第十六話 決闘 中編
「んん゛っ、では次の決闘だ。彼女若くして王国騎士団副団長に登り詰めた――」
咳払いしたティグレがそこで言葉を切ると、甲冑を着た犬人族の騎士が前に進み出た。
「コムギ・ホンディエです。貴方に助けて貰ったツムギの姉になります」
慇懃な礼の後、礼儀正しく名乗りを上げる女騎士。凛々しい顔立ちと装備は、まさしく正統派の騎士といったところか。
「ツムギに姉がいたんだな。鳴神 宗士郎だ、よろしく」
「こちらこそ」
コムギの自己紹介に内心驚きつつ、宗士郎は右手を差し出す。彼女はにこやかに握手に応じてくれた。
「改めて、礼を言わせて下さい。妹を助けて頂き、本当に有り難う御座いました」
「礼なんていらない。ただの成り行きだしな。……だが、どうしてもというなら――」
宗士郎はコムギが腰に携えている長剣二本に視線をやり、
「騎士として、俺と戦ってくれ。副団長の剣技、ぜひこの目で確かめてみたい」
「……ふふ。実は私も、ツムギから聞いて気になっていたんです。妹を救った剣を」
交わしていた手を離し、双方それぞれ挑戦的な笑みを浮かべた。
「(剣だこからして、相当の実力者。久々に血が騒いできたぜ)」
宗士郎は対峙して肌身に感じ取っていた。コムギの、剣士として力量を。
剣の道を修めた者との真剣勝負は優に久しい。家族や門下生との試合を除けば、実に三年ぶりである。故に同じ剣士として、内で昂ぶる興奮を抑える事などできよう筈もない。
それはコムギも同様であった。
「いや……」
「ちょっと……」
「「――待った!」」
だがそこで、何者かが二人の昂ぶりに水を差した。彼等は宗士郎とコムギが良く知る人物達であり、各々の前に鼻息荒く立ち塞がった。
「宗士郎! そのお姉さんとは俺にやらせてくれッ!」
「はぁ?」
「コムギよ! お前ズルいぞッ! オレは鳴神 宗士郎と一戦交えたいというに!!」
「えぇ……」
そう、響とティグレである。
二人共お目当ての相手を指差し、個人的な感情と謎の意欲を真っ向より述べ始める。宗士郎とコムギはほとほと呆れ果てた。
「響……綺麗な人ってのは分かるが、そのだらしない顔をやめろ。目的はなんだ?」
「恥ずかしながら性欲だ!」
「本っ当に恥ずかしいなっ!?」
「全くだよ」
「全くだね」
「全くね」
「確かに」
「救いようのない屑じゃな」
「なんでだ!? 自分の欲に正直なだけなのに!」
柚子葉やみなもを始めとした、女性陣による非難と罵倒が響に襲い掛かった。既に諦めモードと入りつつある。本音を聞いたコムギは背筋に悪寒が走るのを感じつつも、ティグレの言葉を待っていた。
「ほれ、そこの変態はお前を指名しているではないか。なぁ、良かろう? 奴の鼻っ柱をへし折る意味もかねて奴とは戦いたいんだッ!」
「えぇと……鳴神殿の実力を測るなら、私以上の適任はいないですよね?」
「ええいっ、まだるっこしい! オレは国王だぞ!! 臣下ならば素直に従えぃ!!」
「それを持ち出すのは卑怯ではないですか!?」
私情に職権乱用。そしてパワハラ。まさしく愚王。王としてあるまじき言動に、コムギは響と同様に酷く嘆いた。
「(国に仕える身ってのは大変なんだな……)」
「(あのような方も同行者にしているとは……日々の苦労が窺えるようです)」
