第五章 史実
第五章 史実
001
「こっちだ」
牢屋から出された僕達が案内されたのは、この国で一番偉い人、すなわち国王の前だった。
「頭が高い」
「あぁ、その必要はない、楽にしてくれ」
「ですが…」
失礼しましたーーと、甲冑は後ろに下がる。
「いきなりで悪かったな、なんでもこちらの騎士がいきなり君達を包囲したと言うではないか」
まずはこちらの非礼を詫びさせてくれ ーー と、国王は席を立ち頭を下げた。後ろの甲冑(騎士と呼ぶらしい)がざわついた気がするが、それはいいだろう。
「いや、こちらこそすまなかった。後の騒動は全てこちら側の責任だ。本当にすまなかった」
僕は頭を下げた、不満そうにそっぽを向いているルッカが見えた。お前のせいだろうが。
「いや、そのことなら大丈夫だ、というより、そのことで話があるのだ」
君達はいったい何者だ?ーーと、あの時と同じことを聞かれた。
002
「いや、聞き方が悪かったな」
僕達がどう答えるか迷っていると、国王が言う。
「君達が使うその力、もしや魔法ではないか?」
なんだ、魔法のことか。いや、おかしくないか?魔法なんて誰だって使える。わざわざ取り上げる問題でもないだろう。
「いや、そうでもないぞ。なにせ魔法を使える人間はもう存在しないはずなのだ」
どういうことだ?存在しない?
いや、違う。もう存在しないはずと言った。
つまり、かつては存在していて、もういなくなったということか?
「うむ。魔法を使えるのはかつて存在した古代人だけだ」
まだわからないぞ。僕達は古代人じゃない、今を生きている。現代を生きている。
「君達はどこから来たのだ?」
「トリカゴ…いや、ドームから来た」
「ふむ。やはりそうか…」
騎士達がざわつく。
003
「君達に少し昔話をしよう。長くなるから覚悟してくれ。
「おっと、自己紹介がまだだったな。私はリアノ王国国王、ガルドス・リアノ・オルバード1世だ。
「時は古代、古の時代。そこには魔法を扱う古代人と魔族が存在していた。
「その二種族は常に争っていた。
「魔族を率いる魔王は闇の力を
「人間を率いる勇者は光の力を備えていたという。
「戦争が終わりを迎える頃、ついに勇者達は魔王および魔族の封印に成功する。
「しかし、同時に勇者達も力尽きてしまう。
「だが戦いは続いていた。
「魔族の使役する魔物達がいたのだ。
「しかし、古代人には抗う術がなかった。
「古代人の殆どが戦争に散り、残った者だけで戦っては滅びることが目に見えていた。
「そこで、古代人は逃げることにした。隠れることにした。
「自らを捕らえるトリカゴの中に…」
004
つまり、僕達はその古代人の生き残りということか。
「うむ。そうなるな」
………
「なぁ、なんか…すごくね?」
再びの語彙力低下を見せたのはユウガだった。
「うん、壮大過ぎて逆にわからなかった」
ルッカはそれ以前の問題だった。
「僕達は逃げ延びた古代人の子孫だということだ」
「…ほへー」
なんだそれは。
「だって、なんか実感がわかないっていうか、私達は今こうして今を生きてるわけでしょ?だったら古代人とか言われても、なんか…ほへーって感じ」
確かにそうだ。僕達は今を生きている。古代人の末裔とか、どうでもいい話だ。
「悪いが、そういうわけにはいかんのだ」
と、国王。
「滅びたとされる古代人が生きていたとなると、我々には一大事なのだ」
その力を悪用されかねん ーー と。
「そこでだ、君達にはギルドへ加入してもらいたい」
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