戒め
「して、カフスよ、なんでそんなに大きくなったんじゃ?儂の研究では、人の生命力を浴びても、成長は促進されぬはずなのじゃがな、まあまだ3歳のお主に聞いてもわからんか。フォッフォッフォッ」
「いや、自分で使って、成長したんだよ。」
「……………は?今、自分で使ったと言ったの?しかも生命力で儂の技を壊すし、しかもしかも3歳でなんでそんなに喋れるんじゃ?もう儂の数十年の常識がみるみる壊れていくわい、フォッフォッフォッ」
「いや、まず自分で使えるようになったのは咄嗟の判断で、使い方は、ん〜勘かな?で、喋れるのはよくわかんない。」
「まあよい、スクスク健康に育ってくれればそれで良いからのフォッフォッフォッ」
なんで俺が正直に言わなかったかと言えば、ゴッドサポートに止められていたからだ。
ゴッドサポートいわく、いらぬ混乱を招くようになるのと、下手に狙われたり、祭り上げられたりしたら、面倒くさいというのもあるらしい。
「今どれくらい使えるのじゃ?生命力は」
「まだ全然だよ。」
「なら一回身体に巡らせてみなさい、儂がみてやろう。」
「わかった」
そう言って座り、目を瞑って、生命力を感じる。
「ふむ、もうよいぞ」
「どう?」
「まあ、当然のことじゃが、それは操っておるというよりは、漏らしておると言った方が適切かのう。よいか、生命力を操る事は初歩中の初歩でありながら、様々なことに通じる、極意でもあるのじゃ。操る時に、身体の血管一本一本、隅々に行き渡るように意識するんじゃ」
「わかった。やってみる」
言われた通り、隅々に、血管一本一本を感じながら満遍なく流していく。
そして瞑っていた目を覚ます。
ふと、身体を見ると、10歳くらいになっている。
「もうそれ以上はやめておいた方がいいじゃろうな。成長させるのは」
「え?生命力を操ると成長するんじゃないの?」
「フォッフォッフォッそんなわけないじゃろう、操り方があるんじゃよ。全身に満遍なく流すと、成長の余地があるものは、成長するんじゃ。大人になってからそれをすると、己の力を繊細に操れたり、力の大きい物になると、己の格をあげることも出来るのじゃ、つまり、人間から、仙人、賢人、聖人、半神人、そしてこの世の根本の真理を体得した人にして神なるもの、人神となるものもおるそうじゃ。じゃが、全身に満遍なく流すのでは無く、一定の場所に集め、練り続ければ、濃く、そして素早く流せるようになるのじゃ、言ってみれば身体に己の力を馴染ませるわけじゃな、それをしてみなさい。あと、成長をしすぎるいけないというのは、時に消されるからというのが理由じゃ。」
「どういうこと?時に消されるって」
「う〜ん、これはあくまで伝承なのじゃがな、昔々のことよ、幼き心に釣り合わぬ大きな力を持った男が、自らを強化するため、身体の成長を促進させてついには万物の頂点に立った。世界の根本を己の物にしようとした男の元に、 “時”がやってきた。激しい戦いの末に、その男は永遠の牢獄、時空の狭間に囚われたという。
簡単にいうと、そういう話じゃが、戒めとして、あまり成長を促進するのはよくないらしいんじゃよ。」
ほぇ〜、そんな事がねえ
「とまあ、話は長くなったが、これからは、意識して練る事から始めてみなさい。」
「うん、わかった、ジジ、、じゃなくておじいちゃん」
「フォッフォッフォッ、頑張るんじゃぞ、明日から儂が教えてやるから頑張るんじゃぞ。」
ジジイが臭えのは嫌だが、教えてもらうにはしょうがないか。
こうして、俺の第2の人生が本当の意味で始まった気がした