気苦労の絶えぬ身内がいて大変だと、宗士郎とコムギはしみじみと頷き合っていた。
そんな混沌とした空気の中、重臣であるユズリがティグレの前に立った。
「我が王、いい加減にして下さい。国王ならば国王らしく、同盟を組む為に必要な測定に私情を混じえないように」
「五月蠅いぞ! ユズ――」
「先日の後処理……」
「うぐっ」
そのワードを聞いた途端、突然ティグレが言葉に詰まった。
「どこぞの誰か様は、ご自分の立場も忘れて魔物の出現地へと赴き……あまつさえ、その時の後処理をほったらかしにしたそうですが……」
「むぅ、それは今朝やっただろう!?」
「あぁっ……今後も同じような事が無ければ良いのですが」
膝を折り、よよよ……と目元にハンカチを当てるユズリ。その慟哭を体現するかのように、背中の鷹翼も心なしか萎れている。
「ああもうっ、分かった!? コムギッ!!」
「はいぃ!」
ユズリの心の叫びが通じたのか、ティグレは願望を振り切るように声を荒げ、コムギの肩をガシッと掴んだ。そして、野獣のような眼を向けてお願いをした。
「もしも、もしもだ……このまま我が陣営が無様に連敗を重ねるようであれば、お前の今月の給金は半分となる…………この意味が解るな?」
「は、はひぃ! このコムギ・ホンディエ! 全力で使命を全うしますぅ!!」
コムギはティグレに対して、鬼気迫る敬礼をして見せた。それは上司への懇願なのか、給金への祈りだったのかは定かではない。
両陣営共に話が付いたところで、コムギと相対した宗士郎は虚空をその掌中に収めた。
「刀剣召喚」
「それが貴方の力ですか、見たところ剣を創る力のようですが……ん?」
どこからともなく現出した一振りの刀を構えると、コムギがおかしな点に気付く。
「刃が、ない……? 私にはそれで十分、という事でしょうか」
「そう殺気立たないでくれ。これは実験みたいなものだ。戦いに支障はない」
「……分かりました」
納得いかないなりにも一応の了承を返したコムギが、腰の長剣の一つをゆっくりと抜き放ち中段に構えた。
「えーこれよりぃ、コムギ・ホンディエと鳴神 宗士郎の決闘を始めるぅ! では……始め!」
両者の準備が整ったのを見計らい、離れた位置にいるティグレが少々投げやりに合図を叫び、決闘が開始した。
「…………」
「…………」
開始したにも関わらず、剣を構えた二人は互いを睨んだまま動かない。相手の出方を見極めているのだ。
普段の宗士郎ならば、戦闘中常に思考しながら刀を振るう。しかし、今はその素振りすら見られない。宗士郎の戦闘スタイルを熟知している柚子葉達は、沈黙を保ちつつも疑問を抱いていた。
両者の間に張り詰める重苦しい空気に痺れを切らしたのか、やがてコムギが時計回りに円を描くようにすり足で移動を開始した。その目は宗士郎の一挙手一投足に細心の注意を払っている。
「っ!」
周囲が固唾を飲む最中、遂に動きがあった。それは攻める機会を窺っていたコムギではなく――むしろ、微動だにしなかった宗士郎だった。
一瞬の加速の後、一足飛びにコムギの懐に飛び込び、袈裟懸けに白刃を振りかざす。
「くっ――!?」
意表を突かれたコムギは避けられない事を悟ると、刃の軌道に合わせて剣を寝かせて流そうとした。
次の瞬間――
キンッ!!
