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異能学園の斬滅者 ~創刀の剣士は平穏を守らんとす~(旧クオリアン・チルドレン)  作者: お芋ぷりん
第一章 学園編

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第六十四話 友を斬る覚悟

 




『―― っ、柚子葉と桜庭、楓さんをそっちに向かわせる! 持ち堪えてくれ!』

「切りましたか。……おそらくはあちらも切羽詰まっているのでしょうが、まあ三人が来てくれるなら何とかなるでしょう」


 場所は修練場内部。


 突然、目の前で起きた危機的状況を報告する為、宗士郎に電話した凛が携帯端末を懐へとしまう。避難民の一時的な安息の場所である修練場は静流の一言により、一瞬にして暴動の渦と化していた。


 理由はストレス――避難と魔物の恐怖から来る心労を刺激されたからだ。


 昨日、翠玲学園周辺に住まう住民達は突如現れた魔物の軍勢から逃げる為、避難所に指定されている修練場へと避難しなければならかった。


 過去にも魔物が何度も襲来し、避難行動をとった事はあった。その度、異能力者の子供達クオリアン・チルドレンと自衛隊の活躍により討伐、または退ける事に成功していた。


 だが、今回はその時々とは桁が違った。文字通り、物量の桁が違うのだ。


 過去十年間に渡り、二千を超える魔物を目にした事がなかった住民達はその数の暴力に圧倒され、何度も助けられる内に忘れていた恐怖心を今更ながらに思い出した。


 ――俺達がしんどい時にさっきの子供達は呑気にバカンスしてたってか!? ふざけんな!

 ――そうよ! 何で守ってくれないのよ!?

 ―― た、たすけてくれええぇぇーー!?


 避難民は避難と魔物によるストレスを『暴動』という形にして、爆発させていた。だが、事態は混乱をさらに極める。


 避難民の非難に加えて、飛び交うのは悲鳴。


 何故か? それはストレスの原因となっていた()()が避難民の周辺に突然出現したからだ。


 結果、暴動に魔物が重なり、壮絶なパニックが起こっていた。


「常日頃から守護されていた人々が流言飛語で、あっさり掌を返すとは……まさにクソ野郎共でございますね」


 凛の隣で冷めた声で和心は心底呆れた。今も学園の生徒達が魔物の脅威から守っているが、それで事態が収拾する程、楽なものではない。


「全く持ってその通りなのですが、極度のストレス状態に加えて、あのような事を聞かされれば、思ってもない事を言いたくもなりますよ」

「それにしてもこれは酷過ぎでございますよ。理由を聞けば、多少は鎮まるとは考えますけど……」

「それでも証拠がない以上、信じてくれる人も少ないでしょう」


 和心の意見に同感だった凛も呆れたように眉間を押さえる。最初は暴動に賛成しない人が少数いたのだが、多数の意見に押し潰され、結局暴動が引き起こされてしまった。これでは静流の思う壺である。


「先にどちらを鎮めるべきと考えますか?」

「魔物……と言いたい所ですが、暴動の使徒と化した人々が討伐の邪魔をしているので、こちらを優先したい所でございますね。ただ、説得材料がないのが痛い所でございます」


 優先順位をつけたい所だが、どちらも早々にどうにかしなければ、悲惨な事になりかねない。


「魔物も修練場の内外合わせて数が多い。まとめて始末しても構わないのですが、どうしても周りを巻き込んでしまいます、ねっ」


 修練場上部を飛翔する小型の魔物を片手間に凍結させ、粉々に打ち砕く凛。


 暴動、混乱する人が複雑に絡み合っているので、魔物を倒す際、巻き添いを食らわせてしまう可能性が高い。そして、老若男女問わず人が密集している為、年端もいかない子供や老人達がパニックを起こしている人に潰される事もありえるだろう。


