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第二十九話 霧魔を葬る絶技

またまた一ヶ月ぶりです……(泣)


第三章は後一話とエピローグ(後日談的な?)を幾つか投稿する予定です。

 




「今、包帯を巻きますね……」


 今は戦えない自分でもできる事を、とみなもは治療師達と共に教会に運ばれてきた怪我人を手当を行っていた。


「――治療師はいるか!」


 そんな中、やけに切羽詰まった声と共に数人が教会内部に駆けこんできた。


「はい! ここにいますよ!」


 他の怪我人の対応で忙しい治療師の代わりに、みなもが手を振って反応を示す。すると、声の主達はどこか大きい岩のような物体を背負って来た。


「あれ? コムギさん?」

「桜庭殿? どうしてここに」

「コムギさんこそ……まさか、もう戦いは終わったんですか?」


 その者達の中心人物は部下の騎士達を連れた副団長のコムギだった。コムギ達は背負っていた物をそっと床に置きながら問いに答えた。


「いえ……まだ。鳴神殿が前線で戦っています」

「え? な、鳴神君は! 鳴神君はっ、無事でしたか!?」


 宗士郎の名前が出るなり、血相を変えたみなもがコムギの肩を強く掴んだ。


「お、落ち着いて下さい……! 彼は無事でしたから……!」

「そ、そう……ですか。すみません、取り乱しちゃって」

「い、いえ。気になるのも当然かと」


 みなもが落ち着きを取り戻すと、コムギは咎める事なく微笑んだ。


「それで、戦況はどうでしたか?」

「あまり、芳しくありません………」


 岩らしき――否、よくよく確認してみれば氷と分かるソレに、コムギは暗澹(あんたん)とした視線を落とす。そこで、みなもはようやく氷に閉じ込められている人物に気が付いた。


「き、騎士団長さん!? どうしてこんな姿に……まさか出たんですか? 魔傑将が……!」


 みなもの問いに対し、コムギは小さく頷く。


「今の私達では足手纏い……そう考えた私達は鳴神殿の指示で潔く撤退しました。ですがその時、信じ難い光景を、目にしたのです」

「いったい何が、何が……あったんですか?」


 深刻そうな面持ちでわなわなと震えるコムギに、みなもはただならぬものを感じ取った。そして、「落ち着いて聞いて下さい」というコムギの念押しに耳を傾け、


「二条院殿達が敵の術中に落ち、激怒した鳴神殿の雰囲気が恐ろしいものに変化したのです」

「――え?」


 二つの事柄を聞いた直後、否――正確には〝宗士郎が激怒した〟という事を頭で認識した途端だろうか。その瞬間、みなもの頭は真っ白に塗り潰された。


「……行かなきゃ……」

「ですが、その後また雰囲気が――って、桜庭殿!?」


 そして次の瞬間。足手纏いという事実や自ら割り振った役割をも忘れて、みなもは外へ飛び出していた。




 辺りは薄暗く、夜の静けさが実に心地良い時間。ただし、それが本当に自然からくるものならばの話。実際は、何者かが放つ面妖な気配に空気自体が怯えているかの如く、静寂が辺りを支配していた。


