着信
かなり前に診断メーカーで貰ったお題で書きました。
拙い文です。
怖いお話お題は
『地蔵』
『着信』
『歩道橋』
歩道橋の脇にお地蔵様が鎮座している。
軽くお参りをし、前を横切ろうとしたその時、突然携帯が鳴った。
知らない番号だったが、出てみると何やら向こう側が騒がしい。
救急車の音が聞こえてきた辺りで、ようやく相手が口を開いた。
「歩道橋を使いなさい」
そう告げられて通話が切られてしまう。
不思議に思ったが、そうしているうちに渡ろうとしていた信号は変わってしまった。
仕方なく歩道橋を渡る。
中ほどまで来ると、何やら下が騒がしい事に気づく。
覗き込むと、刃物を持った男が次々と通行人を襲っているのが見えた。
慌ててしゃがみこみ、男から身を隠すと、再び携帯が着信を告げる。
いつの間にかマナーモードになっていたそれに出ると、
「もうすぐ男がそちらへ向かう。反対の方向へ逃げなさい」
それだけ告げて再び切られた。
電話の通り男のいた方向と反対側に進む。
階段にたどり着いた所で男が歩道橋に上がってくるのが見えた。
慌てて階段を駆け降りる。
降りる音で気づかれてしまうと思ったが、階段はなぜか音一つ響かせず、男もこちらに気づく様子はない。
無事に地上へと足をつけた時、正面から駆け寄って来た警官達に保護されながら、思った。
(あれはお地蔵様からの電話だったのかもしれない)
完