Phase8-6:正義を行うべし、たとえ世界が滅ぶとも
「急げー! 早く役所に入るんだ!」
一方アエラでも、各国の軍の誘導で役所への避難が始まっていた。その中にはホープたちの姿もあった。人波に揉まれながらも、役所の入り口を目指して四人は進んでいく。その途中、マーカスがなにかに気付いて立ち止まった。
「マーカスさん! 急いで!」
「あれを見るんだな!」
マーカスが指差したアエラの門から続く道を、サラマンダーがゆっくりと近付いてきていた。脇には数百人の小隊が追従している。
「あれはジョーだ!」
「来てくれたのか!」
「いや……なにか様子がおかしいんだな」
マーカスの予感は的中した。サラマンダーに付き従っていた小隊が、避難しようとするプレイヤーたちに襲いかかり始めた。
さらに、サラマンダーが歩みを止め、その巨大な口を大きく開いた。その口腔内に、火球が渦巻き始める。
「逃げるんだな!」
しかし周囲は混乱したプレイヤーたちで埋め尽くされており、逃げ場はなかった。
サラマンダーは役所に群がる人混み目がけて、火球を吐き出した。その場にいたプレイヤーたちは、混乱と諦めの入り混じった心境で立ち尽くすしかなかった。
その時だった。突如サラマンダーと役所の間の地面が隆起し、火球はそれに当たって飛散した。隆起した地面から次第に土が落ちていき、最終的に人の形が現れた。
その肩には、フォルミーカの姿があった。
「……血迷ったかサラマンダー」
フォルミーカの言葉に、サラマンダーの頭上でジョーが笑った。
「俺はいつだって血迷ってるさ! どうせもうオムニスはおしまいだ。最後くらい派手に暴れようぜ!」
「お前の相手は俺だけで充分だ!」
主の思考を受け、サラマンダーとノームが激突する。
「おいらたちも戦うんだな!」
「え、ちょっとマーカスさん!」
ホープが止める間もなく、マーカスはプレイヤーを襲うキャラクターにぶつかっていった。
「こうなりゃ黙ってらんねえ!」
「ちくしょう俺たちも行くぜ!」
ハンプティとダンプティも乱戦の中へと突っ込んでいく。
取り残されたホープは迷った挙句、役所の方へと足を向けた。しかし一歩踏み出して、それ以上は進めなかった。
「……うわああああ!」
ホープは振り返ると、声を上げて駆けだした。
戦場と化したテラの上空を、イーオンの戦闘機が飛び去っていく。