「えっ……?」
予想外の音がコムギの鼓膜を撫でた。同時に視界から何かが見切れていく。その物体は風切り音を響かせ、地面に容易く突き刺さった。
「私の剣がっ――かっは!?」
それが斬り飛ばされた剣の一部と知るや否や、コムギの腹部に重い衝撃が走った。目線を下ろせば、宗士郎から繰り出された蹴りが突き刺さっている。
「余所見とは余裕だな」
「っ……はぁああああ!!」
衝撃で後退ったコムギが負けじと、残った刃で宗士郎に斬りかかった。
しかし、その度々に刀の餌食となり――やがて、ほとんどの刀身が姿を消していた。
「ど、どうして刃もないのに斬れるんですかっ……!」
「種明かしすれば、俺の異能は『良く斬れる剣を創り出す力』だからだ」
「だから、刃がなくとも同じだと…………?」
「試してみた結果、こうなってしまったんだからそうなんだろう」
宗士郎が告げた言葉に、コムギは有り得ないとばかりに歯嚙みする。
先程宗士郎が口にした通り、これは実験だ。
昨晩の就寝前に、宗士郎はこれまでの戦いを振り返り、自身の異能力が一体どういう力なのかを今一度考え直した。そしてある答えに辿り着き、それを検証する為に刃のない刀で数合斬り結んだのだ。
「そんなっ、刃もないのに斬れるなんて……鳴神殿の力の本質は〝剣を創る〟事にあらず、という事ですか……!?」
「そう、かもしれないな」
刀に視線を落とし、宗士郎自身も不思議に思う。
「(コムギが問い掛けた命題の答えは、俺自身が後にも先にも常に探し求めているものだ)」
刃のない刀で斬るのは、まず不可能。
それこそ、神業や魔法の類でもない限りだ。加えて、想いの強さで切れ味が増したり、斬った者の動きを封印する芸当など、普通に考えれば異常だ。
異能力だから……神が与えた力だから……と、宗士郎は自ずと結論付けていたが、ようやく巡ってきた進化の岐路に気付けた。
否、ただ今まで気付いていなかっただけかもしれない。
「(アリスティアが俺の異能に掛けた、複数の封印。つまり、今扱っているのは本来持つ力の断片、もしく変質する前のものという事だろう。だとすれば、俺の力は奥深くに眠ったまま……)」
神に授かった強大な力が封印によって、今の形を取っている。経験上、精神の成長と異能力の扱いに慣れる程に封印が解かれていくようだが、全て解放した日にはどのような変化が待っているのか。
力を得て心躍ると同時に、少しずつ変貌していく己自身。宗士郎は微かながらも恐怖を抱かずにはいられない。その証拠が、段階を踏んで変色する髪だ。
「(胡坐をかいてるだけじゃ駄目なんだ。楓さんや桜庭だって前に進もうとしている。なら俺もカイザルと戦うまでに、少しずつ引き出ないと……)」
「――ちょっと聞いてますか!」
そう結論付けたところで、コムギの声が宗士郎の耳に飛び込んできた。彼女は使い物にならなくなった長剣を鞘に戻して、戦いの場から遠ざけていた。
「済まない。コムギさんが言った本質について考えていた。で、決闘は続行で良いんだな?」
「当たり前です。私も今月の給金がかかっているので……」
コムギは自身の置かれた切実な現状を漏らすと、腰に差していたもう片方の長剣を抜き放った。
「そろそろ本気でいかせて頂きます」
「へぇ……!」
太陽の下にその姿を晒した刀身の美しさに、宗士郎は身震いした。
鋼のような芯を包み込む、水晶の如く透き通った刃。陽の光に反射して、得も言われぬ輝きを放っている。
「魔剣レーヴァテイン。タァルヴさんに打ってもらった私専用の武器です」
「材料はミスリルを中心としたものじゃが、魔力を込める事で強度と形が変わる、ワシ自慢の一品じゃ」
治療を終えたタァルヴが日本から来た宗士郎達へ自慢げに語る。
「だから鳴神殿も実験と言わずに、本気の得物を出して下さい。そんなもので魔剣を斬り結べる筈がないんですから」
「凄い自信だな……よし」
