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その二:一期一会

 「女」の一件から、私は幽霊が見えるようになった。もしかしたら、ただ単に私の頭がおかしいのかもしれないが、見えてしまうものは見えてしまうのだ。私としては、なかなか否定などできない。

 

 道を歩けば、素知らぬ顔をした幽霊がたくさんいた。出来るだけ、幽霊とは目を合わせないように歩いた。目が合うと憑いてくるのだ。憑いて来られそうになった時は、腹に力をこめ「あっちに行け!」と怒鳴るように念じる。本当にしつこい奴には怒鳴る。

 これらの対処法は親に教えてもらった。父親の家系が見える家系だという事だった。

 そんなこんなやっていても、その当時の僕は小学生だ。友達とも遊ぶし、さぼりがちだが勉強もする。普通の小学生だ。

 今となっては懐かしいが、北京日本人学校に團伊玖磨さんが来てくれた時があった。鉄格子が嵌まった体育館で全校生徒が團さんの話を聞いていた。

 團さんは、北京日本人学校の校歌を作曲してくれた人だ。そして「ぞうさん」(だったけ?)の作詞か作曲をしていた人だ。

 團さんの、容姿と話の内容だが、忘れてしまった。ただ一つ覚えているのは、白髪の温和そうなオジサンだったと思う。

 そんな、團さんを見ていたのは生きている人だけではなかった。体育館には、いつもの倍の人数の幽霊が来ていた。彼らは空中に浮かんでおり、生徒と同じように團さんの話を聞いていた。

 私は「変わったこともあるなあ」くらいにしか思っていなかった。


 翌日だか翌々日に、上海日本人学校を訪れようとしていた団伊玖磨氏は死んでしまった。たしか、心臓だったと思う。

 その知らせを、先生の口から聞いた時は信じられなかった。日本人学校では、追悼のために全校生徒で校歌を合唱した。そのとき、幽霊になった團伊玖摩氏が来た。歌う僕らを見て、笑っていた。僕は、團伊玖摩氏が死んだのを認識した。

 今思うと、團伊玖摩氏に憑いてた幽霊達はお迎えだったのだろう。

 

 幸運なことにそれまで私は、顔を知った人が死ぬという状況に出会ったことが無かったので初めて死に触れたわけです。自分も死ぬことが分かってベッドの中で震えあがりました。


 さて次回の話ですが、母がお化けを見た話です。あまり面白い話ではありませんが、読んで頂ければ幸いです。

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