「よっとぉ! 凛せんせー! バリケード構築完了したっすよ!」

「菅野さん、お疲れ様です」


 凛と和心でこの危機的状況をどう乗り越えるか思案していた時、修練場を駆け回り、異能でバリケードを作っていた芹香が人の垣根を飛び越えてきた。


「ああ! あとそれと、作りながら回る時に柚子葉ちゃん達を見かけたっすよ!」

「! もうですか!?」

「はいっす! 多分、もうちょっとで――」

「――GABEEEEEE!?」


「来るっすよ!」と言い終わる前に凛達の左後方で雷が迸ると同時に魔物の断末魔が響き渡った。


 無差別に暴れ散らしていた魔物も、暴動に参加していた避難民も、誰もが一瞬黙り、この場がスパーク音と複数の足音で支配される。


「こんな大事な時に何してるんですか!?」


 その一瞬の静寂を利用し、到着した三人のうちの一人が声を張り上げた。


 荒ぶる怒気、鳴り響く雷鳴。


 感情と同期しているかのような異能に凛は誰か見ずともわかった。


「全く情けないわね……敵の言葉に騙されるなんて」

「楓さん、あれはそう取られても仕方ないですよ……!」


 雷電を纏い、正面を歩くのは柚子葉。そして、その後ろを歩むのは楓とみなもだった。


 柚子葉が作り出したこの流れに乗るしかない、そう考えた凛は周囲の人間を説得しようと思ったが……


「――さっきの奴が言っていた子供達だ!」

「――取り押さえろおおぉぉーー!!」

「!?」


 避難民が柚子葉達を見るや否や、暴動の矛先を柚子葉達へと向け、魔物を無視して暴走列車のように物凄い勢いで走り始めた。


「これは……! 想像以上に――!」


 異能力者である以前に、柚子葉達は一人の子供だ。子供である以上、失敗はするし、大人よりも精神が発達していない。


 それすらも考慮できない程に彼らは今すべき事を見失っている。凛は大人の一人として、その事実に歯噛みした。


「危ないっ、二人とも捕まって!」


 怒涛の勢いで迫りくる人々に攻撃する訳にはいかず、柚子葉は楓とみなもの手を引っ掴み、『陣風迅雷』の高速移動で安全圏へと避難する。だが、その行動が避難民達の非難をさらに加熱させる。


