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英雄と魔王

裕翔達は、ダークエルフの少女と別れた後、しばらく魔王城の門の前で立っていた。



「……取り敢えず、姿を戻そうか」


「そうだね」



裕翔と瑠樺は姿をこの世界の姿に戻す。

裕翔は長い髪を鬱陶しそうに後ろでくくった。



「行くか。」



ふたりは魔王城の中へ入っていった。



魔王城の中はとても広くまよってしまいそうだ。掃除は隅々まで行き届いており、とても綺麗だ。



「前来た時、こんな軽装備じゃ無かったけどな。」


「んー。ならぼくがまもるのー。」


「おお、それは心強いな。」



祐翔はマーベラスの頭をポンポンと叩いた。

もし、第三者がここにいて、この3人をみたら、のんびりしているせいで、ここが魔王城の中だと全く思わないだろう。



「ここだね。確か。」



瑠樺が装飾がこれでもかとついている扉の前で止まり、躊躇いなく扉を開けた。




現在、お茶会を四人でしている。

祐翔、瑠樺、マーベラス、魔王の四人だ。



「まさか、力を奪われるなんてね。」


「ああ、とても予想外だったな。」


「あの半竜、許さん。」



祐翔たちと話しているのは、見た目マーベラス(人化)と同じくらいの少女だ。だがその正体は魔王で、かつて祐翔、瑠樺と戦った者だ。



「だったらさ、あの厄介な魔物を活性化させる能力はどうなった?」


「それも根こそぎ奪われたさ。それは嬉しいんだけど、そのほかの能力もほぼ奪われたし。」



むすーっと魔王が頬を膨らませる。やはり、見た目相応の少女にしか見えない。魔王の見た目は金髪で赤褐色の目をしている。肌は浅黒く、一見人間にしか見えないが、頭にちっちゃい角がある、れっきとした魔族だ。



「えーっと、魔王ちゃん?」


「魔王ちゃんではない。ユフィだ。」


「ユフィ、人間嫌いは治ったの?」



実際、祐翔と瑠樺は魔王、ユフィを全ては封じなかった。封じたのは、力だけでユフィを人とした。当時のユフィは二十歳前後の姿をしていた。そして、とても人間嫌いだった。



「ああ、人間は好きになったぞ。あんなに旨い料理やら気持ちいい風呂やらあるからな」


「……瑠樺、ユフィはものに釣られやすいな。」ボソッ


「……思った」ボソッ



ユフィは、少し考えて裕翔と瑠樺に言った。



「力を奪った半竜を倒すためについて行ってもいいか?」



ユフィ曰く、奪われたとはいえ自分の力だったので奪った犯人の場所は大体の場所はわかるとのこと。そして、犯人は半人半竜の男だということである。



「はぁ。目的が変わったな。」


「まあ、良いんじゃない?どうせ、そいつを倒すのは決定事項だし。」


「ぼくは、ゆうとにぃとるかねぇがいいならいいよー」



相手が(元)魔王でも態度はあまり変わらない三人であった。

ユフィが嘘をついていないかは、マーベラスの能力でわかるので、マーベラスが何も言わないということは嘘はないという事だから、二人も安心している。



「うーん。今日は出発したくないな。ここに泊まってもいいか?」


「ユウトだったかな?お前、凄いな。私が居なくなっても泊まるどころか訪れる人もいないというのに。」


「こういう人だから。」



祐翔は基本的に呑気だ。

それにユフィは少し驚き、瑠樺は呆れる。マーベラスは、特に何も思わないが。



「食料は?」


「あるぞ。オークの肉やら、魚やら。酒もあるぞ。」


「おぉ、凄いな。」


「焼くか?」


「おう。」




魔王城の外に出た。魔物が来る可能性もあるので、瑠樺が匂いが広がらないように、結界を張った。

マーベラスは待ちきれないようでソワソワしている。



「じゃ、焼くぞ。」



ユフィが薪に手を触れると、薪が燃え始める。オークの肉と魚を棒に突き刺し、火にかざして焼いていく。オークの肉はとても柔らかく、ジューシーだ。あまり臭みはない。



「ほれ、マーベラス。」



ユフィが生肉をマーベラスに渡す。かなりでかい肉だったが、マーベラスは、ドラゴンなので人化していても食べる量は変わらない。そして、ドラゴンなので焼けてるかどうかは関係ない。

