ようこそ幻想郷へ
秦之幻想物語の第2話(正しくは第一章)です。
なんとも古風な(もしかしたら、それが当たり前なのかもしれない)
都の大通りらしき場所を歩く高校生が一人。
「近くで見ると、随分大きいなぁ...」
思わずそう呟いた。寺院のようにも見えるが、なんだか寺にしては装飾が派手派手しい気がする。
金が多く使われていそうな、金ぴかで巨大な門。その先には広大な敷地が広がっていた。
敷地には数々のお堂があるが、なかでも目を引くのは、真ん中に建っている巨大な本堂だ。
とにかく豪華でなんだか仏教らしくない。中国の別の宗教だろうか。
などと考えていると、誰かの声が聞こえることに気づいた。
本堂から聞こえる。あいにく、本堂正面の扉はしまっている。
側面に円形の窓があったので、こっそりと覗くと、
本堂の中には1000人にも及ぶほどの人々が綺麗に並び、正座していた。
なんとも壮観だ。どの人も袈裟(?)を身に着け、熱心に話を聞いている。
いわゆる、修行の身なのだろうか。
本堂の一番奥には一人の少女がいる。どうやら声の主は彼女のようだ。
髪は少し茶色っぽい黄色をしていて、ヘッドホンのような耳あてをしている。
服装はというと、ドレスのような袈裟をゆったりと身に着け、
腰の帯からは刀のようなものをぶらさげている。
言葉で表すとなんともコスプレチックな姿をしているが実際に見ると、
ほとんど違和感がなく、レイヤー(コスプレイヤー)には見えない。
「焦ってはいけません。己を信じるのです。
皆も知っている通り、道を直接教えることはできません。
自ら歩み寄り、学ぶしかないのです。このことを念頭に置いて修行に励みなさい。」
彼女の言葉には、不思議な力があった。聴く者を惹きつける、不思議な力が。
自分とはそれほど歳は離れていなそうだが、こんなにたくさんの人を率いているとは、たいしたものだ。
彼女が話を終えると、修行者たちは一斉に立ち上がり、息を合わせて感謝の言葉を述べた。
なんと一糸乱れぬ動きだろうか。修行者たちは本堂から出て別のお堂に移動していった。
幸か不幸か大師の存在には気付かなかったようだ。
だが、どうしたものか。これから一体どうすればいいのだろうか。
あの少女に話しかけるという案もあるが、何を説明したらいいのか...
「トラックにひかれたと思ったらここにいました。」なんて言っても意味不明だろう。
トラックという言葉が通じるのかすらもまず怪しい。言語は日本語のようで安心したが。
記憶がないということで話を通すのはどうだろうか?いや、定番にもほどがある。
「いちかばちか行ってみるか?」なんとなく自分に呟いた。
「速く来たらどうだい?」
「!?」
僕は驚愕した。今のはあの少女の声だ。僕に言っているのか?最初から僕の存在に気付いていたのか?
「驚いてないで、さっさと出てこないか?」
「....分かりました。」
少女は、僕が目の前に来るなり、じっと僕の目を見た。
目の置き所に困り僕は目を泳がせた。数秒間の沈黙の後、
「君はなかなか興味深いな」
という言葉が聞こえた。
「え?」
「まあ、聞きたいことは山ほどあるだろうが、場所を変えよう。ついてきたまえ。」
「あ、はい。」
少女は本堂のさらに奥の通路を通った和室へ僕を案内した。
僕は座布団に座らせてもらい、少女も向かい側の座布団に座った。
「では...申し遅れたな。私は豊聡耳神子。
この道場の指導者である。」
とよさとみみ...?呼びにくい名前だな。
「太子とでも呼んでくれ。」
「あ、分かりました...」
心がよまれてる?偶然だろうか。
「僕は秦大師といいます。えっと...」
「君は外の世界から来たのだろう?」
「!!!」
「なに、ここではそれほど珍しいことではない。」
「ここは、一体どこなんですか?」
「幻想郷...現世で非常識とされているものが住まう地だ。」
幻想郷とは、日本の本土からは「常識と非常識を分ける論理の結界」で隔離された土地である。
そのため幻想郷には、現世では存在を否定されている妖怪や神などが暮らしているようだ。
(もちろん人間もいる)
僕が目を覚ましたこの古都は、豊聡耳神子(これからは太子さんと呼ぶか...)がつくりあげた、
仙界という空間だそうだ。(この少女何者だ...)
今、僕がいる道場は道教を信じるものたちが修行をするための場所らしい。
太子さんの話によると、外の世界の生物が幻想郷に入ってくること(幻想入りという)
はそれほど珍しくないようだ。
「幻想入りにはいくつかのパターンが存在する。
一つ目は、その生物の存在が否定されて幻想の存在となること。
二つ目は、本人が幻想郷に入りたいと強く思いすぎた結果、論理の結界を飛び越えてしまうこと。
三つ目は、結界が破壊されること。
何か身に覚えはないか?」
僕は考えた。まず一つ目...人間である僕が存在を否定されるなんてことはまずありえないだろう。
そう信じたい。次に二つ目、行きたいどころか幻想郷の存在を知らないので除外。
最後は...この前カップを落として割った記憶があるが、関係ないであろう。というか結界ってなんすか。
「特にないと思いますが...」
「そうか。では...考えにくいが...最近、生活していて何か違和感があったりは?」
違和感?あっただろうか?そのとき、違和感と思わしき記憶が蘇ってきた。
「何度か視線を感じたことがあります。」
確か学校帰りだったか。いつものように家への道を歩いていると、突然視線を感じたのだ。
人のものではないような、いささか気味の悪い感じがしたのだ。
「なるほど...紫の仕業である可能性が増えたな。」
「ゆかり?」
その言葉を聞いてふりかけが思い浮かんだ。いや、絶対違うか。
そのあと色々と話があって、「今すぐに帰すことは難しいので、今日ぐらいはうちに泊めてやろう」
ということになった。
なんでも幻想入りのいざこざを担当している妖怪がいるのだが、
最近は姿を消したまま現れないのだとか。
正直怪しすぎるが、僕は納得しておくことにした。
話が終わったころには、もう、外は薄暗くなっていた。
太子さんは本堂にある和室の一つを貸してくれた。
「それでは、おやすみなさい。」
「あ、お、おやすみなさい...」
短い言葉を交わして、僕は眠りについた。
数々の驚きに疲れた僕は、異界であるにも関わらず、すぐに眠りに落ちてしまった。
読んでくれてありがとうございます!
いかがだったでしょうか?
期間が開いてしまいました。
なんだかやたら説明パートな気がしますね。
長ったらしい説明をする癖...なんとかせねば。
どうか、超超初心者の僕にアドバイスをくださると嬉しいです!