『――どうかな? ボクの真の姿は。得も言われぬ凄さがあるだろう?』


 宗士郎の眼前でリヴル()()()者が言った。


「たしかに、得も言われぬ醜さだ。そうやって欲望をさらけ出した姿の方がまだ好印象だぞ」


 宗士郎がリヴルの姿を見て、皮肉を織り交ぜ(そら)んじる。


 子供の容姿をかなぐり捨て、霧の龍と同化したリヴルは凄まじく大きい。姿形は邪霧龍ミスト・デモン・ドラゴンと大差ないが、龍眼はリヴルの瞳と同じ色を取っている。


 しかし、問題はその姿ではなく霧の本質にある。


「剣士にとっては天敵みたいな奴だな。試してみるか……はぁッ!」


 宗士郎はリヴルに『概閃斬』を放った。直後、リヴルの身体は二つに裂けるが、それだけだ。すぐに復元してしまう。それも当然だ――霧は触れられないのだから。


 霧という現象に遭遇した事がある人ならば、誰でも知っている事だ。極小の水滴が浮遊している為、実際には触れているが、そこに物理的感触は無いに等しい。


『フハッ……ハハハハハッ! 無駄だよ無駄。剣で霧を斬れるか? 拳で霧を殴れるか? ボクがこの姿になった時点で君の敗北は決定したんだよ――カァアアアア!!!』

「っ――!」


 リヴルの(アギト)から黒紫色のブレスが宗士郎に向かって扇状に放射される。地面を瞬時に侵食・腐食し焼け爛れたようにしていく。その勢いは凄まじく、宗士郎の姿は瞬く間に飲み込まれていった。


「宗士郎ぉおおおッ!?」

「士郎!? 柚子葉!?」


 宗士郎がブレスに飲み込まれたのを見て、響と楓が悲愴な表情で宗士郎が居た場所を見る。しかしそこには、宗士郎の姿はなかった。


「う、噓だろ、おい……やられちまったってのかよ、宗士郎っ……」


 絶望した響がその場で膝を突いた。楓は言葉すら出なかった。


「――いや、勝手に殺すな」

「そ、宗士郎!?」


 二人が嘆いた直後、その後ろから呆れた声が掛かった。声の主は当然宗士郎だった。柚子葉を抱えて瞬時に移動していたのだ。


『仲間を担いで咄嗟に逃げおおせたか……』

「士郎っ……生きていたのね……!」

「ああ、柚子葉を頼む」


 楓達に柚子葉を預けると二人が声を掛ける暇なく、宗士郎はその場を離れていった。


『よく躱したね、褒めてあげるよ……』

「流石の俺も避けなければ、死んでいたからな」

『道理だね。でも、これならどうかな!』


 リヴルが地面を抉るようにして滑空。その勢いで文字通り牙を剥くが、宗士郎はその脇を滑るように回避し、刀を振りかざす。


「地面を抉っていくなら、今この時だけは無敵じゃないだろッ」

『へぇ……それに気付くんだ。だけどね!』

「っ!」


 振り下ろした刀はリヴルに傷を付ける事なく空振りし、直後に霧の尻尾が宗士郎を薙ぎ払った。


斬祓霊魂(アナテマ・ガイスト)!」


 霧の身体を用いた攻撃に嫌な予感がした宗士郎は、瞬時に黒銀のオーラを振るって防御する。直後、襲い掛かる衝撃を受け、宗士郎の予感は的中していた事が分かった。


「切り替えが速すぎる……いや、それもお前の力か」

『ご明察。けど、分かったところで君に成す術はないよ』


 宗士郎の攻撃は通らず、リヴルだけが一方的にダメージを与えられる。その一連の現象は強制支配の魔眼アイズ・オブ・ヒュブリスの『因果歪曲(ディストォティオ)』が引き起こしていたものだった。


