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永遠の姉妹  作者: hy
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第11話『陵辱の夜』

目を覚ました時、知永子はパイプベッドに四股を拘束されていた。ろくな家具もないがらんとした部屋で、腕組みをした知香子が、こちらを見下ろしている。

「…こ、ここは……どこ?」

「おはよう。やっと目を覚ましたわね、お姉ちゃん」

ぼんやりとしていた頭が徐々に冴え出し、事の成り行きが脳裏に蘇る。

自分は、学校から家に帰ろうとしていた。そこを、男の手で口を塞がれ……。

「い、いや…助けて!お願いよ!!」

「だめよ」

そう言って、知香子は必死に手足をバタつかせようともがく知永子の頬を叩く。それを合図にするかのように、柄の悪い男達が部屋に入ってきた。

「ち、知香子……う…嘘でしょう。や、止めて…止めて……」

知永子は、涙混じりに懇願する。しかし、知香子は知永子の言葉を無視して男達にこう言い放った。

「さあ、やっちゃって」

「本当にいいのかよ。怯えちゃってるぜ、この姉ちゃん」

言葉とは裏腹に、男達は揃って下卑た笑みを浮かべる。

「いいに決まってるじゃない。煮るなり焼くなり、好きにしてよ。ぎりぎり生きてさえいれば、どんなことをしてもいいわ」

「じゃあ、遠慮なく」

先頭にいた男が、力任せに知永子の制服を引き裂いた。

「たっぷり可愛がってやるよ。なあ、姉ちゃん」

もうひとりの男は、そう言いながら嫌がる知永子の唇を奪う。

「いやっ…いやぁ!」

「何だこいつ、漏らしちゃってるよ。汚ねぇなぁ」

知永子のスカートに手を突っ込んだ三人目の男が嘲笑う。怯える知永子を押さえつけながら、三人は笑った。

「いやっ…いやぁ~!!」

知永子は、力の限りに叫んだ。瞬間、頬に激痛が走る。

「うるせぇ!!黙れよ。それとも、このままぶっ殺されてぇのか!」

男に凄まれ、知永子は恐怖のあまり凍りついた。全身から力が抜けていく。


「協力してくれてありがとう」

ひとり部屋を抜け出した知香子は、部屋の外で待機していた豪に言った。

「…大丈夫なのか?」

「どうゆう意味?」

「いや…」

「お姉ちゃんのこと?だったら、もう駄目なんじゃないかしら。きっと…もう二度とセックスどころか、男に心を開けなくなると思うわ」

知香子は、心から楽しそうに笑った。

「…お前は、本当に恐ろしい女だよ。全く、惚れ惚れするくらいだ」

「決めたのよ。あたしの全人生をかけてでも、あの女を地獄の底にまで突き落としてやる。ふたりの仲を引き裂いてやるんだってね」

知香子は、爛々と瞳を輝かせ宣言する。豪は、惚けたようにただただ知香子に見とれていた。




「何ですって!?知永子が、まだ帰ってない?」

照矢は受話器越しに叫んだ。

「えぇ、そうなのよ。わたしは、てっきりまだそちらにいるものだとばかり…」

織江は、のんびりとした口調で言った。

「じゃあ、どこに行ったのかしらね」

「し、失礼します!!」

「あっ…」

照矢は慌ただしく電話を切り、とるもとりあえず部屋を飛び出した。あてはなかったが、じっともしていられない。不吉な予感が、照矢の頭を占めていた。




どのくらいの時間が経ったのだろう。永遠とも思える陵辱の限りの果てに、知永子は解放された。

どこをどうやって歩いたのかも解らないまま、知永子は『長谷倉』の二階にある部屋へとたどり着いた。ひどく疲れている。知永子は布団を出すのも億劫で、そのまま畳敷きの床へと倒れ込んだ。




〈知香子によってもたらされた地獄の夜の記憶は、この先長年に渡って知永子を苛む枷になる。

そしてそれはまた、照矢の運命の転機でもあった。〉




翌朝、織江から連絡をもらった照矢は『長谷倉』に駆けつけた。

「よくは解らないけど、何か強いショックを受けてるみたいなの。わたしにも、何も話してくれないのよ」

玄関先で照矢を出迎えた澄江は、そう言って小さく息をつく。

「あの…上がらせて頂いてもいいですか?」

「それがね…あなたには会いたくないって言ってるのよ」

「そ、そんな…」

「あなたの気持ちも解るけど、今はそっとしておいてもらえないかしら。何だかあたし、今あなた達を引き合わせたら、何か良くないことが起こるような気がしてならないのよ…」

