幕を閉じた一つの現実
秦之幻想物語の第3話です。
小説って書きはじめればあっという間なんですがね。
始めるまでがなんとも。
僕は周りが紫色のどろどろしたものに囲まれている、気味の悪い空間に立っていた。
周囲から大量に視線を感じる。誰も見えないのに。
こんなところに5分でもいたら、気が狂ってしまいそうだ。
にわかに、声が聞こえた。「今日、お邪魔しに行くわね。」と。
そこで夢は途切れ、僕は目を覚ました。
体を半分起こし周りを見渡すが、自分の部屋というわけではない。
寝て起きたら夢落ち...という訳でもなく、やはり僕は幻想郷にいるようだ。
じゃあ、さっきの夢はなんだろうか。夢にしては生々しかったし、しっかりと覚えている。
「今日、お邪魔しに行くわね。」誰が発したのかも分からない、なんだか不吉な声。
「おや、もう起きていたか。意外と朝には強いのだな。」
今度はカリスマ性あふれてそうな声が聞こえた(なんじゃそりゃ)。
部屋の入り口を見ると、太子さん(豊聡耳神子)が立っていた。
僕よりも早く起きていたようで、既に着替えも終えている。
「あ、おはようございます。」
「ああ、おはよう。よく眠れたか?」
「はい。おかげさまで(変な夢見たけど)。」
「よく眠れたといっても、変な夢をみたようだがな。」
「え?」
心を読まれているのか?いったい、なんなんだ。
「昨日は説明を省いてしまったからな。驚いても仕方がない。
私は相手の”十の欲”を見ることができる。欲には、その者の本質が現れるのだ。
だから、私は人の心や過去、やろうと思えば未来だって読むことができる。」
僕は啞然とした。
いくら「幻想郷」といえど、ぶっ飛びすぎだ。
「幻想郷ではそう珍しくもないぞ。能力を持つものは、他にもたくさんいる。」
「へえ~。」
「お前の夢を見た感じだと、どうやらやつが来るみたいだな。」
「やつ?」
「まあ、会ってからのお楽しみだな。そんなことより、服を用意したから
早く着替えてしまいなさい。」
「ああ、何から何までありがとうございます。」
「なに、幻想入りしたばかりの者の世話は幻想郷に住む者の役目だからな。
着換えを済ましたら、食堂にきてくれ。」
「分かりました。」
「やつ」がなんなのか気になったが、とりあえず着替えることにした。
用意してある服はどうやら和服のようだ。サイズもぴったり。
着替えを終えて移動しようとした僕は、突然空気が変わるのを感じた。
次の瞬間、目の前の空間に切れ目が入りそこが開いたと思うと、切れ目から少女が現れた。
「!?!?!?」
頭にはみたことのない形の白い帽子(ナイトキャップにも見える)をかぶり、
一枚の白いドレスの上に紫色で勾玉などの模様がはいったエプロンのようなものを着ている。
これまた言葉で表すと随分おかしな格好だ。
彼女は僕を見ると、とても不吉に微笑んだ。
「あなたが大師君で間違い無いわね?」
「...?は、はい」
聞き覚えのある不吉な声。
「あら、名乗るのを忘れていたわ。私は八雲 紫
とある妖怪よ。」
「あなたが太子さんの言っていた紫さん?
もしかして夢で聞こえたのはあなたの声ですか?」
「さあ?どうかしらねぇ」
彼女は再び不吉に微笑んだ。なんだかとっても不吉だ。
「あなたは何故自分が幻想郷に来たか分かるかしら?」
「ここに来た理由?目が覚めたいつの間にかいたので...全く分かりません。」
「私があなたをここに連れてきたと言ったらあなたはどうする?」
「!!!!」
様々な疑問が頭の中を駆け巡る。
まず聞くべきは連れて来られた理由であろう。
「なぜ僕を?」
「うーん。聞いてから後悔しないでね。」
「後悔?どういうことです?」
「あなたはむこうの世界で...死んだのよ。」
不吉な言葉だった。
いかがだったでしょうか。
衝撃の事実発覚です。いやまあ、最初からそんな雰囲気出てましたがね。
これからはもうちょっとやる気出して頑張りたいです。