「チッ……面倒だな」


 ダメージを最小限に済ませた宗士郎は思わず舌打ちする。


「高速のカウンターも駄目となると、俺にはもうお前を斬れる手段はない……今はまだ、な」

『……つまらないね。なら仲間諸共! ボクの力の下にひれ伏せ!』


 敗北宣言と受け取ったのか、リヴルは失望したとばかりに嘆くと顎を大きく開き、黒紫のエネルギーを集束させ始めた。


『これで万一、君が生き残ったとしても仲間はおろか後ろの劣等種族の国は根こそぎ滅ぶだろうね! そうなれば、君も今以上の力を出さざるを得ないだろう!!』


 集まるエネルギーは先程の数倍以上。それも腐食のブレスとなれば、みなもの神敵拒絶(アイギス)をも突き破り、国を文字通り土台から消し去れるだろう。


「こ、今度こそ終わった……宗士郎や俺達も」

「何言ってるのよ! 馬鹿響! まだ敗北すると決まった訳じゃ――」


 集束していくエネルギーから凄まじい波動が幾度となく大気を震わす。恐怖を感じ取った楓と響はガタガタと震え出す。


『終わりだァ! 蝕む毒霧の息吹(ルイン・ネブラ)――ッ!!』


 全てを侵蝕する滅びの光線が世界を飲み込む。その最中、宗士郎は死に怯える、などという感情は一切抱かず、無言のままに神速の居合を放った。


『(今さら攻撃してきたところで意味はない。このままこの世界から消え――ッ!?)』


 刹那、リヴルの脳は戸惑いを見せる。それは自身に起きた変化に対してではなく、


『(な、なんだっ……これはいったい――いったい、何故! 何故、ボクの攻撃が()()()()いるんだ!?』


 再び居合の構えに入っている宗士郎を他所に、宗士郎に放出しているブレスの軌道はリヴルの背後に向かっている。否、()()()()られていた。


 その異様な光景を見て、目を見開いた響が目元を手で擦る。


「あ、あれ? 俺、おかしくなっちまったのかな? 空に亀裂が入ってるように見える」

「……いいえ、見間違いなんかじゃないわ。あれは、士郎がやったのよ。信じられないけど、空間を斬ったんだわ……!」

『な、なにィ!?』


 現在、起きている現象を楓は的確に言い表すとリヴルがブレスを吐きながら驚愕した。


「――離天(りてん)


 宗士郎が呟くと同時に虚空に剣閃が迸る。リヴルの背後に別の亀裂が出現した直後、


『ぐぉああああっ!? ひ、引きずり込まれるゥ! うぁあああ!?』


 霧の巨体が二つに分割されて亀裂に飲み込まれ始めた。


「甚だ不本意だが、お前を斬る事は今の俺でも不可能だ。だから、お前自体を世界から追放する事にした」


 そう――先程の宗士郎はリヴルを〝斬れない〟事を痛感した。だが、たったそれだけの障害(認識)だったのだ。リヴル自身を斬れないのならば、別の方法で倒せばいいだけのこと。その手段が覚醒を果たした今の宗士郎には有った……ただそれだけの話だ。


『キ、キサマァアアアアアアアア――ッ! ぜったいに、絶対にッ許さなァアアアイ!!』

「許さないだって? 勝手な都合でこの国の人々を殺した挙句、仲間を操り人形にしたお前のような下種野郎が言って良い台詞じゃあないな……」


 既にリヴルの身体は原型を留めておらず、二つの次元で引き裂かれていく所為か、リヴルの精神は崩壊しかけていた。


 そんなリヴルに、宗士郎は手向けの言葉を唾棄する。


「次元の狭間で悠久の時を彷徨って果てろ……憐れで傲り高い魔人よ」

『ナ゙ル、ガミッ……ナ゙ルガミッ、ゾヴジロヴゥゥゥゥゥ――ッ!!』


 怨嗟(えんさ)の断末魔を上げながら、傲慢の魔傑将リヴルはこの異界(イミタティオ)から姿を消した。


「次に生まれてくる時は、せめて善人である事を祈るんだな」


 既に居ないリヴルに吐き捨てると宗士郎は虚空に刀を仕舞った。元に戻ろうとする世界の理が働いたのか、宗士郎が斬り裂いた空間は何事もなかったように元通りとなった。


「やったな! 宗士郎!」

「っ、響」


 宗士郎が振り返った瞬間、響が肩を組んできた。


「まさか、あんなあっさり倒しちゃうなんてな! その姿、説明して――ゲブラァ!?」

「邪魔よ響」


 理不尽にも楓の左フックを食らい、響がわざとらしい悲鳴を上げて地面に転がる。


「楓さん……」


 その直後、


 パシンッ――!