見た目少年なので、ギャップが凄い。



「マーベラス、凄いな。」


「あ、焼けたよ。これ。」


「サンキュ」



瑠樺が焼けた肉をとって、祐翔に渡す。祐翔もなかなか豪快にかぶりつく。瑠樺も焼けた肉をとって食べ始める。ユフィも豪快に食べている。



「うまいな。オークは。」


「よく考えたら魔王と仲良くなってる時点でおかしいな、いろいろと。」



祐翔がふと思ったことを言う。



「気にするな。」



魔王直々に気にするなと言われた、英雄。

瑠樺はもう既にいろいろ考えないようにしている。



「順応って怖いなぁ。」



ボソッっと瑠樺がつぶやいた。





「へぇ。お風呂もあるんだ。」


「凄いだろう、私が作ったんだぞ。」



ユフィが胸を張って自慢する。お風呂はとても広く、大浴場とも言える広さだ。魔王もお風呂は好きらしい。もちろんシャンプーとリンス、石鹸などなどは揃っている。

瑠樺とユフィが先に入り、マーベラスと祐翔が後に入る。



〜〜瑠樺とユフィ〜〜


着替えを置いて、浴場に入る。もう既にお湯は張ってあり、湯気がほわほわとでている。



「むー、ちっちゃくなったせいで髪が洗えん。」



ユフィが髪を洗おうとして手が届かないことが気になるようだ。瑠樺は苦笑して、ユフィの後ろにまわる。



「洗うよ。じっとしててね。」


「む。すまんな。」



瑠樺は慣れた手つきでユフィの頭を洗う。どう見てもユフィが年下に見えるが、これでも魔族だから、かなり長く生きている。

洗っている途中、ユフィが数度寝ようとしたので、瑠樺は笑って肩を揺さぶる。



「すまんな。どうも、身体に精神が引っ張られてしまうようだ。」


「しょうがないね。はい、終わったよ。」


「感謝する。ルカ」



ユフィは、改めて自分の体を見てため息をついた。



「どう見ても子供だな。」


「力奪われちゃったからね。」



お風呂の中でむーと頬を膨らませるユフィ。その頬を指でぷすっと押す瑠樺。

ほのぼのとした雰囲気で、二人はお風呂を終えた。



〜〜祐翔とマーベラス〜〜


マーベラスが入る前から眠そうなので、祐翔はマーベラスを引っ張って、座らせて体を洗う。



「むー。」


「寝るなよ。まだ寝るなよ。」



頭をわしゃわしゃと洗い、お湯でさっさと流し、お湯につからせる。マーベラスはやはり眠気はとれないようで、目を話すとちょっと沈んでいる。



「っと。危なっ。」


「ふぅー。」


「……さっさと上がった方がいいな。」



リラックスする暇もなく、祐翔はお風呂から上がり、マーベラスを拭いてやる。



「くーzzz…」


「寝たし。」



祐翔は寝たマーベラスに頑張って服を着させ、背中におぶって瑠樺たちがいる部屋に向かう。



「うー。そういえばマーベラスはドラゴンだしな重いな。」



ドラゴンをおぶえる祐翔も普通ではない。

とても平和に魔王城お泊まりは終わった

この世界では竜とドラゴンは同一ではない。

ドラゴンと竜の翼は似ているが、ドラゴンは四足歩行で竜は前足が小さいため、二足歩行。

ドラゴンの方がよりトカゲの見た目に近い。


半竜半人は、竜の翼を持った人間。半ドラゴンでもいいと思うかもしれないが、ゴロ悪い。







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