の悪さを感じた宗士郎は一刻もこの場から離れる為、和心を引きずって脱兎の如く逃走。


 とろんとした瞳で宗士郎と和心の後ろ姿を見送りながら、女性は荒い呼吸でその場でへたりと座り込んだ。


「あの子、やっぱり好みだわぁ。失敗しちゃったけどぉ、これはこれで幸せねぇん…………次はどうやって和心ちゃんを拉致しようかしらぁ……うふっ」







「響、ポイズンスライムは和人達とぶっ殺したぜぇ」

「おう! こっちももう終わるー!」


 宗士郎が単独で和心の捜索に赴いてから早十分。響達異能力者は非異能力者のフォローをしながらポイズンスライムを撃破していた。スライム系統の魔物は細胞の核となる魔石を壊す事で細胞が液状化し、死に至るので今回は毒に気を付けておけば楽勝だった。


「ドッペルゲンガーもコイツで爆散させてっと」


 先程、安全を期して爆弾付与(マインストール)の力でスティッキーグレネードと化した瓦礫を〝ドッペルゲンガー・ワン〟に投げつけて起爆。敵は起爆と共に爆発の衝撃で吹き飛び、響はごくあっさりと敵を葬った。


「みなもちゃん、そっちは終わったー? ってまだじゃん、さっさと倒しちゃいなよYOU!」


 そうして響がもう片方のドッペルゲンガーを担当しているみなもに話しかけるのだが――


「ぁ……あぁ……」

「みなも、ちゃん?」


 みなもは膝を折って固まっていた。別に敵の攻撃や恐怖などで動けない訳ではない。ドッペルゲンガーが変身した人物に問題があった。


「なる、かみ君…………」

『桜庭…………』

「よりにもよって宗士郎かよ!? みなもちゃん! そいつを異能で早く倒しちゃって!」


 ドッペルゲンガーがみなもの記憶から読み取り、姿を変えた人物とは〝宗士郎〟だった。柚子葉や楓に変身した時同様、本物と見間違う程に精巧な作りをしている。最も嫌らしい点は記憶から読み取った人物と同じ声・所作・癖までもがコピーされている事にある。


 響が大声で呼び掛けるも隔絶された世界のように、声は届かない。宗士郎の忠告が意味をなさず、みなもの意識は既に混乱の渦中に呑まれつつあった。


『さあ、桜庭……一緒になろう。そうすれば、色んな事を悩まずに済む』

「……そうかな」

『ああ、これからは俺がついてる』

「なら……」


 偽宗士郎の手を取ろうとゆっくりと手を伸ばす。


「オイッ響! 早く仕留めねぇと不味いんじゃなかったかぁ!?」

「宗士郎の話だと一体化するって話だ……! だけど、敵とみなもちゃんの距離が近すぎて、俺達じゃ巻き込んじまう!」

「みなもちゃ~ん!!! 逃げてぇぇぇぇ!?」

「桜庭っ、さん……! 逃げて……!」

「桜庭さーん!?」


 響と亮だけでなく、クラスメイトである蘭子や幸子、和人までもが必死にみなもに呼び掛ける。


 この場にいる異能力者の力では効果範囲が大きすぎる。助けようとして、却って巻き添えを与えてしまう危険性が高い。感覚武装(ディヴァイズ)を使用した蘭子達の攻撃も練度は高くない。


 現状、響達にできる事は離れた位置にいるみなもを全速力で回収する事だった。


「俺がっ、行く――!」


 頭で考えるよりも早く行動に移した響が僅か四メートルの距離を異能をフルに使い、足裏に接触している部分を爆破し、推進力を得て縮めだす。


 だが、響の手が届く前にみなもは偽宗士郎の手を取ろうとして――


「――桜庭ぁぁぁぁああッ!!!」


 絶叫と共に天より舞い降りた一つの影によって偽宗士郎の身体が真っ二つに両断された。ドッペルゲンガーはドロリと溶け、煙となって四散する。


「え…………」

「何してるんだ、桜庭」

「あ……れ……鳴神、くん」


 夢から覚めたように、みなもは手を引っ張られると同時に薄らいでいた意識を取り戻した。みなもを立たせた宗士郎は制服に付いた汚れを払って落としてから口を開いた。


「無事でよかった」

「あ……うん。ありが――」

「でも……流石にあれは酷すぎる」


 みなもは礼を言おうとしたが、宗士郎の次の言葉に遮られる。


「……え……」

「俺は忠告したはずだよな。自分を強く持てって……。なのに意識を呑まれそうになってどうする。もう少しでお前の意識は奴と同化する所だった」

「そ、それはっ……」

「俺の姿をしていたからか? だから躊躇した。相手は魔物だ……俺じゃない」

「…………」

「あの時、牧原の絶対的な力の前に立ち上がった時のお前はどうした? 絶望の淵で、立ち上がって戦った時の方がまだ良かったぞ」

「――おい宗士郎! 流石にそれは言い過ぎだ! みなもちゃんだって、慣れない魔物で混乱してたんだぞ!?」

「響は黙ってろ……これは桜庭がこれからの為に乗り越えないといけない壁だ」


 厳しく、高圧的に。


 宗士郎は静かに苛立っていた。今日のみなもは腑抜けていると感じたからだ。己の信念さえも忘れ、ドッペルゲンガーと一体化しそうになったみなもが溜まらなく許せなかった。


 親友である響の言葉を受け止め、重く言葉を返す。それだけで響は口を閉ざした。


「お前の信念は今、どこにある? …………正直がっかりだ」

「っ……!?」

「和心、学園に帰るぞ」

「は、はいでございます」


 冷たく呆れた表情でみなもに失望した。それだけで、みなもの顔がとんでもなく思い詰めた顔になる。宗士郎は影で待たせていた和心に声をかけ、学園の方向に踵を返した。


「…………っ」

「みなもちゃん? 気にしなくていいんだよ!? あれはあいつが言い過ぎだ」

「そうだね……鳴神君が悪いよ、あれは」

「はっ、俺はぁそうは思わないぜ。せえぜえ、何で自分がガッカリされたのかぁ、考えるこったな」


 顔に影が差したみなもを励まそうと皆が擁護する中、亮だけが宗士郎に賛同してこの場を離脱していく。


「なんだよ、亮の奴っ……俺達はみなもちゃんの味方だからな」

「……うん…………」


 空気と先程の宗士郎の言葉が重くみなもにのしかかる。


 響達に手を引かれるまま、足を揃えてみなもは学園の帰路についた。此度の魔物スタンピード現象は結果的に全員無事であったものの、宗士郎とみなもの仲は深い溝ができてしまったのだった…………。





はぐれた和心に忍び寄る正体、行動のどれも謎な女性。

そして、戻った宗士郎を待ち受けていたのは、情けない姿を晒していたみなもだった。

今回のいざこざをきっかけに、二人の関係は徐々に綻びを見せていく…………。



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