「…解りました」

照矢は、渋々頷いた。

「わざわざお越し頂いたのに申し訳ないわね。でも、何か解り次第、必ず連絡するから…」

照矢は深々と頭を下げ、『長谷倉』を後にする。




「言われた通り、照矢さんには帰ってもらったわよ。これで…良かったのよね」

織江は、頭から布団を被りうずくまったままの知永子に声をかける。知永子は無言だ。

「…ねぇ、一体何があったの?せめて、あたしにだけは教えてもらえないかしら」

「すいません…。今は、そっとしておいて下さい」

知永子は、今にも消え入りそうな声で囁いた。その後は、織江からのいかなる問いかけにも応えない。

知永は泣いていた。激しい恐怖と自己嫌悪に襲われ、声を潜めて泣いていた。




「ちょっと!何してるのよ!!」

マンションに帰った麗香は、声を裏返らせた。豪が、ボストンバッグに彼の衣服を詰め込んでいる。

「何って、見りゃ解るだろ。荷物をまとめてんだよ」

言いながらクローゼットを漁り、次々と衣服を放り込んでいく。

「…ここを、出ていくつもり?」

「あぁ…もうお前とは暮らせないからな」

「ここを出て、一体どこへ行くって言うのよ。ケンゴくんが言ってた女のところにでも転がり込むつもりなの?」

「いや、しばらくはお前の知らないダチのところでやっかいになる」

「何でも!何でよ!!」

麗香はヒステリックに声を張り上げ、豪の腕からボストンバッグを取り上げた。そのまま、中身をぶちまける。

「ふざけんな!何すんだよ!!」

豪は、力任せに麗香を殴りつけた髪を振り乱しながら、麗香は揉んどりを打ってその場に倒れ込む。

「止めて!出ていくなんて言わないで…。お願いよ。あたし、豪に出ていかれたら生きてなんていけないわ。お願い…。豪が一緒にいてくれるなら、何でもしてあげるから。お金だって…ほら」

財布から取り出した夥しい枚数の一万円札を手に、麗香は豪の足にしがみついた。

「うるさい!離せよ!!」

麗香を乱暴に振り解いた豪は、彼女に背を向けてボストンバッグへと荷物を詰め直す。去り際に合い鍵を放り投げて、部屋から出ていった。

「豪…豪……」

麗香はフローリングの床にうずくまり、流れ出る鼻血を拭いもせずに豪の名前を繰り返した。掌の中でぐしゃぐしゃになった一万円札に、血と涙が滲む。




織江が買い出しのために家を空けるのを確認してから、照矢は『長谷倉』の勝手口へと回り込んだ。母屋に忍び込む。

織江にはああ言われたが、やはり我慢出来なかったのだ。知永子に一体何が起こったのか、確かめずにはいられない。

足音を消して、階段を上がった。知永子の部屋をノックする。

「知永子、いるんだろ?俺だよ。中に入れてくれないか?」

「…照矢さん!?」

「あぁ、そうだよ。なぁ、いいだろう?」

ドア越しに懇願する。

「帰って!お願いだから、今日は帰って!!」

「そんなこと言わないでくれよ。なぁ、何があったって言うんだ」

「……言いたくないわ」

「とにかく開けるよ」

照矢は、ドアを開けた。知永子は、布団の中に篭ったまま

「いやっ!来ないで!!」

と叫ぶ。

「なぁ、一体何があったんだ」

照矢は、言いながら布団を剥ぎ取る。知永子の肩へと触れようとした。

その瞬間、知永子が絶叫する。半狂乱になり、部屋から逃げ出した。

知永子には、照矢が昨夜の男達と被って見えてしまったのだ。今は男というだけで、その存在がひどく恐ろしく感じる。

「知永子!!待ってくれ!」

照矢は、裸足のまま外へと飛び出した知永子を追う。しかし、無我夢中の知永子は赤信号の横断歩道に躍り出た。

「知永子…危ない!!」

照矢が叫ぶ。猛スピードのトラックが、知永子のすぐ眼前にまで迫っていた。

鋭いブレーキ音が鳴り響く。




つづく

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