 それは、宗士郎の頬が叩かれた音だった。静まり返っていた空気の中、乾いた音は鮮明に響いた。


「これは、私達に心配を掛けた罰よ」


 楓の顔は、それこそ皺ができるんじゃないかという程に強張っていた。


「その様子だとみなもとの約束も破ったでしょう?」

「言い訳するつもりはないよ。心配かけてごめん……」


 最大の敵が近くにいる。だが、宗士郎は楓の――大切な仲間の時間を優先した。後悔はなかった。大切なものの為、掲げた信念の為に動いていたのだから。そして何よりも――リヴルとの戦闘で覚醒し動じなくなった胸が痛みを訴えかけていたから。


「…………なら許してあげる。無事で良かったわ」


 痛切な顔の宗士郎を見ると共に、楓は目尻に涙を浮かべて抱擁を交わした。宗士郎もそれに応じ、優しく包み込んだ。


「え、なに? イチャイチャする為だけに俺を殴ったの?」

「そうよ?」

「最近こんな役回りばっか! もう嫌っ」


 事もなげに言ってのけた楓の言葉は響の心を深く傷付けた。


 いつも通りの風景。和やかな雰囲気が宗士郎達を包み込んでいる。


「――さて、もう()いか?」


 しかし、そんな優しい世界も長くは続かない。嫌悪感すら催す鋭い言葉が空気に水を差した。


「ああ。まさか、終わるまで待ってくれるとは思わなかったよ――カイザル=ディザストル」

「今この場で汝を殺す事は我の本意ではないのでな」

「よく言う。リヴルを使って殺そうとした癖によ」


 長い紅髪の男――カイザルは気配すら感じさせずに、少し離れた位置に立っていた。他の魔傑将を帯同させて。


「心外だ。殺そうとしたのは、あくまでもリヴル本人の意思。今回の侵攻では、鳴神 宗士郎――汝の潜在能力を引き出す事だけが目的だったのだからな」


 あくまで(しら)を切ろうとするカイザルに、宗士郎の拳がピクリと動く。


「そして汝は期待通りの、いや、それ以上の力を見せた。その礼だ……我と一対一で戦う栄誉をやろう」

「……今の俺の力を確かめようっていうのか」

「そう取って貰っても構わぬ。だが、半端な覚悟では死ぬ事になるぞ?」


 微笑を携えたカイザルが腕を組んで待ち構える。隙だらけの構え、故に宗士郎を舐めている事はその場の誰もが理解できた。


「(避ける事は出来ない、か……)」


 そんな扱いを歯牙にもかけず、宗士郎は虚空から刀を引き抜き戦闘態勢へと移行するが、


「宗士郎! 奴の言葉通りに一対一で戦う必要はねえぜ! 三人で戦うぞ!」

「いや、下がっていてくれ響」

「な、なんでだよ!」


 食い下がる響を横目で見つつ、宗士郎は嘆息する。


「そんなに震えてる奴を前に出す馬鹿がいるか。楓さんもだ」

「……っ」


 既に臨戦態勢だったらしい楓が図星とばかりにたじろぐ。二人は宗士郎の為に戦えない自分に負い目を感じているようだった。


「それに、二人とも前に出たら誰が柚子葉を守るんだ。ここは、俺に任せてくれ」

「…………分かったわ」

「負けんじゃねえぞ! 宗士郎!」

「話は終わったようだな。ならば、来るといい」

「言われなくても……」


 楓と響が柚子葉を連れて下がったのを見てから、宗士郎は全身のオーラを昂らせた。


「こ、これが宗士郎の今の全力、なのか……!」


 次第に大きくなっていく波動がカイザルの前方約五メートルに差し掛かった時、宗士郎のものと相克(そうこく)するようにして勢いが止まった。


「…………」

「この程度じゃ眉一つ動かさないか」


 カイザルから立ち昇る、ある意味宗士郎と同種の波動が宗士郎のオーラを押し留めている。それどころか、次第に押し返し始めていた。


「(二人を下げたのは、なにも自信があったからじゃない。全力以上を出し切らないと戦いにすらならないと思ったからだ。新しい力を得たおかげで、今ははっきりと分かる。力量の差が、この男の纏う恐ろしい空気が)」