「そうやって自分達は安全な所で俺達を見捨てるってか!? ふざけんな!」

「私達が魔物に苦しんでいる時に、バカンスなんて……! 貴方達は私達をただ黙って守っていればいいのよ!」


 あまりのストレスで、自分達がどれほど酷い事を言っているのか自覚できていない。その鬱憤を晴らす為、敵が現れれば、叩き糾弾する。


 人間の醜い部分が今この場だけに表面化した惨状に、子供である柚子葉達も流石に戸惑った。


「あの方達、この後に及んでまだそのような世迷言を!」

「いえ、この状況……実にいいですね。はあっ!」


 和心が呆れを通り越して怒りを持ち始めた時、その横で凛だけが冷静に俯瞰し、行動した。


 あまりの勢いで迫りくる人々に魔物は怯えこそしなかったが、本能的に道を開けた。そう、紅の絨毯を王が突き進み、騎士が場を開けるように。


 それこそが決定的好機だった。避難民と魔物との距離が離れた今こそが。 


 凛はみなもにアイコンタクトで合図し、広域氷結の準備を。みなもも勘付いたのか、避難民を神敵拒絶(アイギス)で包み込む。


 そして、凛は力を一気に解き放ち、修練場内に出現した魔物を優雅たる凍久フリージング・グレイス で瞬間凍結させた。


「な、なんだこれ…………?」


 突然の出来事に避難民は糾弾をやめて、周囲を見渡した。


「菅野さん、拡声器を」

「はいっす!」


 芹香は物質可変(バリアブル・マター)で創造した拡声器を凛に手渡した。


「魔物の脅威は去りました! 暴動を中止してください!」


 凛が拡声器を通して、修練場全体に呼びかける。魔物が討伐された事実で避難民の思考がクリアになっていると考えての呼びかけだ。


「たしかにもう安全だ。……だとしても、大変な時に遊んでいた事に変わりねえじゃねえか!?」


 だが、現実はそう甘くはなかった。「そうだ! そうだ!」と共感する言葉の連鎖が、暴動がそう簡単に鎮まる事はないと示している。


 人間は、私達はここまで醜悪なのかと凛が諦め、拡声器を下ろしたその時、


「――おねえちゃんたちは悪者じゃないよ〜っ!」


 男の、それも子供の声が響き渡った。


 見れば、いつの間にか凛の拡声器を手に取り、小さい身体で声を張り上げる小さな男の子がいた。


「あの子は……榎本君と助けた子供だ!」


 みなもがその子供を見て、目を丸くした。みなもはその子供をよく知っていたからだ。


「あそこのおねえちゃんは僕達の事、守ってくれたよ? なんで、おねえちゃん達を責めるの!?」

「こ、こら!? 何をしてるの! すみません! すみません!」


 柚子葉達を捲し立てていた避難民達が男の子の、子供の純粋無垢の一言で一斉に言葉をつぐんだ。凛も突然の事で黙りこくっていたが、その子供の親らしき人達が子供を引っさらい、頭を何度も下げた。


「いえいえ。ボク、ありがとうね――聞きなさい! 避難してきた大人達よ!」


 凛は男の子に礼を言い、拡声器返してもらってから、凛とした佇まいで呼びかける。


「彼女達は、いえ……子供達は魔物と戦える力がある。それ故に戦場へ駆り出され、その度に脅威を取り除いてきました。その小さな身体で、本当は平穏な日常を送りたいと願う子供達が明日を大事な人達と生きる為に戦っている。例え先程の話が本当だったとして、戦士達にも休息が必要なのにどうして! そこまでに子供達を追い詰めるのですか! 大の大人が本当かもわからない情報に踊らされ、束になって守護してきた者達を糾弾する…………! それが、今まで自分達よりも幼い子供達に守られてきた大人のする事ですか!!!」


 暴動を止めようとした少数者の胸中を代弁した凛の弁舌は反論を許さなかった。男の子の言葉で静まり返った大人達の心を揺らすには十分過ぎる程の説得力が、魂の叫びがあったのだ。


