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桜舞う、雨の如く
舞い散る桜も、祖母の急すぎる死を惜しんでくれているかのよう。
そんなのは残された者の勝手な感傷よね。
貴女がいつまでも泣いていたら、お祖母様も心残りよ…なんて、みんな励ましてくれたけど。
しっかりしなきゃいけないのも、わかっている。
わかってはいるんだけど…。
唯一の肉親である祖母が亡くなった今、どうしようもない悲しみと孤独感に、私は打ちのめされていた。
両親が亡くなった時も、そのすぐ後に祖父が亡くなった時も、同じように悲しかったし辛かった。
だけど今、その比ではない寂しさ、心許なさに絶望すらしていた。
——いっそ、私も……。
庭から吹き込んでくる桜の花びらをぼんやり見つめながら、ふとそんな事を考えてしまう。
…その時だった。
『しずか』
誰かに呼ばれた気がしたのは。
「…誰?」
そう呼んでくれる人は、みな亡くなってしまったのに。
振り向いても、やはり誰もいない。
空耳だったのか。
それとも孤独な私の心が生んだ幻聴か。
そう、思ったのだけど…。
『しずか』
今度は先程よりもはっきりと聞こえ…。
そして私は舞い散る桜の花びらに包まれた。