挑発に乗り、宗士郎は刃のない刀を虚空へ消し、新たに刀を創生して引き抜く。彼女のお望み通り、鋭い刃の刀だ。それを見るなり、コムギの口角が少し吊り上がった。
「では…………」
「改めて、お相手願おうかッ――!」
双方弾き出されるように肉薄し、互いの間合いに入り込んだ。
「レーヴァテイン! 我が内に眠る魔力を喰らい、真の姿を現せ!」
コムギの身体から迸った真紅の魔力が、ミスリルの刃に吸収され刀身を紅く染めていく。次の瞬間に形成されたのは、マグマのように紅い焔刃だ。
宗士郎は臆する事なく、真っ向から刃を重ねる。
「――っ!! 流石魔剣。俺の一刀を難なく防ぐなんてな!」
「私こそ、驚きました……! まさか、レーヴァテインの焔に耐えるとは!」
続く鍔迫り合い。
魔剣レーヴァテインから放出される焔と高熱が、宗士郎の刀身を熱し肌身を焦がす。それから何度も打ち合い、互いの肌を刃が撫でては血が流れ出る。
その剣戟は幾重にも重なれば重なる程、速度に威力、鋭さが増している事を、二人は理解していた。それが、自身と対等に渡り合う強者が居てこそ、だとも。
全力強化とまではいかないが、宗士郎が闘氣法で身体強化していても、彼女の攻防は衰えない。それほど、互いの剣の腕は拮抗し合っていた。
ならば、勝敗を左右するのは、各々が繰り出す技の冴えに相違ない。
「焔・旋風刃ッ!」
「概閃斬ッ!!」
二人が距離を取った瞬間、互いが持つ必殺技が激突した。
魔剣から放たれる真紅の竜巻と不可視の斬撃が、まるで鍔迫り合いでもするかのように火花を散らす。
僅かに威力を上回ったのは、宗士郎の斬撃だった。剣圧が竜巻を吹き散らし、コムギの左腕を掠めていった。
「く、ぅぅっ……!?」
「はぁっ……はぁっ……」
たった数十秒の剣戟。しかしその激しさ故に、極度の疲労が二人の身体にのしかかってきていた。
宗士郎とコムギはどちらからともなく跳躍して間合いを取り、剣を構え直す。
このままでは埒が明かないと判断したのだろう。
外野の皆が悟る――次の一手で決まると。
そして、次の刹那…………同時に地を踏み締め、
「っぁあああああ! 豪炎刃ッ!!」
「うぉおおおおおっ! 封刃ッ!!」
一瞬の交錯――互いが繰り出した必殺剣が相手を捉えた。
互いに剣を振り抜いた状態で残心する。この場を満たす余りの緊張に、両陣営が刹那を永劫の時だと錯覚を起こしそうになった――その直後だった。
「うぐっ……!」
側腹部の肉がパックリと割れ、血しぶきが舞った。
先に膝を突いたのは、コムギ・ホンディエの方であった。
「っ、はぁっ……はぁっ……!」
遅れて、宗士郎が刀を杖代わりに地面に突き刺す。上気した頬を、赤い血がダラリと垂れている。
怪我の度合。先に屈した順番を取っても、勝者は誰の目から見ても明らかだった。
「ま、参りまし、たっ…………」
コムギは潔く負けを認めた。迸る焔が魔剣から消失しているのを見て、悔しげに唇を噛んだ。しかし、負けたにもかかわらず、その表情は清々しさが溢れていた。
「うむ……勝者、鳴神 宗士郎!!」
コムギの降参を聞き届けた茉心が勝者の名を呼ぶと、宗士郎は亀が歩くような速度でコムギの傍に向かった。
「………ギリギリだったよ、コムギさん」
「っ、良く言いますよ……レーヴァテインの焔を消すなんて、信じられない芸当してみせた癖に」
華奢な肩を抱き、地面にゆっくり寝かせれば、すぐさまコムギが悪態を吐く。
「治療を急げっ! コムギ、見事な戦いだったぞ」
勝敗を見届けたティグレが王国の治療師達が二人の下へ向かわせると、すぐに治療が始まった。流石のティグレも健闘した部下を非難したりはしなかった。
「お、おい宗士郎……今の技って」
その後、柚子葉達が宗士郎の周りに集まっては、響が最初に疑問を切り出してくる。
「ああ、牧原 静流の時に使った技だ。今までは使えなかったが、ようやく自分の物にできたみたいだ」
「勝負が決まるって時に……士郎ってば、本当に無茶するわよね」