「私達はなんて酷い事を……」

「子供達の方が辛いとわかっていたのに……クソッ」


 ハッとしたように、暴動を起こした大人達はその場で崩れ落ちた。自分達が子供達に対してしでかしていた事をようやく自覚したのだ。大人達の顔が後悔の念で滲む。


「これにて一件落着、でございますね!」

「ですね」

「っすねー!」


 暴動が鎮まると柚子葉達が凛の所へと歩いてくる。


「もしかして必要なかったかな?」

「そんな事はありませんよ。彼らの心に訴えかける事ができました」


 柚子葉が杞憂だったとばかりに胸を撫で下ろす。


「後は外に出現した魔物を潰すだけかしら」

「そっちは早く済みそうですね……あ!」


 楓の呟きを返すと、みなもがある方向に走り去っていく。その方向にはみなもの両親らしき人達が立っていた。


「お母さん! お父さん!」

「あら、みなも! 大活躍だったみたいね!」

「みなもちゅわ〜ん! カッコ良かったよぉ! 流石は僕達の子供だ!」

「ちょっと!? 二人とも恥ずかしいよ!?」


 仲睦まじい親子の姿に凛達はほっこりする。多少、癖の強い父親がいるようだが、これも一つの家族像だろう。


 楓達の視線に気付き、みなもの両親は笑顔で手を振って応え、楓達達もまた礼で返した。


「さて、さっさと外敵を叩きのめす事しましょうか」

「物騒だよ、楓さん」

「他にどんな言い方があるのよ」

「ほら、感電死させるとか!」

「そっちの方がより物騒ですよ、柚子葉さん」


 凛に指摘され、ええ〜!? と驚く柚子葉。敵を倒す事に関しては案外、抜けている。


 そう談笑している内にみなもがぱたぱたと戻ってきた。


「どうしたの、みなもちゃん?」

「うん。お母さん達が自分達の事はいいから、友達を助けに行ってあげなさいって」


 そう話すと、みなもが凛に視線を向ける。


「構いません。宗士郎君達を助けに行ってあげてください」

「いいんですか?」

「どうせ、外の魔物は他の生徒達の力でそろそろ終わりますし、万が一また現れたとしても、暴動が起きない限りはもう大丈夫です」

「わかりました。お母さん達の事をお願いします!」


 親達の事は任せて、みなもは柚子葉と楓を引き連れて戻っていった。取り越し苦労のようなものだったが、それは言わぬが花という奴だろう。


「私達は引き続き、ここで避難民の防衛。魔物が出た場合は各個撃破でいきましょう」

「了解でございます!」

「わかったっすー!」


 醜いが、ちゃんと人の心を持つこの街の住人達を守る為、凛達は気合を入れ直すのだった。







「ほらほらっ! どうした、宗士郎! ご自慢の斬れ味はそんなものかよ!」

「ぐ……!?」


 修練場地下施設。


 立て続けに謎のオーラを纏った元春の攻撃を刀身で受け止め、流し続けていた。


 執拗に宗士郎だけを狙い、また攻撃の密度が濃いので、共に戦おうとしていた亮も宗士郎の後ろでそれぞれの感覚武装(ディヴァイズ)を構えていた蘭子達も立ち往生するしかない現状だ。


 今の元春はやはりと言うべきか、以前よりも黒紅色のオーラを纏っている今の方がパワー、スピード、頑丈性に富んでいるようだ。


 闘氣法による身体強化、主に動体視力、敏捷性を格段に引き上げているのだが、それを上回る攻撃の回転数。元春との戦闘が始まってから、宗士郎は常に後手に回っていた。


「宗士郎ッ! 俺達と変われッ!」

「……いや、まだだ! このオーラの謎がもう少しで解けそうでな……っ!」


 響と亮が必死に交代を迫るが、宗士郎はそれを頑なに断る。宗士郎は元春の黒紅色のオーラの正体に少なからず勘付いていた。


 何せ、これまで()()()()()()()()()()()()()()()()()


「(俺の異能で斬れない物はほぼない。魔界で一番硬いとされる、アダマンタートルの甲殻すら斬り裂ける程に。だが、元春のオーラ()()は何故か斬れない。なんでだ?)」


 刀剣召喚(ソード・オーダー)で創造した刀は斬れない物はない。自然界で最も硬いダイアモンドすらも斬った事がある。


 だが、このオーラ。この未知の物だけは先程から斬れなかった。硬度がある訳でもなく、ゴムのように弾性力が優れている訳でもない。


 ならば答えは……このオーラをもう一度斬ればわかるはずだ。


「ちゃんとガードしろよ? でないと今度は叩っ斬るッ」

「!?」

「おぁあああッ!!!」


 体重の乗った渾身の一撃を元春に叩き込む。受け流していた時よりもさらに速度を上げた一撃に、避ける事は叶わず、元春は両腕をクロスさせる事で防御。


 瞬間、接触部分から眩い程の火花が飛び散ると、やはり宗士郎の刀はオーラを超えて元春を斬る事はできなかった。しかし、確信を得る事はできた。


「元春。異能って言ってたが……その実、オーラの正体は()()()()そのものだな?」

「……よくわかったな」

「お前との模擬戦がヒントになった。〝エネルギーであるクオリア同士は互いにぶつかり拮抗しあう〟」


 以前、行った元春との模擬戦時に感覚武装(ディヴァイズ)の一つ、光線剣(レイ・ソード)と宗士郎の刀はどちらもクオリアで構成された物だったが故に、斬り結ぶ事が可能だった。


