出立と再会
久々ですm(_ _)m
数日間で必需品を買い揃え、隣の国のコルシアに行く事になった。魔王の所に直接行かないのは、前に魔王封印をした際、装備を国々に預けたからだ。
「初心を思い出す。」
「裕翔に初心なんてあったかな?」
いたずらっぽく瑠樺は笑う。つられて、ココアも笑った。
裕翔は苦笑いになったが怒ることは無い。
「俺にもあるが。」
「へー」
明らかな棒読みで返事をされる。
裕翔は何も言わなくなった。
「ココア様、またしばらく旅をしてきます」
「また合う日まで元気でな。」
城の門近くにつき、ココアに別れを告げる。
「ユウト様、ルカ様ご武運をお祈りしております。」
ココアが深々と頭を下げる。
姿を変え、国を出て森を進む。道は覚えている。
今の姿は、裕翔が茶髪、赤褐色の目、ふわっとした雰囲気の青年。
瑠樺も似ている姿で、兄妹のようだ。
「装備集めんの面倒臭いな。幾つ預けたっけ?」
「確か六つの国に預けたね。あとは五つ。」
ココアと居た国はイシュラディア。そこで、封印を解いた。
その姿が一つ目の装備と数える。
「遠いし、走るか。」
「目立つでしょう。」
即答で裕翔の提案は却下される。2人は本気で走れば、馬並の速さを出せる。目立つのも当然だ。
「お、馬車はっけーん。」
前方に馬車が二台停まっている。
その前で、道の奥を見ながら行者たちが何かを話し合っていた。
「何かあったのですか?」
瑠樺が馬車の行者に、尋ねる。
行者は困った様子でこちらを見た。
「旅の方ですか。この先にドラゴンが1頭いるので、進めないのです。」
道の先を見ると、行者の言った通りに、黒いドラゴンが1頭寝そべっていた。
「そうなのですか。これで失礼します。」
瑠樺が冷や汗を浮かべ、裕翔の元に戻る。
「……あのさ。あのドラゴン見覚えがあるんだが。」
「……奇遇だね。私もだよ。」
互いにこそこそと話す。そして、裕翔と瑠樺は行者の見ていない隙に、ドラゴンの陰に入る。
ドラゴンが、2人を見つけ目を輝かせ何かを言おうとしたが、瞬時にその口を裕翔が無理やり閉じさせた。
「バカ。喋るな。目立つだろう。」
「ここでは駄目。どこか目立たない場所へ。」
ドラゴンが頷き、翼を広げた。行者達がどよめき、隠れた。
その隙に裕翔は先にドラゴンに乗り、瑠樺が乗るのを手伝う。
2人を乗せたドラゴンが空を飛ぶ。
「風が凄いな」
ジェットコースター並の風。急いで瑠樺が魔法を唱える。
「″天に咲く、魔法の花。求めるは静寂。ノクターン″」
ふっと風が止む。落ちないように力を入れていたのか、裕翔が前に転ぶ。
「忘れてた。ごめんネ。」
笑いながら、裕翔に瑠樺が謝る。裕翔が転んだ体勢からゆっくりと起き上がり、瑠樺をジトっとみる。
「全然、反省してないだろ」
「アハハ,キノセイダヨ。」
「棒読みだ」
「ソウカナー」
裕翔はしばらく瑠樺を睨んでいたが、諦めた様子で視線を地面に移す。
適当に開けた場所を指さして、ドラゴンに指示を出した。
ゆっくりと旋回し、地面に降り立つ。
音はしなかったので、魔法の効果が続いているのだろう。
『久しぶり。ルカねぇ、ユウトにぃ。』
だいぶ幼い口調を低めの声で話すのは、ドラゴンだ。ほとんど言葉を覚えたてなので、しょうがないだろう。
このドラゴンは1度目の魔王討伐の時、裕翔が拾って、育てた。
まだまだ子供だったので、餌を与えたらすぐに懐いたので、そのまま育てたら言葉を覚えていたのだ。
「マーベラス、なんでこんなところに居たんだ?」
「クリュウ城跡に居たんじゃないの?」
この黒いドラゴンの名前はマーベラス。裕翔がつけた。
クリュウ城跡は、はるか昔に滅んだ国の城だ。白い壁にドラゴンや龍の模様が彫ってある。とても遠くにある城跡。
呑気にマーベラスが答える。
『城跡にいても、他の子寝てるからひまだし、ルカねぇ達の気配がしたから。』
他の子とは、ドラゴン以外の動物や幻獣達だ。ドラゴンはマーベラスしかいない。
「……凄いな。俺達の気配がそんな遠くから分かるのか。」
「ちょっとしたストーカー?」
マーベラスの能力を知り、少し引いた。
「で、これからどうするんだ?」
『ついていく。』
「えー。目立つよー。」
マーベラスが付いて来る事に、裕翔と瑠樺は難色をあらわす。
やはり、目立つのが嫌いなのだ。
『マーベラスはね、色んな動物になれるよー。』
「そういえば、変身能力あったんだっけ?」
ドラゴンは魔法を使える。人間と違う魔法体系を持っていて、様々な魔法を扱う。敵にしたら厄介な相手。
ちなみに裕翔と瑠樺も特殊だ。
「人間になれるか?」
『あいあいさー。』
マーベラスが返事をする。しかし、この言葉をどこで覚えてきたのか分からない。
ドラゴンの身体か小さくなり、人の姿をとる。だが、腕や足、額に所々黒い鱗が見られる。
黒髪黒い猫目の10歳くらいの少年の姿だ。顔は整っており美少年。可愛い系なので美少女にも見える。
「少し鱗があるが、このくらい髪で隠せるか。」
『うまくなったんだよー』
「服は……これでいいか。」
白色のシャツに瑠璃色の羽織を着せ、ズボンをはかせる。ズボンはすこし丈が長かったので、瑠樺が縫った。シャツの袖は少し曲げる。
「これでいいよねー」
声の高さも変わり、どこから見ても普通の猫目の少年だ。
猫目は獣人の血が入っている人もいるので、珍しくはない。
裕翔と瑠樺はマーベラスにあわせ、姿を変えた。
裕翔は黒髪をうしろで括っている、少し茶色の目の青年に、瑠樺は茶色が少し混じった黒髪に猫目がちの黒目の少女に。
「ところで、ここ何処だ?」
「さあ?」
「マーベラスもしらない。」
最初の問題が立ち塞がった。
・・・道がわからないと言う問題に。
ドラゴンの名前で悩みました。シュバルツかネロで。
何故かマーベラスにw