「楓さんには言われたくないなぁ」
互いに皮肉の効いた言葉を交わすと、その場に温かい空気が満ちた。
「さてと、オレは最後に戦うと考えていたが、気が変わった――そこの変態!」
「って俺かよ!? えぇと、何ですか?」
宗士郎とコムギの熱い戦いに当てられたのか、気合十分のティグレが響に指差す。
「次はオレとお前でやるぞ。先程の素晴らしい戦いに身体を火照って仕方ないんだ」
「うっへ!? なんて気色悪い事言ってん――言ってるんですか!?」
なんと、ティグレが自分の決闘の相手に響を指名したのだ。妙に血走った目をしているので、響の背筋は絶賛凍えまくりだが。
「では、最後の戦いは宰相である私、ユズリ・ハーヴィヒトと貴方、という事になりますね」
「私は鳴神 宗士郎の妹、柚子葉って言います。その時はお手柔らかにお願いします」
「はい、こちらこそお手柔らかに」
対して、鳥人族のユズリと柚子葉は、にこやかに握手を交わしていた。
「では、我が王が決闘に出るという事で、このユズリが開始の合図を務めさせて頂きます」
数分後、準備の整った響とティグレが並び立つのを見計らい、ユズリが慇懃な礼をした。
「俺は沢渡 響。良い戦いにしようぜ、ガラント陛下!」
「うむ。ただの変態でない事を祈っている」
相対し合う二人は武器を持たなかった。響は爆弾だが、ティグレはガチガチの肉弾戦オンリーという事だろう。
「では、我が王ティグレ・ガラントと沢渡 響との決闘を始めます――始め!」
「ゆくぞ!!」
開始の合図が響くと同時に、ティグレが真っ向から突進。
さながらタンクローリーのような大きさと虎の威圧感を放つ巨体が、響に襲い掛かった。
響は爆弾付与ですかさず、足元を爆破し地面を大きく崩した。それにより発生した瓦礫を掴んで爆弾に変えると、ティグレに投げて起爆する。
閃光と激しい衝撃が大教練場に走る中、距離を取った響が爆破して作った穴を覗き込んだ。
「やったかっ――がぁ!?」
その直後、砂煙の中から伸びてきた太い腕が響の頭を引っ掴む。次第に砂煙が晴れると同時に出てきたのは、全身無傷のティグレだった。
「そういうのは言ってはいけない言葉だと習わなかったか?」
「は、なぁせッ!!」
「ヌゥ!!?」
拘束を逃れる為、響の両拳がティグレの片腕にヒット。その刹那、響の拳と腕の間で空気が爆発し弾ける。近接技――爆破拳打だ。
超至近距離の爆発に、頑丈なティグレも流石に耐え切れなかったのか、苦痛に顔を歪めた。それを好機と捉えた響は空気を爆ぜさせる拳を何度もティグレへと見舞う。
だが――
「虎獣化ァ!! フゥン!!」
「――――ッ!!?」
突如として、その姿を虎へと変化させたティグレの一撃が響にクリティカルヒットする。
余りにも突然過ぎる変化に、響は躱す事も防御する事もかなわず、体が地面を数回バウンドしてから沈黙した。
「ふぅ……オレにこの技を使わせた事は褒めてやろう。神天狐、判定は?」
「うぅむ…………こりゃあ、駄目じゃな。完全に伸びておるわ。勝者、ティグレ・ガラント」
先程まで騒がし過ぎたというのに、今では場を静寂が満たしていた。それ程に、ティグレ・ガラントという男は強く圧倒的だったのだ。
「ただの身体強化じゃないな…………身体を獣に変える事で全ての力を底上げするのか」
「そういう事だ、鳴神 宗士郎。できれば、お前とやり合いたかったが、仕方あるまい。沢渡 響を早急に治療しろ! 骨が数本折れている筈だからな」
「ならば、吾輩も治療に当たるとしようか」
いつの間にか元の姿へと戻ったティグレが頷き、指示を出す。茉心も響の治療に当たり、響とティグレの決闘は開始一分以内に片が付いたのだった。
宗士郎と犬人族のコムギが繰り広げた熱き戦いに触発されたティグレの戦いは、異能力者である響が完敗するほどの強さだった。
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