 初めてカイザルと相対(あいたい)した時、宗士郎は実に未熟だった。


 真の強者は敵と相まみえただけでその者の力量を見抜く。当時はその域に達していなかった事は何も恥ではないが、その実、虚勢を張った姿は実に滑稽であった。


「改めて、自分の弱さが身に染みるよ。勇気と無謀は別物だっていうけど、無謀と分かっていても勇気を振り絞らなきゃならない時がある――今がその時だ!」


 仲間を背に宗士郎が居合の構えを取り、


概閃烈斬(がいせんれつざん)――ッ!」


 一呼吸で幾重にも斬撃を放つ。通常の『概閃斬』とは比較にもならない速さと鋭さ、そして手数。両陣営の歓声と悲鳴が木霊する中、カイザルはあろうことか()()()()()()()


「ふむ……中々の斬れ味だ。ちょうど髪を切り揃えたいと思っていたところでな」

「なっ――剣の軌道に合わせたのか!?」


 前髪を弄りつつ具合を確かめるカイザル。


 まるで斬撃の正確な軌道と方向、タイミングを感知していたかのようにその場で首を動かすだけで自ら照準を合わせにいったのだ。現にカイザルは余裕綽々の無傷だ。


「俺は散髪屋じゃないんだよっ……そんなに斬られたいなら――ッ」


 宗士郎は黒銀のオーラで強引に切り込みながら、カイザルの懐へと飛び込む。カイザルが動じないのを見て、宗士郎は口角を吊り上げ、動きを阻害する意を込めた刀で斬り上げる。


「封刃!」


 避けられるタイミングは疾うに過ぎている。確実に入った、と宗士郎は確信するが、


「牧原 静流に放った技か。特段防ぐ必要はないが、我の力を誇示する必要もあるのでな。まずは、()()()

「っ、ぐぁっ!?」


 何らかの力が働き、宗士郎の身体は背後に吹っ飛ぶ。すぐさま体勢を立て直すと眼前にはカイザルの姿があった。


 いつその手に握られていたのか、カイザルの右手にはどす黒い細身の刃が握られている。


「(斬られる……!)」


 無造作に振るわれる暗黒の刃。死を覚悟する宗士郎。だがしかし、剣術で培った長年の勘が宗士郎の身体を辛うじて動かした。


 直後、背後に鎮座していた王国の外壁は両断され地面に落ちていた。


「(あ、危なかった。避けるのが一瞬遅れていたら斬られていたのは俺だった。だが、今の攻撃……俺の概閃斬に似ている?)」

「――それは汝が見た光景に関して言えばそうだ。他の者には我の攻撃すら見えておらぬがな」

「っ、なに……? 響! 楓さん! 今の斬撃は見えたか!」


 心を読まれて心臓が飛び跳ねると同時に距離を取る宗士郎。カイザルの言葉の意味を探る為、宗士郎は咄嗟に仲間の名を呼ぶ。すると、二人は顔を見合わせた後、困惑したように口を開いた。


「なんの事を言ってるか分かんねえけど、あいつは何も持ってないぜ……?」

「は? 壁が斬られた事なら見えていただろ!」


 宗士郎がカイザルから目をそらさず後方の外壁を指差すが、


「な、なにも斬れてないわよ……私達には、カイザルが持っている物も壁が斬られたところも見えなかったのよ」

「どういう、事だっ……」


 響達には見えず、宗士郎だけが現象を知覚していた。楓の万物掌握(クロノス)の異能特性にも似た効果に、宗士郎は確かな実感を抱き狼狽えた。


「――幻刀(げんとう)・『ファントムフリーク』。汝の為にこしらえた力だ。せめて、これを打破するまでは……死んでくれるなよ?」





霧の怪物と化したリヴルを危なげなく片付けた宗士郎だったが、その過程すらカイザルの掌の上だった。覚醒した宗士郎の力試しを行うカイザルの真意とは…………。


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