 前の時は最終的にクオリアの刀身を破壊する事ができたが、今回それができないのは、元春のクオリア量が平均値よりも高く、強いからだろう。


「まあ、わかった所で俺の優位は変わらないッ」

「本当にそうか? 俺は武器を作るだけでクオリアを消費する。対してお前はクオリアのオーラを常に纏っている」


 ここまで言った所で、亮が気付く。


「! 宗士郎は壊れない限りは消費しないがぁ、佐々木は常にエネルギーが漏れ出てる。佐々木の方が先にガス欠になるって訳か!」


 例え、元春のクオリア量が宗士郎より多くとも、消費するのと消費しないのでは、話がかなり違ってくる。


 早々にガス欠になり、敗北するのは目に見えている。


「だからどうした……俺の腐った性根を叩き直したいなら、やってみろぉおおおお!!!」


 元春が再び、黒紅色のオーラをエネルギー弾のように無差別攻撃を開始。エネルギー消費など関係ないとばかりに、辺り一帯をクオリアの暴力で埋め尽くす。


 響と亮と幸子はそれぞれ自分達の異能で回避、防御するが、最初の時と威力が段違いであり、おそらく長くは持たないだろう。


 宗士郎は蘭子と和人を守る為に、斬刀要塞ソーデッド・フォートレスによる堅城を構築し、自らはオーラ攻撃の弾幕を掻い潜り、元春へと少しずつ接近していく。


 その前に攻撃を終わらせ、決着をつける。そう思った矢先、異変が起こった。


「っ、があぁああああッ!!? ゥガアアアアアアアアッッッ!!??」

「なんだ!?」


 突如、無差別攻撃を続けながら元春が激しく苦しみだしたのだ。膝をつき、頭を両手抑えながら絶叫する。


「宗士郎ッ!? これって!」

「お前の想像通りだ。おそらく、元春は暴走してる。力を制御できていないッ」


 響が思い至った考えに宗士郎が同意する。


 今まで暴動せずに意識を保っていられる方がおかしかったのだ。ただでさえ、異能を持ってなかった元春が反天(ブラウマ)した上に、洗脳、無理矢理異能を植え付けられている現状。副作用が起きないはずがなかったのだ。


「無傷で連れ戻すのは無理だとわかっていたが、もはや感情に訴えかけて説得するなんて事は無理だ! このままだと元春は苦しみながら死ぬか、溜め込んだエネルギーを体外に放出し、ここら一帯を軽く吹き飛ばす……! くそっ!?」

「鳴神君!? もしかして佐々木君を!?」

「宗士郎君ッ!? やめてくれええーー!?」


 無意識に出ていた言葉を聞かれたのか、蘭子と和人が必死に宗士郎に呼びかける。だが、この場にいる全員の命、地上にいる仲間達を含め、避難民の人達の命を救う為には、ここで元春を殺して止めるしかない。


 予想できた事だった、覚悟もしていた。


 だからこそ、『人を殺す』という所業の罪は俺だけが背負う。そう、宗士郎は決めていたのだ。


「説得させる機会を作る事ができなくて、済まなかったな皆。皆が元春の死を、殺す罪を背負わなくていい。……俺が、俺が全て背負うッ!」

「――やめろ宗士郎!」

「――まだ何か手段があるはずだぜぇ!?」


 響と亮の静止の絶叫が鼓膜を揺らすが、友の声を振り切り、宗士郎は絶え間なく飛んでくるオーラの攻撃を刀で受け流しながら元春の懐へと飛び込む。


「――元春ーーーーッ!!!」


 そして、闘氣法による全力強化に加え、アダマンタートルを斬り裂いた時に刀に込めた鳴神(めいしん)流の真髄―― 『一刀を以って全てを断つ』を胸に、渾身の『概閃斬』をほぼゼロ距離で元春へと放った。


「!?」


 今度は弾かれる事もなく、刀身は徐々に元春の身体へと沈んでいったが、ここで不思議な現象が宗士郎を襲った。


 全ての動きが、時間が止まり、意識だけが加速。そのままクオリアの光に導かれるように宗士郎の意識は光へと沈んでいった。





流言飛語に惑わされ、極度のストレスが招いた、禁忌の行動。

修練場に避難してきた大人は純粋無垢な子供の言葉と、冷却された意識に投げかけられた凛の言葉で、自らがしでかした事の重みを理解し、後悔した。


一方、宗士郎は元春の謎のオーラを看破するが、元春を元に戻す事は叶わず、暴走する。

これ以上、被害を出さない為にも宗士郎は元春を斬り殺す事を決意、実行したが、宗士郎の意識は謎の理由で水底へと沈んでいくのだった。


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